兄がボケました~認知症と介護と老後と「第58回 兄とおやつのひととき」
50代で若年性認知症を発症した兄を、8年以上にわたり一緒に暮らしながらサポートしてきたライターのツガエマナミコさんによる日常エッセイ。現在は、特別養護老人ホームで暮らすようになった兄に週一回のペースで面会に行くマナミコさんが、施設での兄の近況を明かしてくれました。
* * *
おやつの差し入れ、種類を増やせそう
お雑煮と&寝正月で、また一回り身体の厚みが増したツガエでございます。
みなさまは、もうお正月気分は抜けた頃でしょうか?ちなみに元日の朝のことを特別に「元旦」と呼ぶように、大晦日の夜にも特別な呼び方があるのですが、パッとわかる人はいらっしゃいますか?言われてみれば誰でも「あ~」となるのですが、わたくし何も思い浮かばず、己の知力のなさにがっかりいたしました。
答えは「除夜」。「除夜の鐘」という一単語で覚えてしまっていたのが盲点でございました。「除」には、古いものを取り除き、新しいものを迎えるという意味があるそうです。
今年も元日から週一で兄の面会に行っております。いつもより少し早い時間に着きましたら、ちょうどおやつが配られるところで兄はご機嫌。スタッフさまが、お部屋までお饅頭とお茶と、わたくしがいつも差し入れているプリンをお盆に乗せてきてくださいました。
施設でおやつのひとときを一緒に過ごすのは初めてで、兄にお饅頭を食べさせるのも初めてでした。お饅頭のサイズはとても小さく、それが8つに切られて器に入っておりました。
兄が施設に入ってからのこの1年半、わたくしが兄の口に運んだのはプリンとヨーグルトとジュースだけ。お饅頭のような固形物は久しぶりで、小さな一切れをさらに半分に切るくらい慎重になりました。
でもスタッフさまによると、「お兄さん、飲み込みは大丈夫ですよ。お食事は粗きざみ食で、お肉もちゃんと噛んで上手に飲み込んでいます。むせることはほとんどありません」とのこと。
家にいた頃もむせたことはなく、小さく切った野菜やハンバーグをちゃんと食べてくれていたことを思い出しました。
「なので、差し入れもプリンとヨーグルトに限らず、ケーキみたいなものも小さく切れば召し上がれますよ」とスタッフさまに言われ、「差し入れのバリエーションを増やしてもいいのか!」とワクワクした次第でございます。
そう言われてみると、兄の顔に少し張りがあって元気に見えてくるから不思議です。廊下にも新しい兄の食事風景の写真が貼られていて、問題なく過ごしていることが知れました。ありがたい、ありがたい。本当にありがたいことでございます。
年始に兄の面会以外に出かけたのは、映画「鬼滅の刃~無限城編」鑑賞でございました。
登場人物の一人を激推ししている友人がいて、「ねぇ、鬼滅観なくていいの?」と何度も言うもので、ご一緒することにしたのです。彼女はすでに「無限城編」を3回観ている大の鬼滅ファン。テレビアニメ放送時代から話は聞いていましたし、前作「無限列車編」もたいそう興奮して話してくれておりました。わたくしも昨年テレビで一挙放送されたものを全部拝見しましたのでストーリーは把握しておりました。
最近のアニメは大人のために作られていると言っていいほど内容が濃くて、ほぼ3時間の長編にもかかわらず中だるみせず、どこを切っても見応えのあるシーンでございました。
ところが最後が良くなかった。モヤモヤ感が半端ない。なにもスッキリしない幕切れ。わたくしの第一声は「は?一番悪いヤツ出てこないじゃん!」でした。隣で観ていた友人は「そうなのよ。じつは三部作なの。次も観たくなったでしょ?」としたり顔。わたくしは1話完結とばかり思い、完全に足元をすくわれました。まんまと彼女にハメられたのでございます。
ここまできたら三部作全部観るしかございません。そう覚悟を決めた1月でございます。
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性62才。両親と独身の兄妹が、2012年にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現67才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。2024年夏から特別養護老人ホームに入所。
イラスト/なとみみわ
