お酒にまつわるQ&A 上手な付き合い方を知っておこう「“とりあえずビール”は理にかなった飲み方」【医師監修】
コロナ禍においては、大勢でお酒を飲む減ったものの、おうちで楽しんでいる人も多い。家飲みだと、ついつい飲みすぎたり、ペース配分がわからずに、後悔してしまったこともよくある。そこで、お酒にまつわる疑問を専門家の方々に回答&解説してもらった。自分に合ったアルコールとの付き合い方を知って、リラックスタイムをエンジョイしてみては。
Q.1杯目におすすめのお酒は?
A.アルコール度数の低いお酒
「アルコール度数が高いと胃腸への刺激が強く、血中アルコール濃度もすぐに上昇してしまいます。ビールなど度数の低いものを選びましょう。“とりあえずビール”は理にかなった飲み方なのです。レストランで出される食前酒の度数は高めですが、食欲増進作用があり、少量のためOKです」(横浜市立大学附属病院准教授・米田正人さん)
Q.大ジョッキで飲むとお酒が進むのはなぜ?
A.ひと口の量が増えて、ペースが速まるため
取っ手のついたジョッキは勢いよく酒を流し込めるので酒量が増えてしまいがちだ。また、グラスの中身が減ると周囲が気を使ったり、店員から追加オーダーを促されたりして、つい杯を重ねてしまうことがある。それを繰り返していると飲みすぎてしまう。秋津医院院長の秋津壽男さんは言う。
「お酒はマイペースで飲むべきです。そのため大ジョッキよりは中ジョッキ、ぐい呑みよりおちょこなど小さめのサイズを選びましょう。また、大ジョッキで1杯飲むより小ジョッキで2杯飲んだ方が同量でも満足感につながり、飲みすぎを防げます」
他人のグラスが空くとお酌をする風習も根強いが…。
「お酌をされると、飲んだ量がわからなくなります。そこでおのおのが手酌で飲むのが理想でしょう」(秋津さん)
Q.ちゃんぽんをすると、酔いやすいのはどうして?
A.味が変わり、お酒が進んでしまうから
ビール、ワイン、焼酎…。酒をちゃんぽんで飲むと悪酔いするといわれているが、それはなぜだろう?
「医学的な根拠はなく、味が変わるため、飲む量が増えてしまうだけです。気をつけるべきはあくまでも純アルコールの量です」(樋口さん)
数種類の酒を飲んだからといって悪酔いするわけではなく、重要なのはあくまでも摂取した純アルコール量。酔い方は同じだ。
「飲み放題であれもこれもと注文して、総量がわからなくなるような飲み方はNGです」(秋津さん)
Q.帰宅後に、お風呂でアルコールを抜くのは正解?
A.×。汗を流してもお酒は抜けない
米田さんが解説する。
「お風呂で汗をかいても、お酒は抜けません。アルコールは主に肝臓で処理されるため、汗や尿で排出されるアルコールは1%あるかどうか。それに、ほろ酔いであっても湯船につかるのは危険です。シャワーで汗を流す程度にしておきましょう」
特に冬場の入浴は、平常時でも危険度が増す。
「冬は脱衣所と風呂場との温度差が激しく、脱衣所で裸になった時点で血圧が上がり、湯船につかると水圧がかかるため、血圧がますます上昇します。そして、しばらくつかっていると血管が開き、今度は血圧が下がり気味になります。そして湯船から立ち上がったときに急に血圧が下がり、血液を脳に送れず、脳貧血を起こす可能性もあるのです」(樋口さん)
飲酒後の入浴は、血圧の上下がより激しくなる。
「酔った状態で入浴すると、心臓の不整脈を起こしやすいといわれています。自分の代謝能力を過信せず、飲んだら湯船につからないという心がけが大切です」(樋口さん)
Q.アルコールが抜けるまでどのぐらい時間がかかるの?
A.体が小さく、高齢な女性ほど長くかかる
血中アルコール濃度のピークは、飲酒後15分から2時間くらいで訪れる。
「飲んだ量が多いほど、ピークが遅れる傾向があります。アルコールが体から消える速度は個人差が大きく、最も速い人と遅い人では4~5倍ほどの差があります。この速度はさまざまな要因が関係しています(下表参照)。実験結果によると、アルコールが体から消える平均値は男性で約1時間に9g(ビール225ml程度)、女性で6.5g(同じく163ml程度)ほど。2時間でその倍、3時間ではその3倍というように時間に正比例しています。飲酒して顔が赤くなる人は、そうでない人に比べて処理に多くの時間を要します。たとえば、ビールの中瓶1本(500ml)が分解されるのに男性はおよそ2.2時間、女性では3時間程度が必要です。2本飲めば、それぞれ2倍かかります」(樋口さん)
50代以降の女性が心がけるべき点はなんだろうか。
「女性は男性に比べて肝臓が小さく、アルコールの分解に関しては圧倒的に不利。男性と同量飲んでも女性の方が肝機能障害を起こしやすいのです。アルコール依存症に陥りやすいのも男性よりも女性。そのため酒量に注意が必要です。しかも、高齢者はアルコールの処理能力が衰えている上に、体内の水分量が少ない。それだけ血中濃度が上がりやすく危険なのです。高齢の女性、特に体の小さい人は少量摂取に抑えるよう心がけてください」(樋口さん)
アルコール・薬物関連2学会は飲酒運転予防のために「飲酒したら運転するまでに『飲酒量(純アルコール量)÷4』時間以上待つ」というガイドラインを出している。たとえばビール中瓶1本(純アルコール量20g)を飲めば最低5時間は運転できない。高齢女性であればこの基準に+αした方がいいだろう。
■アルコールが体から消える速度に影響する要因
取材・文/藤岡加奈子
※女性セブン2022年2月3日号
https://josei7.com/