高脂血症と糖尿病の治療は“一生もの”ではない 服薬のメリット・デメリットと“インスリン・オフ治療”で減薬した実例
高脂血症や糖尿病は、「一生、治療し続けていくもの」と思っていませんか。実は、減薬や薬を飲み続けることなく、過ごすことも可能なんです。むしろ、服薬がほかの病を招くリスクもあるというのだ。薬に頼らなくても良い生活を手に入れるためにするべきこと、生活改善ポイントを専門家が教えます。
「コレステロール値だけ高い」なら薬はのまなくていい
高血圧と並んで年を重ねた女性が直面するのは、コレステロール値の上昇だ。特に閉経後はホルモンバランスの乱れにより数値が上がり、高脂血症と診断され、服薬を始める人が多い。しかし、そこには大きな落とし穴がある。
東海大学名誉教授の大櫛陽一さんは、悪玉コレステロール値を低下させる代表的な処方薬である「スタチン」の副作用を指摘する。
「スタチンはコレステロール値を下げるが、その必要性については議論があり、筋肉の痛みや融解などの副作用が多数報告されています。さらに、のみ続けると糖尿病になるリスクが3倍以上、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症率が10~100倍になるという調査や、認知症やうつ病、出血性脳卒中のリスクも指摘されている。服薬は推奨できません」(大櫛さん)
新潟大学名誉教授で医師の岡田正彦さんも声をそろえる。
「服用のメリットよりもそれ以外のデメリットが上回ります。そもそも閉経後に女性ホルモンが原因で上昇したコレステロール値は、高齢になれば自然と下がってきます。現在、私は高齢者施設で診療をしていますが、その年代で高脂血症の人はほとんどいません。コレステロール値だけが高くて、ほかに持病がない人であれば、薬をのむ必要はないのです」
6か月でインスリンゼロ達成
糖尿病の治療は“一生もの”。特にインスリンの注射は一度始めたらやめられない―長らく常識とされてきた医学界の言説を、“インスリン・オフ治療”を実践する内科医の水野雅登さんは一刀両断する。
「糖質の摂取量を減らし、たんぱく質を多く摂ることで薬を減らすことは充分に可能です。たとえば、インスリン注射を朝食・夕食直前に1日2回打っていた70代後半の男性は、糖質を1食につき20g以下に抑え、たんぱく質と鉄分を多く摂る生活を実践したところ、2か月で自己注射の必要がなくなり、服薬のみになりました。ほかにも、25年にわたって服薬を続けていた患者が半年で必要なくなったケースもある。ほとんどの患者は、適切な指導で薬の一部やすべてが不要になります。重症でなければ、同じ薬を一生のみ続けたり、増量していく治療は時代遅れです」
水野さんは薬を服用し続けることで起きる弊害もあると指摘する。
「『インスリン注射』と『SU剤』はどちらも血糖値を下げるインスリンを補う糖尿病の代表的な治療薬ですが、過剰なインスリンは動脈硬化や高コレステロール血症の誘引となり、低血糖の危険もあります。加えて古いSU剤の中には心臓への負担があるものもあり、注意が必要です」(水野さん)
最近は“低血糖値になりにくい”効果をうたった新しい糖尿病薬の「SGLT2阻害薬」が登場し、処方も増えているが、利尿作用があるため脱水症状になりやすく、高齢者は脳梗塞のリスクも高まるという指摘もある。のむ量を減らすに越したことはないだろう。
■<70代男性の場合>私はこうして減薬した!
※識者への取材をもとに編集部で作成。
<減薬前>インスリン注射を朝食・夕食直前に1日2回打っていた。
<取り組み>インスリン・オフ治療の実施。
糖質を1食につき20g以下に抑え、たんぱく質と鉄分を多く摂る「インスリン・オフ治療」を実施し、2か月で自己注射を終了させ、服薬のみになった。6か月が過ぎる頃にはインスリンなしの生活が可能に。
※女性セブン2022年1月20・27日号
https://josei7.com/
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