70才以上の女性の過半数が血圧の薬を服用しているが本当に必要か?血圧測定の誤りを医師が指摘
患者数は3人に1人といわれ、もはや「国民病」ともいえるほど多くの人が悩む高血圧。患者数に比例して薬を服用する割合も高く、厚生労働省の調査によれば70代以上の女性の過半数にもおよぶ。しかし、血圧の測定方法に誤りが多く、血圧をコントロールする薬も実は必要ない場合もあるという。高血圧とどのように向き合い、改善すればよいのかを専門家に聞いた。
あなたの血圧測定は間違っているかも!
降圧剤にはカルシウム拮抗薬やACE阻害薬、利尿薬など主に5種類があり、症状に応じて組み合わせて服用することが一般的だ。
しかし、できるだけ薬を使わない高血圧治療を実施し、全国から患者が殺到する坂東ハートクリニックで院長を務める坂東正章さんは、この状況に疑問を投げかける。
「そもそも、血圧の測定方法に誤りがあるケースが多く、そのせいで必要ない量の薬を処方される患者は後を絶ちません。
病院で測定すると環境の変化や緊張から血圧値が高く出るうえ、多くの病院で使用されている挿入式血圧計は、通常の上腕式血圧計と比較して高い値が出るため、高血圧の診断は家庭で測った血圧値で行うのが正しい。
しかし、家庭における正確な測定方法を指導している医師は非常に少なく、家できちんと測定できていなかったり、病院で測った血圧を基準に薬が処方されていたりすることが多い。自分の血圧を正しく計測することが、薬の減量につながります」(坂東さん・以下同)
血圧は条件によって変わる
血圧値が変動する理由は測定場所や方法だけではない。
「血圧の値は季節によっても大きく変わります。晩秋から春までは高くなりますが、初夏から初秋までは下がる傾向にある。この時期に冬季と同量の降圧剤をのんでいると、下がりすぎてめまいやふらつきなどの症状が出やすい。実際に、夏に強い降圧剤が処方されていた患者は、その時期日中に上の血圧が100mmHgを切っていた。季節によって減薬や中止することが望ましいのです」
生活習慣の改善が減薬につながる
正しい数値を知ることに加え、生活習慣の改善も減薬には欠かせない。
「血圧を下げる確実な方法は、生活習慣の改善と運動です。ただし診療時に医師が口頭で説明するだけでは実現は困難です。
そのため当院では2人の管理栄養士の指導のもと、毎日の食事メニューを徹底的に見直します。
『ソースやしょうゆなどを使わないようにして、塩分の摂取は控えている』という人でも、外食時や晩酌時のおつまみなどで無意識に塩分を多く摂取していることもあり、自力で改善するのは難しい。運動も、健康運動指導士の資格を持った看護師が主になり、各人に合った内容をすすめます」
坂東さんの病院では手厚いサポートのかいあって、多くの人が薬の量を減らして健康的な生活を取り戻している。
「血圧に加え、尿酸値も高かった70代前半の男性は、4種類のんでいた薬を5年ほどで1種類まで減らすことができました。食生活の改善と運動により、まずは尿酸値が下がり、その後体重が10㎏減少。並行して少しずつ血圧も下がっていきました」
■<70代男性の場合>私はこうして減薬した!
※識者への取材をもとに編集部で作成。
<減薬前>降圧剤、尿酸降下薬など4種類の薬を服用。
<取り組み>医師の監督のもと、食事と運動療法を実施。
5年かけて降圧剤1種類に。食生活を改善し、定期的な運動を行ったことによって体重が10kg減り、尿酸値が下がった結果、まず尿酸降下薬がいらなくなり、その後血圧も下がったため降圧剤の数も減少。
薬に頼らず生活改善のみで標準値に
薬なしで大幅に血圧を下げた例もある。
「外来受診時、上の血圧が170mmHgあった47才の女性は、薬をのまずに治療することを強く希望したため、生活改善のみを徹底して行いました。管理栄養士との面談で、外食とお菓子によって、無自覚に塩分を過剰に摂取していたことがわかり、食事内容を改善。
すると2週間後には140mmHgまで低下し、さらに1か月後にほぼ標準値である130mmHg前後にまで下がりました」
ある程度まで血圧値が下がった頃、1日30分のウオーキングをすすめると、血圧値はさらに下がり120mmHg台で推移するようになった。
「ウオーキングをした後、1時間ほど経ってから血圧を測定してもらうことで、運動によって血圧値が下がることがわかり、日常生活に積極的に運動を取り入れるようになった。その結果、彼女は初診から7か月でクリニックを卒業することができました」
※女性セブン2022年1月20・27日号
https://josei7.com/
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