高血圧の人はコロナ重症化リスクが最大3倍|最新血圧リセット食事術
あれを食べるな、この薬をのめ、運動をしろ…高血圧を治すのは意外に大変。でも、高血圧の人は新型コロナウイルスの重症化リスクが最大3倍とされ、致死率が最も高い基礎疾患だというから、放ってもおけない。年間7500人の高血圧患者を診療し、「医者も信頼する血圧専門医」の市原淳弘さんが教える、誰でもできる“超最新”血圧リセット術を紹介する。
高血圧症は男女差なし、上130/下80mmHg以上は要注意
サイレントキラー(沈黙の殺し屋)―高血圧症はそんな呼び方をされる。
自覚症状がないままに血管が傷ついて硬くなり、20年、30年かけてゆっくり動脈硬化が進む。そしてある日突然、脳卒中や心筋梗塞、腎臓病などを引き起こす。日本における推定患者数は4000万人を超え、そのうち約5割が未治療だという。
血圧の数値は「上の血圧/下の血圧」で表す。心臓が収縮したときの血圧が「上」、心臓が拡張したときの血圧が「下」。高血圧の診断基準は、診察室での血圧が上140/下90mmHg以上だ。ただし、日本高血圧学会の治療ガイドラインでは、血圧を下げる目標値が上130/下80mmHgに設定されているので、それ以上ならば要注意である。
「中年太りの男性が高血圧になる」というイメージが強いが、実は高血圧症の患者数にはほとんど男女差がない。東京女子医科大学循環器内科の佐藤加代子さんは、「女性は閉経を迎えると高血圧になりやすい」と指摘する。
「女性ホルモン『エストロゲン』の分泌量が減ることが理由です。エストロゲンには血管を保護し、血圧の上昇を抑える働きがあります。男性は30代から血圧が高くなり60才頃にピークを迎えるのに対し、女性は50才前後から上昇し、80才くらいまで続きます。そのため高齢になってから、心筋梗塞や脳卒中など命にかかわる病気になりやすい。特に女性は40代から血圧を上げない生活習慣を心掛けることが大事です」
→高血圧をリセットする生活習慣|座り方・寝起き・お風呂・歩き方
食べる順番を変えるだけで塩分が減る
高血圧の最大の原因は、食生活。なかでも塩分の摂りすぎが血圧を上昇させるといわれている。佐藤さんは「塩分の高いものは最後に食べるといい」と話す。
「塩分が高いもの、例えばみそ汁や梅干しなどを最初に食べると、濃い味に舌が慣れ、食が進むにつれどんどん味が濃くなりがちです。薄味のものから食べ始めることで、トータルの塩分の摂取量を抑えられるのです。血圧の高い人は梅干しや味の濃いみそ汁はできるだけ控え、麺類は汁を飲み干さないようにしましょう」
『食べ方、座り方、眠り方で下がる! 血圧リセット術』(世界文化社)の最新著があり、「医者も信頼する血圧専門医」である東京女子医科大学高血圧・内分泌内科の市原淳弘さんは、「繊維質の多いものから食べるといい」とアドバイスする。
「野菜や海藻などの食物繊維が多いもの、糖質が低いものを先に食べると、血糖値の上昇がゆるやかになります。血糖値を上昇させる食べ方を続けていると、血管がダメージを受けて硬くなり、血圧も上がっていく。血糖値を気にすることは、血圧上昇を抑えることにつながります」(市原さん・以下同)
血圧を下げる効果のあるほうれん草となす
食材そのものに血圧を下げる効果があるのは「ほうれん草」と「なす」だ。
「ほうれん草には高い抗酸化作用があるばかりか、血圧を下げる効果のある硝酸塩が多く含まれています。実際、ほうれん草を7日間食べることで、上の血圧が約6mmHg下がったという報告もある。効率よく栄養分を摂るには、洗ったり加熱したりする時間は短くして、できれば生で食べましょう」
なすには、血圧上昇を防ぐアミノ酸「GABA」が多く含まれている。
「GABAは血管を収縮させるノルアドレナリンの分泌を抑制して、血圧上昇を防ぎます。60℃の加熱処理で増えるので、レンジで蒸したり焼いたりするのがおすすめです」
緑茶や牛乳の飲み方で効果が
食後はカテキンがたくさん含まれている緑茶や抹茶を飲もう。
「カテキンには血管を広げて血圧を下げる働きがあります。食後は血圧が上がりやすいのですが、カテキンは吸収が早く、食後に飲むことでより効率的に血圧上昇を抑えることができる。ただし緑茶にはカフェインも含まれるので、就寝前は控えてください」
さらに市原さんは、1日1杯の牛乳をすすめる。牛乳摂取量が多い人とまったく飲まない人を比べると、飲んだ人の方が上の血圧が10.4mmHg低いという研究結果があるという。
「牛乳に含まれる乳清たんぱく質、カルシウム、ビタミンDには高血圧の予防効果があります。さらに牛乳はカリウムもたっぷりで、塩分を体外に排出する効果があるのです。ただし飲みすぎると脂肪分を摂りすぎてしまうので、低脂肪や無脂肪乳を選ぶといいでしょう」
空腹と夜遅い食事はよくない
肥満の人は通常の2~3倍も高血圧になりやすいといわれる。しかし、ダイエットしようとして空腹が続くのもよくない。
「空腹を感じる時間が長く続くと、血糖値を維持するためにアドレナリンが分泌されます。アドレナリンは同時に、血圧も上げてしまうのです」
夜遅くに食事を摂るのも避けた方がいいという。
「就寝の4時間前には終わらせてください。寝るまでに消費できなかったカロリーは、内臓脂肪になって血圧を上げる原因になる。内臓脂肪から出る『アディポサイトカイン』というホルモンは、血管に炎症を引き起こして血圧を上げていくことがわかっています」
教えてくれた人
佐藤加代子さん/東京女子医科大学循環器内科学准教授
市原淳弘さん/「東京女子医科大学高血圧・内分泌内科教授。「医者も信頼する血圧専門医」である。最新著に『食べ方、座り方、眠り方で下がる! 血圧リセット術』(世界文化社)がある。
※女性セブン2020年4月16日号
https://josei7.com/
●高血圧対策に!新減塩法|月に1週間、1日5gの塩分量で過ごすだけで血圧を下げる方法