「介護で大損するのはこんな人!」4つのNG ケアマネ座談会で学ぶ介護保険の活用法
ある日突然始まるかもしれない介護。親の介護、夫の介護、自分が当事者になるかもしれない。そんなとき、支えとなるのがケアマネジャー(介護支援専門員 以下、ケアマネ)だ。ベテランケアマネ4人による本音座談会から学ぶ、介護で損しないためのポイントとは。介護保険制度のお得な使い方を語り尽くす!
■座談会に参加してくれたベテランケアマネ4人
●A子さん:45才。ケアマネ歴12年。無理解な市役所の福祉課担当者と、利用者との板挟み状態が現在のいちばんの悩み。
●B男さん:53才。20年以上のケアマネ歴のある大ベテラン。高齢者施設の職員だった経験を持つ業界のエキスパート。
●C郎さん:59才。ケアマネ歴18年。事業所の代表を務めており、日々、多くの利用者や家族からの相談に向き合っている。
●D恵さん:62才。ケアマネ歴20年。以前は医療関係の仕事に就いていた。介護支援専門員連絡会の会長を務めた経験も。
座談会で明かされた”介護で大損する”のはこんな人
4人のベテランケアマネが座談会で明かす、介護保険制度のお得な使い方とは。ケアマネ次第で介護保険や介護のためのサービスはもっと有効に活用できるらしい――。
やせがまんで介護保険を利用せず健康状態が悪化
B男 利用者の中には理由をつけて介護保険をなかなか使わない人がいます。やせがまんで利用せず、健康状態が悪くなるのはもったいない。
C郎 基本的に同居家族がいると、食事の準備や掃除などの生活援助サービスは介護保険では受けられません。
しかし、「自立支援のために利用者と一緒に掃除をする」との名目なら「身体介助」の枠組みでサービスを受けられます。こうした細かなテクニックはケアマネが詳しいはずなので、“もっとできることはありませんか”と尋ねてほしい。
ケアマネが住宅改修を見落とす失敗も
D恵 介護保険は生活支援や身体介助のほか、手すりやロープを付けるといった自宅の改修にも利用できます。住宅改修は最大20万円まで1割負担で使えますが、その後に介護度が2つ上がればもう一回使える。要介護1で利用したのち、要介護3になったらもう一度使えるイメージです。
A子 ただし、あまり優秀ではないケアマネに当たると、住宅改修を見落とすことがあります。
たとえば玄関の上がり框に手すりがあると便利なのに、それを提案していないとか。だから自宅で気になるところがあったら積極的にケアマネに尋ねてほしいですね。それに介護保険は車いすや福祉用具のレンタルにも使えるので、上手に活用してほしい。
「要介護度が高いほどいい」は間違い
D恵 要介護度の認定調査をうまくごまかせば多くのサービスがお得に利用できるとの「都市伝説」がありますが、いまはそれなりに厳しく認定されます。要介護度を偽ると詐欺罪に問われることも。
ただし要介護3か4かの微妙なラインなら、ケアマネに相談するとアドバイスしてくれます。
B男 要介護3より要介護4の方が利用額の幅が広がってサービスがたくさん使えるように思えますが、要介護度が上がると介護サービスの単価は上がります。同じサービス内容でも負担が増すので、「損した」と感じる人もいる。
■「要介護度」の区分によって 支給限度額の上限が変わる
要介護1…16万7650円
要介護2 …19万7050円
要介護3…27万480円
要介護4…30万9380円
要介護5…36万2170円
ケアマネが介護保険以外の制度を把握していない
C郎 介護保険とは別の枠で、低所得者向けの支援や利用料の補助をする自治体もあります。ゴミ出しサービスや低価格の宅配弁当、おむつ給付など多種多様ですが、こうした制度を把握していないケアマネがいるのも事実。
利用者や家族は地域包括支援センターや自治体に問い合わせて、自分で情報を集めることも必要でしょうね。
頼れる制度やサービス
●高齢者住宅 改修費用助成制度 (介護保険)
玄関や住居内の手すりの設置、段差の解消、床材の交換など、自宅のバリアフリー化にかかった工事費用の9割が助成される(最大18万円まで)。要介護度の区分が上がったり転居すると、再度補助金を受け取れる。
●紙おむつ等の助成金支給
各自治体や地域の社会福祉協議会が、紙おむつの購入費用として助成金を支給。購入額の9割を負担してくれるケースが多く、寝たきりの場合などは宅配してくれる自治体もある。
●シルバー人材センター
地域のセンターに所属する60才以上の人材が派遣され、洗濯や庭の手入れなど簡単な身の回りの世話を受けられる。介護保険での「ホームヘルプサービス」が1時間4000円程度に対し、「シルバー人材センター」は2時間で2400円程度と格安。
●特定増改築等住宅 借入金等特別控除
自宅のバリアフリー改修で住宅ローンを組んだ場合、最大12万5000円の所得控除を受けることができる。
●3000万円の特別控除の特例
施設に入居し、不在となった家を3年以内に売却することで譲渡所得が3000万円まで非課税となる。
介護で損しないための心得
これからの介護の見通しについて、介護評論家でケアタウン総合研究所代表の高室成幸さんはこう語る。
「ヘルパーの高齢化や有料老人ホームの乱立、コロナ禍での事業所廃業による介護人材不足と介護資源不足は深刻になります。
ポイントは公的介護サービスと保険外サービスを上手に使いこなせる“賢い利用者・家族”になること。
入浴と機能訓練、交流目的に通所介護を利用し、買い物や介護食は宅配や通販、定額制サービスなどを利用すればかなり効率化できます。
掃除は自由度のあるシルバー人材センターや家事代行サービスもありです。市町村は『横出しサービス(市町村特別給付)』として補助的に使うのはどうでしょう。利用者や家族のナマの声を汲み取って動いてくれるケアマネと出会い、信頼関係を築きたいものです」
ケアマネたちが語った貴重な本音には、専門的なテクニックだけでなく、すぐにでも反映できる基本的なことも多い。介護ライフを成功させるためには、ケアマネと利用者が気持ちよくかかわれる環境づくりが、まずは最優先だ。
教えてくれた人
ケアマネ歴20年クラススのベテランケアマネ4名(匿名)
高室成幸さん/介護評論家・ケアタウン総合研究所代表
※女性セブン2021年12月9日号
https://josei7.com/
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