「介護士の僕がボーナスに感じた絶望」に反響が続々!他人と比べないことの難しさ
冬のボーナスシーズン、介護士のみなさんはボーナスの金額に何を感じているだろうかーー。介護士ブロガーのたんたんさんこと深井竜次さんの前回の記事「ボーナスに僕が感じた絶望」に多くの反響が寄せられたため、読者の声を引用しながら、ふたたび介護職のボーナスについて考察いただきました。
介護士ブロガーのたんたんと申します。
5年間介護現場で働いてきた経験や知見をもとに、「多くの介護士さんが幸せな働き方を実現できるように」という思いを込めて、ブログを運営しています。
介護ポストセブンでもこれまで僕が介護現場で経験した出来事や学びを、「介護士さんをはじめ介護にかかわる多くの人に参考になれば」と思って記事を書いてきました。
先月公開した『介護施設で勤続3年目に夜勤専従の派遣に転職した理由「ボーナスに僕が感じた絶望」』には、たくさんのコメントが寄せられ、多くの人に読んでいただきました。
今回は、介護職のボーナスの現状や、ボーナスをもらった後のモチベーションの維持について書いてみたいと思います。
「ボーナスに僕が感じた絶望」記事に寄せられたコメント
ーー前回の記事から引用します。
「勤続3年目の僕のボーナスが30万円で、15年目の上司は、32万円でした。僕のボーナスと2万円しか変わらなかったのです。僕は勤続3年目、その上司は勤続15年目でリーダー職でした。自分より遥かに高いボーナスが支給されていると思い込んでいたので、驚愕でした」
この記事に対し、「そんなにもらっているならいいじゃないか! 自分の施設なんて…」というコメントがとても多く寄せられました。
ボーナスの金額はあまり他人に聞くことでもなかったので、コメントの内容を読んで改めて考えさせられました。
サイトに寄せられたコメントを紹介しながら、僕なりの意見を書いていきたいと思います。
「ボーナス30万で15年働いても32万で絶望ですか。自分はボーナス13万で何年働いてもほとんど変わりません。同じ介護職でも随分違うんですね。てかボーナス30万もらえる職業が県内ではなかなかないですわ。田舎だから。羨ましい絶望です」(なんじゃさん)
僕自身は、ボーナスの金額に絶望したのではなく、3年しか働いていない自分と10年先輩の職員がそんなに変わらない額だったことにショックを受け、将来に不安を感じて転職を決意しました。
長く働いて役職につけば、その分給料やボーナスは上がるものだと考えていたので現実を突きつけられ、絶望したのでした。
まずは、介護職のボーナスの金額について考えてみたいと思います。
介護職の賞与は年々増加傾向
平成28年 56万116円
平成29年 59万3438円
平成30年 59万8379円
令和元年 59万9506円
令和2年 62万6094円
令和2年度「介護労働実態調査」によると、賞与を支給している事業所における一般労働者(無期雇用職員、月給の者)の平均賞与額は62万6094円となっていて、毎年上がっています。「平均と比べて自分は…」「そんなにもらってるの!?」と思う人も多いと思います。
「皆そんなにもらってるのか? 年収400あったら最高だよ! ボーナスだって小遣い程度だよ~。一応役職ついてるけど正社員だけどそんなにもらってない。普通の生活が送れるだけでいいからそれぐらい出してほしい。将来に全く希望なしです。仕事は辛くないけど割に合わない感は否めない」(まここさん)
介護の仕事はハードで責任も重い仕事なので、もっと基本給やボーナスが上がればいいのにと僕も考えています。
ちなみに、自分が働いていたのは島根県の特別養護老人ホームです。知り合いが働いていたほかの施設でも冬のボーナスは2か月くらい支給されていたという話を聞いていました。中でも社会福祉法人が運営している施設はボーナスの額がほかの施設よりも多い印象です。
「特養で働き3年後に介護福祉士を取りましたが正社員にはなれず、ボーナスも寸志でした。今ディサービスで従事中ですがボーナスはなし処遇改善加算額は年間1万から2万円内。年収200万に届きません。政府は地方の介護現場をわかってないのではないでしょうか。ちなみに現場のスタッフは60代70代が入浴ほか全般をしています」(くたびれさん)
前述の調査で「介護施設の賞与制度」について聞いた結果では、「ボーナスを支給する制度があり、定期的に支給している」のは71.9%、全体の約7割。一方、「賞与制度もなく支給していない」が6.9%となっています。
施設によっては人件費を抑えるためになるべく職員を正社員にしないという方針の会社もあるようです。
また、「介護職員処遇改善加算」という介護職員の賃金アップを目的とした国の施策がありますが、勤続年数や職位、資格などに応じて3万7000円を上限として賃金が加算されます。これは基本給に加算することが推奨されていますが、ボーナスに回している施設もあるようです。
他人と比べるから落ち込む
考えてみれば、僕は他人のボーナスを意識したことで、不安や焦りが生まれてしまったのかもしれません。
ボーナスは、周囲と比べることで仕事へのモチベーションが落ちてしまうので、なるべく比べないほうがいいとは思います。とはいえ、世間の水準と比べてあまりにも支給額が低すぎるのも考えものです。
実際、ボーナスの後には、僕が運営しているサイトを通じて転職サイト・転職エージェントに登録する人が増える傾向にあります。
しかし、転職の理由は、「収入の低さ」よりも「人間関係の不満」を挙げる人のほうが多いのです。「ボーナスをもらったら退職する」という話もよく聞くのですが、せっかく就職して働き慣れた職場を離れ、新たに人間関係を構築するのは大変なことでもあります。
転職はボーナスよりも基本給を重視
ボーナスの金額だけで焦って転職を決断したり、ボーナスの支給実績だけで転職先を選んだりしないほうがいいと僕は考えています。
なぜかというと、ボーナスは企業側の都合で経営状態が悪くなったら削ることができるからです。何年務めようが昨年より今年はボーナスの額が下がったとうこともあるからです。
以前僕が務めていた介護施設では、職員間の共有事項が書いてある連絡ノートに、
「今年のボーナスは昨年に比べて少なくなっています。次のボーナスでその分上乗せします」と書いてありましたが、翌年のボーナスは例年と変わりませんでした。
ボーナスは経営側の匙加減で削られてしまうこともありますが、基本給を下げるということはほとんどないので、転職をするならボーナスよりも基本給や福利厚生を重視したほうがいいと思います。
ボーナスの額だけを見て焦って転職した結果、以前いた施設より待遇が悪かった…なんていうこともよくあるのです。
基本給でやりくりできる生活を整える
そして基本的なことですが、ボーナスをあてにしない生活スタイルを作っておくことが大切だと思います。
僕の場合、働いて間もない頃は、貯金をする余裕もありませんし、給料は生活費だけで精一杯でしたが、ボーナス払いはせず、固定費を下げるなど、少しずつ節約をして給料でやりくりできるようになっていきました。
給料だけで生活できるようになると、ボーナスを投資や貯蓄に回すこともできますし、「ボーナスはもらえてラッキー」くらいの心のゆとりが生まれました。
岸田首相の賃上げ方針に希望も?
先日岸田総理が介護職の給料を月額9000円引き上げるというニュースが介護業界でも話題になりました。
僕の周りの介護職員では「9000円は少ない」という声も多かったのですが、この賃上げをきっかけに、更なる賃上げにつながる可能性もあるため、僕としては、この決断はとても良かったと考えています。
お金は働く上で大きなモチベーションにつながりますが、ボーナスの金額だけが不満で転職を考えるのなら、少し踏みとどまってほしいと思います。
人間関係やその会社の将来性、基本給のベースアップなど、総合的に考えてやっぱり転職したいと思うなら、そのときが新たな一歩を踏み出すチャンスといえるのではないでしょうか。
文/たんたん(深井竜次)さん
島根県在住。保育士から介護士へ転職し、介護士として働いた経験を持つ。主に夜勤を中心に介護施設で働きながら介護士の働き方について綴ったブログ『介護士働き方コム』を運営。著書『月収15万円だった現役介護士の僕が月収100万円になった幸せな働き方』(KADOKAWA)が話題に。
●介護施設で勤続3年目に夜勤専従の派遣に転職した理由「ボーナスに僕が感じた絶望」