猫が母になつきません 第284話「ちかづく」
たまに立ち寄るホームセンターでその子を見つけました。最初に見つけた後何度か会いに行き、その度に手をかざしてみたりちょっと離れてながめてみたり…ある日「今日は連れて帰るぞ」と決心して、よいしょっと大きな箱をカートに乗せました。それまで使っていたゴミ箱はペダルを踏むと蓋が開くタイプで、しかも母がペダルを壊してしまっていちいち手で蓋を持ち上げなくてはいけなくなっていました。それがセンサーに手を近づけるだけで蓋が開くなんて天国。何度でも文句も言わずにすっと開けてくれる、なんていい子! 台所用なので使う頻度が多く「さっき捨てたところなのにまただわ、いいかしら?」と新しいゴミ箱に甘え放題の私。いくらでも甘えさせてくれるのはゴミ箱くらいです。しかし、しばらくすると捨てたはずのゴミがいつの間にか出されているという事態が。母に「なんでゴミ出すの?」と聞くと「アルミホイルを入れると機械が壊れるのよ」「近づくとランプがピカピカ光るし、勝手に開くのよ」。いや、そういうゴミ箱なんです。アルミホイルの件はよくわからないけど。近づくどころかほぼ接触してるし。せっかく便利になったのに、捨てたゴミを再度捨てるという仕事が増えてしまいました。センサーで蓋が開いてから閉じるまでは5秒あり、光るランプの数で残りの秒数がわかります。ゴミを一個捨てたところでもう一個ゴミ発見!5秒以内に2個目投入成功!やったー!…そんなささやかな日々です。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。