猫が母になつきません 第283話「いかくする」
黒猫、というよりは濃いグレーの仔猫。たぶん今年の春に産まれたと思われるその仔猫を何度か見かけていました。一度畑で鉢合わせして、目があって、仔猫は固まって、少し近づいたら逃げられてしまいました。仔猫は今度はさびに出くわして驚いて大声で鳴いてはいるものの、逃げずにいるのはいくらかは興味があるということなのかもしれません。いや、緊張状態で動けないだけか。さびは近くに座ってじーっと仔猫を見ています。「落ち着いて。そんなに鳴かなくても…」って顔。しばらく様子を見ていると、さびは仔猫にお尻を向けて安心させようとしていましたが、その日は仲良くなることはできなかったようです。もともと野良猫だったさびは、わびが母猫に置いていかれた時にも最初は庭で一緒に遊んでやり、そのうち家に連れて帰ってきて餌を分けて食べるようになりました。わびもそのまま家猫に。後輩猫わびは甘え上手で、さび以上に家猫っぽくなりました。もしさびがその仔猫を連れ帰ってきたら、もう一匹飼ってもいいかなと思っていましたが、残念ながらあれ以来仔猫の姿を見ていません。まだ期待は捨ててはいませんけど。通いのシロは相変わらずほとんど毎日餌を食べに来てはいますが、家猫になるつもりはなさそう。シロもその仔猫に会ったでしょうか。今日も窓辺でシロがやってくるのを待つさび。「黒っぽい仔見なかった?」「向かいの家の畑にいたよ」さびとシロはそんな情報交換をしているような気がします。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。