フケはなぜ出るの?タイプや原因を皮膚科医が解説「日常でフケを予防する4つの対策」
すっかり空気が冷たくなり、冬の気配も感じられる今日この頃。そろそろ気になり始めるのが“乾燥”。「頭皮がかゆいと思ったら、パサッと大きなフケが落ちてきた。乾燥対策しなくちゃ」と思ったあなた、フケの原因は乾燥だけではありません! 日常のアレやコレを見直して“フケない頭皮”を取り戻しましょう。
加齢でフケが出やすくなる!?
ある調査(※)によると、20~60代の女性の約6割が髪や頭皮の悩みを抱えており、特に40代以降になると、シミやしわのケアより頭皮ケアに関心が集まるという。数ある頭皮トラブルの中でも、秋冬はフケが出やすい季節といわれるが、主な原因は乾燥なのだろうか。
(※)持田ヘルスケアが実施した「髪や頭皮に関する実態調査」(実施時期:2021年8月17~20日)より
「乾燥は主原因の1つではあるでしょう。特に、加齢とともに皮脂量が減ってくるため、高齢のかたは乾燥によるフケが出やすいかもしれません」と言うのは、皮膚科医の吉木伸子さんだ。
「また、頭皮を覆うべき皮脂が、気温の低下で固まることも、頭皮の乾燥の一因です。皮脂には頭皮全体の潤いを保つ役割がありますが、寒くなると、皮脂が広がりにくくなるのです。イメージとして、温度が低いとバターが固まって溶けにくくなるような感じです」
なぜフケが出るの?皮膚科医が解説
しかし、フケが出る要因は、こうした気候の影響だけではないようだ。
「ストレスや食生活など、さまざまな生活要因も考えられます。昭和の日本では少なかった皮膚疾患も増えており、それに応じて対策も変わってきます」(吉木さん・以下同)
「たかがフケ」と侮れないのが、こわいところ。フケのないあなたもフケないために、対策をしておこう。
そもそも清潔にしているのに、なぜフケが出るのだろうか。黒いコートの肩先に落ちたフケを見て、愕然。きちんと洗って、しっかり保湿もしているのに、なぜ出てくるのか…。誰にも聞けないフケの疑問を教えてもらいました。
あなたのフケはどのタイプ?
「フケは、頭皮のターンオーバー(新陳代謝)によって、古くなった角質が剝がれ落ちたもので、誰にでもあるものです。ただ、通常は目に見えない大きさで、洗髪のときに流れ落ちてしまいます」
それが、なぜ大きなフケとなってしまうのか?
「もともと皮脂は毛を絡まりなどから守るためにあるもの。いわば“天然のリンス”で、誰でも体の中で、頭皮が最も皮脂が多いのです。皮脂腺から毛を伝って出てきた皮脂は、頭皮の常在菌(三大善玉菌であるアクネ菌、表皮ブドウ球菌、マラセチア菌ほか)とともに、頭皮に皮脂膜を作ります。これは、頭皮の表面を健康に保つために必要なものですが、何らかの要因で皮脂量と常在菌のバランスが乱れると、約1か月といわれるターンオーバーのサイクルが崩れ、バリア機能が低下します」
その結果、角質が剝がれ落ちるタイミングが乱れ、目に見える大きさの“フケ”となって現れるのだ。
フケのタイプ「乾燥」と「皮膚疾患」原因は?
「フケの種類は、乾燥によるものと皮膚疾患が原因のものに大別できます」
乾燥フケ…洗いすぎが原因も
「乾燥フケは、シャンプーの選び方や頻度を変え、保湿をするだけで改善する場合が多いですね。最近になって、“保湿のために、毎日体を石けんで洗う必要はない”といわれるようになりましたが、髪も同じ。バブル期に“朝シャン”が流行ったあたりから、急速に『髪も毎日洗わないと汚い』という考え方が定着したような気がします。
しかし、それ以前は毎日髪を洗うことが当たり前ではなかったはず。フケに悩むかたは、毎日のシャンプーで必要な皮脂まで落としてしまい、頭皮のターンオーバーを乱している可能性があります。また、すすぎが足りず、頭皮にシャンプー剤が残ってしまうのもよくありません」
皮膚疾患によるフケ…原因は食生活に?
もう1つは、皮膚疾患が隠れている場合だ。
「最も多いのは『脂漏性(しろうせい)皮膚炎(脂漏性湿疹)』です。脂のバランスが崩れ、雑菌が繁殖して炎症を起こすもので、地肌に赤みが出て、フケやかゆみが現れます。毛が生える部位に多く、眉毛からフケが出る人もかなりいます」
まだ解明されない点が多い疾患だが、脂性の人がなりやすいわけではないという。
「脂漏性皮膚炎には乾燥型と脂性型があり、前者はパラパラとした小さいフケが、後者はベタッとした大きなフケが出る傾向があります。脂漏性皮膚炎は10~60代まで、性別問わずかかります。秋冬に悪化し、真夏は症状が改善されるケースが多いのですが、重度の人は一年中続くことも」
主な原因は、現代の食生活にあると考えられている。
「クリニックでも、まず食生活を見直すことで症状が改善するかたが多いです。『フケは出ていないけれど、かゆみがある』など、程度の差はありますが、脂漏性皮膚炎の罹患率はかなり高いといえます」
悪化が深部に及ぶとフケやかゆみだけでなく、髪が抜ける(脂漏性脱毛)こともある。
「通常、皮膚炎が治れば髪は生えますが、数年間症状が続いている場合は、なかなか髪が生えてこなくなることもあります。症状が軽い間は市販の塗り薬で様子を見てもいいのですが、以前よりフケやかゆみがひどくなったと思われるときは、皮膚科の受診をおすすめします」
<フケの主なタイプと原因>
■乾燥によるもの
【症状】
・顔や体の皮膚と同様頭皮が乾燥し、角質が剝がれたもので、白くて細かく、パラパラとしたフケとなる。
【原因】
・保湿不足、髪の洗いすぎ、洗い方の間違い、シャンプー剤が合っていない、ドライヤーによる乾燥など。
■疾患によるもの
【症状】
・脂漏性皮膚炎や乾癬(かんせん)などの皮膚疾患から起こるもので、乾燥型の人は上記と同様の細かいフケが、脂性型の場合は、大きくて湿ったフケが出る。乾癬になると、頭皮に境目のある赤い発疹が出て、ウロコのように大きなフケが出る。
【原因】
・食生活の乱れ、睡眠不足、ストレスなど。乾癬の場合は遺伝的な要因もあり、脂質代謝異常を伴う。
日常でできるフケ対策
吉木さんに、日常でできるフケ対策を教えてもらった。
「毎日必ずシャンプーするというかたは、洗髪を2~3日に1回に減らし、シャンプーを使わない日は湯だけですすぐ“湯シャン”を取り入れてみてはいかがでしょうか。
皮脂は38℃以上で溶けて流れ落ちるので、汚れの約8割は湯だけで取り除けます。髪のパサつきが気になるなら、毛先だけにコンディショナーをつければいいでしょう。『髪がきしむのでは?』という声もありますが、湯シャンできしむことはありません。
ただ、脂性の人や、整髪料やオイルをたくさんつけている人はシャンプーを使ってもいいでしょう。その際は頭皮をこすらずに洗い、充分にすすいでください」
毛穴に詰まった皮脂をしっかり落とさないと、フケだけではなく、薄毛の原因にもなりそうだが…。
「ネットなどでも、毛穴の詰まりがトラブルのもとというような情報が広まっていますが、皮脂は、表面をコーティングすることで頭皮を潤す大切なもの。取り去ってしまったら頭皮の健康が損なわれます。フケが出るのはあくまで皮脂と菌のバランスの悪さが原因です。毛根が生きてさえいれば、上にふたをしても髪は成長します。薄毛の根本問題は毛根。いずれも、『毛穴の詰まり』以外に原因があるんですよ」
食生活を見直してみよう
そして、脂漏性皮膚炎などの皮膚疾患が考えられる場合は、真っ先に食生活を見直すべきだと吉木さんは言う。
「皮脂は、自分が食べたものから作られます。したがって、悪い油を多く摂れば、皮脂や常在菌にも悪影響を及ぼします。頭皮のバリア機能が乱れ、敏感肌になるのです。
問題は加工食品。人体に必要な必須脂肪酸の中で魚などに含まれるオメガ3と、植物油などに含まれるオメガ6の摂取割合は、約1:4が理想。ところが、現代人は1:20ほど(アメリカ人に至っては1:100とか!)とされ、オメガ6の比重がとても高い。
お菓子やコンビニ食品、外食の料理、出来合いのお総菜など、市販の食べ物にはほぼオメガ6が含まれているのです。魚中心の食生活だった頃の日本人に脂漏性皮膚炎の罹患者は少なかったそうなので、やはり魚を積極的に摂り、加工食品に頼らず食材から自分で調理することが最良です」
睡眠不足やストレスも頭皮の状態を悪くする。規則正しい生活も心がけたい。
フケを防ぐシャンプーの選び方
フケを防ぐには、どんなシャンプーを選んだらよいのか。
「フケ以外の肌トラブルがない人は、あまり気にせず、自分の好きなものを使っていいと思います。
ただ、頭皮の乾燥が進んでいるときは、アトピーや敏感肌用の代表であるアミノ酸系のシャンプーがいいと思います。泡立ちがよくないのですが、汚れは充分に落ちるので問題はありません。
マラセチア菌が増えると脂漏性皮膚炎が起きやすくなるため、この菌を除去するシャンプーも出ていますが、それだけでフケを止めるのは難しいことも。マラセチアは善玉菌のため、すべてなくすことはできないからです。
また、皮脂のpH(ピーエイチ)が約4.5のため、肌は通常弱酸性ですが、閉経後、急速に皮脂が減ると、肌はアルカリ性に傾き、トラブルが起こりやすくなります。そのため、石けんの材料でもある『純石けん』『石けん素地』のシャンプーは、一見肌にやさしそうですが、アルカリ性(pH10~11)で洗浄力も高いため、注意が必要です」
フケを予防する4つの対策【まとめ】
湯シャンを取り入れてみる
脂性でべたつきが気になる人や、整髪料をつける人以外におすすめ。ややぬるめ(38~39℃)の湯で、頭皮と髪を丁寧にすすぐ。
「髪同士をこすらないので髪へのダメージも減少。パサつく人は毛先だけにコンディショナーを。洗い流さないタイプのものは、肌に付着してかゆみを起こす場合があるのでおすすめしません」(吉木さん・以下同)。
食生活を見直す
オメガ6も必要だが、摂りすぎは厳禁。手っ取り早く食べられるものはオメガ6が多めと心得て、意識して減らす努力を。
「オメガ3はくるみなどにも含まれますが、動物性の方が効果が高い。調理で加熱する際はオメガ9のエクストラバージンオリーブオイルがおすすめ(オメガ3のえごま油、亜麻仁油などは加熱不可)」。
保湿する
「体が乾燥すれば、お風呂上がりにクリームを塗りますが、頭皮は洗いっぱなしの人も多いのでは。 さらにドライヤーを当てれば、乾燥するのは当たり前。タオルドライをした後に、顔用の乳液を頭皮につけて保湿をしましょう。頭皮専用のものもありますが、顔につけるものは肌にやさしくできているので、トラブルが少ないです」
ドライヤーの使い方を見直す
地肌にドライヤーの風を直接当てずに、髪に向かって60cmほど離すことが大切。
「ドライヤーは、ずっと当てているとどんどん温度が上がるので、注意しましょう。頭皮と髪を保護するためには、低温で時間をかけて乾かす方法がおすすめです」。
温風と冷風が切り替えられる機能を活用しながら、じっくりと乾かしましょう。
教えてくれた人
皮膚科医・吉木伸子さん/『よしき皮膚科クリニック銀座』院長。近著に『美容皮膚科医が教える大人のヘアケア再入門』(青春出版社)。http://yoshiki-hifuka.com
取材・文/佐藤有栄 イラスト/うつみちはる
※女性セブン2021年12月2日号
https://josei7.com/