自粛生活で急増”夏の冷え”に克つ食品Best13 1位しょうがの効果的な摂り方
クーラーの効いた涼しい部屋で、冷たいものを飲みながらTシャツと短パンで過ごす──コロナ禍で外出もままならないいま、夏休みの定番のスタイルだが、冷えは万病のもと。体を温める食品を摂って全身の不調を撃退すべし! 食と健康の専門家21人が選んだ「冷えに克つ」最強の食品ランキング13をお届けする。
記録的猛暑とマスク生活が相まった今年の夏は、熱中症で救急搬送される人が後をたたない。消防庁の発表によれば、救急搬送された人の数は1週間で8122人にものぼっている。
コロナ禍で病床数が激減するいま、こまめに冷たいものを摂り、クーラーはつけたままにするなど熱中症の対策を徹底している人も多いだろう。しかしそれが、新たな不調の原因になるケースも後をたたない。
イシハラクリニック副院長の石原新菜さんが言う。
「テレワークや外出自粛で室内にいる時間が長期化した結果、クーラーの効いた涼しい環境で冷たいものを摂ることが増えた今年の夏は、冷えに悩む人が多い。薄着・クーラー・冷たいものの摂りすぎの3つが“夏の冷え”の原因ですが、いまの自粛生活はこれらすべてに当てはまりやすいといえる」
特に女性にとって夏の冷えは大敵だと話すのは、メディカルチェックスタジオ東京銀座クリニック院長の知久正明さんだ。
「冷たい飲食物やクーラーの風は体の内側から冷やすため、脳や内臓など体の内側の温度である深部体温を低下させます。すると免疫力が大幅に下がり、病気にかかりやすくなる。女性の場合、ホルモンバランスが崩れ、自律神経が乱れて頭痛や不眠などさまざまな体調不良を招いてしまうケースも多いのです」
体の冷えが恒常化すれば、体温を維持するために血管が収縮し、その結果血流も悪くなる。
「血の巡りが悪くなれば末端の手足の冷えが悪化して代謝が悪くなり、肌荒れやむくみ、肩こり、生理痛などの原因に。加えて、代謝が落ちることで太りやすくもなる。冷えは女性の美容と健康の大敵なのです」(田中病院院長の田中優子さん)
とはいえ、暑い部屋で冷たいものを飲まずにクーラーもつけずにがまんしていたら、それこそ熱中症になりかねない。夏の暑さを避けながら快適に過ごしつつ体を冷やさないためには、食べ物で体を内部から温めることが肝要だ。
では、何を食べれば体を冷やさず快適に過ごすことができるのか。専門家の答えに耳を傾けたい。
夏の冷え症に克つ最強食品ランキング(13~1位)
以下、21人の「食と健康のプロ」に「夏の冷えに効く最強食品」を挙げてもらい、1位を5点、2位を4点、3位を3点、4位を2点、5位を1点として集計。5点以上を獲得した食品を掲載した。
専門家のみなさん
石原新菜さん(医師/イシハラクリニック副院長)、磯村優貴恵さん(管理栄養士)、上馬塲和夫さん(医学博士)、小倉朋子さん(トータルフード代表)、金子あきこさん(管理栄養士)、近藤千種さん(医師/ちくさ病院)、佐々木欧さん(医師/秋葉原駅クリニック)、佐藤留美さん(医師/朝倉医師会病院)、清水加奈子さん(管理栄養士)、田中優子さん(医師/田中病院院長)、田邉真帆さん(医師/大平医院副院長)、知久正明さん(医学博士)、中沢るみさん(管理栄養士)、西脇俊二さん(精神科医)、浜本千恵さん(管理栄養士)、福田千晶さん(医学博士)、藤岡智子さん(栄養士/フードライター)、星子尚美さん(医師/星子クリニック院長)、堀知佐子さん(管理栄養士)、松村圭子さん(婦人科医)、望月理恵子さん(管理栄養士/健康検定協会)
《順位(点数)/食品/ポイント》
13位(5点):アボカド
「アボカド1個が含有するビタミンEの量は1日に必要な摂取量の3分の1。加熱せずに手軽に食べられるため、積極的に摂って」(近藤さん)
13位(5点):カカオ
「ふんだんに含まれるポリフェノールとテオブロミンは血管を拡張して手足の血流を促進してくれる。鉄分も豊富なため、貧血由来の冷え症にも効果がある」(清水さん)
13位(5点):山椒
「胃腸の冷えを取る漢方薬である『大建中湯』の原料としても使われているほどその効力は折り紙つき。日本でも昔からスパイスとして重宝されており、日本人の体に最も合っているといえる」(上馬塲さん)
13位(5点):夏野菜全般
「トマトやきゅうりなどの夏野菜はカリウムと水分を豊富に含み、利尿作用に優れているため夏バテ防止効果がある。体を冷やさないためには、アヒージョなど加熱した状態で食べるべし」(田邉さん)
13位(5点):みょうが
「みょうがはショウガ科の植物で、しょうがと同様に血行をよくし、体を温める作用がある。細かく刻んでなめろうにまぜるといい」(松村さん)
13位(5点):鶏肉
「インド発祥の伝統医療・アーユルヴェーダの世界では“火”のエネルギーを持つ食品とされている」(西脇さん)
10位(6点):うなぎ
「血流を促すビタミンEや、エネルギーを体熱に効果的に変えるビタミンB群が抜群に多い。丑の日ばかりではなく、冷えや疲れを感じたら食べてほしい」(浜本さん)、「体を温める作用のある成分であるサンショオールがたっぷり含まれた山椒を振りかければ、相乗効果でさらに体が温まる」(松村さん)
10位(6点)カレー粉
「スパイスの辛み成分が代謝を上げて体を温めてくれ、血流もよくなるため末梢の冷えも改善される。カレー粉の香り成分は食欲不振にも効果あり」(清水さん)、「スパイスには血流アップに加え、胃腸の動きを活性化させる働きが。夏バテ対策にも」(磯村さん)
10位(6点)長ねぎ
「ふんだんに含有する硫化アリルは、ビタミンB1の体内への吸収を促す効果が。豚肉やレバー類などビタミンB1を含む食材と一緒に摂ることでエネルギーが体内に取り込まれ、冷え症改善の効果が期待できる」(藤岡さん)、「アリシンをはじめとし、血流を促進して体温を上げる成分を多く含んでいる」(中沢さん)
7位(7点)かぼちゃ
「血流を改善するビタミンEが豊富。免疫機能を高めるβ-カロテンも豊富で、夏バテ予防にもいい」(松村さん)、「脂溶性ビタミンのビタミンEは、油と一緒に摂ると吸収されやすい。脂肪分を含む鶏ひき肉とかぼちゃの煮付け、天ぷらにして食べるのがおすすめ」(福田さん)
7位(7点):羊肉
「ふんだんに含まれるL-カルニチンは代謝を上げる効果が。また、女性に多い末端冷え症は鉄分不足が原因の場合が多いため、鉄分が豊富なのもうれしい」(小倉さん)、「ラムやマトンといった羊肉は代謝を高めやすいというデータがある」(中沢さん)
7位(7点)納豆
「良質なたんぱく質で体温を上げるうえ、ビタミンや鉄分に加え女性ホルモンと似た成分であるイソフラボンもふんだん。50代以上の女性は特に、積極的に摂ってほしい」(星子さん)、「ナットウキナーゼには血流促進効果がある。熱を効率よく作り出すたんぱく質も豊富で冷え予防、代謝アップなどが期待できる」(望月さん)
6位(10点):キムチ
「発酵の過程で生まれた豊富なビタミンB群には、エネルギーの代謝を円滑にし、熱を作り出す力が」(望月さん)、「原料の唐辛子の辛み成分であるカプサイシンは体温を上げる効果が。加えて発酵食品であるキムチには乳酸菌がたっぷり。腸内環境を整えて夏の冷えの深刻な症状の1つである消化機能低下を改善してくれる」(清水さん)
5位(11点):玉ねぎ
「ねぎ類特有のにおい成分である硫化アリルはビタミンの吸収を促進し、体の深部温度を上げてくれる。免疫力アップ効果も」(知久さん)、「辛み成分であるアリシンには血流改善効果が、皮が含有するケルセチンには抗酸化力がある。これらの成分は水に溶けやすいため、スープやみそ汁がおすすめ」(田中さん)、「特に紫玉ねぎはポリフェノールの一種であるアントシアニンが豊富。抗酸化作用が強く、疲れ目にいい。生で食べられるのもうれしい」(松村さん)
4位(14点):みそ
「アミノ酸やビタミンB群、鉄、マグネシウムなどの代謝を高め、体を温めてくれるミネラルが豊富」(石原さん)、「体を内側から温めるためには汁物を1品取り入れたいところ。発酵食品であり、腸内環境を整える役割も果たすみそ汁がイチオシ」(磯村さん)、「みそに含まれる麹菌や乳酸菌は腸内環境を良好にし、自律神経を整えてくれる。その結果、体内温度が上がる」(知久さん)
3位(15点):シナモン
「特に内臓の冷えに効果あり。温かい紅茶にすり下ろしたしょうがとシナモンを加えたシナモンジンジャーティーは、相乗効果で体が温まること間違いなし」(田邉さん)、「植物ポリフェノールの一種であるシリンガレシノールをふんだんに含む。細胞を活性化し、血管やリンパ管の老化を防止する効果が」(佐々木さん)、「漢方の世界では『桂皮』という名前で知られており、冷えから起こる腹痛や関節痛などの痛みを和らげる薬効がある」(小倉さん)、「風味を楽しむ程度でも充分に効果あり。ただし含有するクマリンという成分は摂りすぎると湿疹が出ることがあるので、食べすぎには注意を」(上馬塲さん)
2位(19点):にんにく
「香り成分であるアリシンには、代謝を高め血流をよくして体を温める効果が。血液がサラサラになれば、相乗効果で美肌になることも期待できる」(田中さん)、「アリシンには冷え症の改善に加えて動脈硬化や血栓の予防効果も」(星子さん)、「加熱することで発生するスコルジニンには夏バテに対抗できる疲労回復効果が。加熱して料理に取り入れるべし」(知久さん)、「スコルジニンは体内の栄養素の燃焼を促し、エネルギー生産の効率を高める力も」(小倉さん)
1位(67点):しょうが
「生のしょうがに含有のジンゲロールには殺菌作用に加え、体の熱を取る効果があるが、加熱するとショウガオールという体を温めてくれる成分に変化する」(中沢さん)、「ショウガオールが持つ辛み成分には毛細血管を拡張させ、血行をよくする作用が」(石原さん)、「しょうがには体の芯から温める作用があるが、汗をかくほど食べると体温を下げてしまうので量は控えめがおすすめ」(堀さん)、「夏の冷え症は胃腸の働きが弱って体温が下がっている場合が多いが、『ショウガオール』には体を温めるうえ、胃腸の働きを高める効果も」(上馬塲さん)、「みそ汁にちょい足しするなど少量ずつ食事に取り入れるといい」(金子さん)、「冷えの改善に加え、食欲増進や健胃・解毒・消炎・消臭作用などあらゆる不調に効く。名実ともにスーパーフードといえる」(佐藤さん)
1位「しょうが」の効果的な摂り方は?
多くの専門家が真っ先に名前をあげ2位にトリプルスコア以上の差をつけてトップに躍り出たのは、しょうがだ。管理栄養士の中沢るみさんは加熱して摂ることを推奨する。
「生のしょうがが含有する『ジンゲロール』には、殺菌作用と体の熱を取る働きのある成分が含まれています。ところがこのジンゲロールは、加熱すると『ショウガオール』という体を温める成分に変化するのです」
つまり、生のままで摂るのは逆効果。加熱して食べるのが鉄則だ。田中さんが「最強メニュー」として提案するのが、「豚肉のしょうが焼き」だ。
「豚肉が含むビタミンB1にも、体を温める効果があるとされています。ショウガオールとの相乗効果に加え、豚肉の良質なたんぱく質は代謝を上げ、体を温めてくれる」(田中さん)
4位のみそとのタッグも強力だ。中沢さんは「すりおろししょうが入りみそ汁」が朝の定番だと語る。
「大豆が含む良質のたんぱく質で代謝が上がるうえ、できたての温かいみそ汁ににしょうがをすりおろせば、それだけでジンゲロールがショウガオールに変化して、体をよりいっそう温めてくれます」(中沢さん)
スパイスは加熱がキーワード
2位にランクインしたにんにくも、“加熱”がキーワードになる。
「にんにくに多く含有する『アリシン』という成分は、疲労回復効果があるとされ、夏バテ気味の体に有効です。生のままでも効果はありますが、加熱すると『スコルジニン』という成分に変化して、新陳代謝を活発にしてくれる。深部体温も大きく上昇します」(知久さん)
しょうがやにんにくといった香味野菜のほか、3位のシナモンや10位のカレー粉、13位の山椒など、スパイスを推す声も多かった。管理栄養士の磯村優貴恵さんが言う。
「ステイホーム生活が長引くいまこそ、スパイスを積極的に取り入れることを推奨します。外出が減り、体を動かさない時間が増えるほど筋肉がこり固まり、血流が悪くなって冷えの原因になる。スパイスには胃腸の働きをサポートするほか、血流をスムーズにする働きがある。この夏は飲み物や食べ物にひと足ししてほしい」
フードコンサルタントの小倉朋子さんが一票を投じたのはシナモンだ。
「漢方の世界では『桂皮』という名前で、体を温める生薬として古くから知られています。温熱効果とともに、冷えから起こる腹痛や関節痛などの痛みを和らげる薬効があるとされています。さらに、毛細血管の修復を促す成分も含まれており、冷えの予防や改善をするためのスパイスとしてはパーフェクトだといえるでしょう」(小倉さん)
各種スパイスはキッチンに常備して、“ちょい足し”を楽しみたいが摂りすぎには注意が必要だ。秋葉原駅クリニックの医師・佐々木欧さんが解説する。
「摂りすぎると胸焼けや下痢といった胃腸の不調を起こします。これはスパイスだけでなく、しょうがなど薬味全般にいえること。シナモンならば、パウダーをコーヒーや紅茶に入れたりトーストに一振りするなど、あくまでも少量で用いるのがおすすめです」
※女性セブン2021年8月19・26日
https://josei7.com/
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