老後健康のために始めてはいけないこと5つ|昼寝、長時間のテレビほか【医師監修】
快適に老後を過ごすため、よかれと思ってあれこれ工夫しているかもしれないが、実は、その試行錯誤が老後の平穏を大きく狂わせる恐れがある。老後を健康に生きるため、毎日の服薬が欠かせないという人もいるだろう。ところが、これも考え直すべかもしれない。専門医に取材し、老後に始めてはいけない「医療・健康」にまつわること、上位5つをまとめた。
薬やサプリメントに頼りきりにならない
新潟大学名誉教授で医師の岡田正彦さんは「主治医の指示に従ってほしい」と前置きした上でこう指摘する。
「海外で膨大な追跡調査が行われた結果、重大な持病がなく、単に検査値が悪いだけの高齢者であれば、血圧やコレステロール値を下げる薬はのまなくていいと判明しています。むしろ、血圧を下げすぎると失神して骨折などのけがをするリスクを高めます」
血圧が上がるのは、加齢とともに血管がしなやかさを失ってしまった分、隅々まで血液を送ろうとして体がわざと血圧を上げているからだ。それを薬で下げていると、体の末端まで血が巡らない恐れが生じる。
「脳に血液が送られなくなると、認知症や脳梗塞のリスクが高くなる。老後に血圧やコレステロール値が上がることは自然な現象だと考え、気にしすぎない方がいい」(岡田さん・以下同)
テレビCMのうたい文句につられて、サプリメントに興味を持っている人も多いだろう。だが、こちらも気軽に摂るのは禁物だ。
「特にカルシウム含有をうたうサプリは要注意。骨を丈夫にしたくてのむ人が多いと思いますが、カルシウムのサプリを摂っても骨折予防にならないという研究結果も出ている。それどころか、カルシウムが腎臓や心臓、関節にたまり、かえって健康を害します」
また「アンチエイジングに効果が期待できる」とビタミンBやEを含むサプリも多く売られている。ところが、カルシウム以上にリスクがある。
「ビタミンB、Eは抗酸化作用が非常に強いことが知られている抗酸化物質です。老化の原因とされる活性酸素などを消去する力があるのですが、海外の調査では過剰に摂取すると、がんを発症することが明らかになっています」
サプリはあくまで「食品」である。適度な摂取なら問題ないが、代謝の落ちる年齢になってから大量に摂ることは体の負担となりかねない。
「若いときは、脳をリフレッシュさせるために有効だった『昼寝』も、老後の生活では不眠のリスクにつながる。のんびりできる時間が増えたからこそ、アクティブに過ごすことが健康への近道です」
薬に頼るより、まず運動だ。
老後の「医療・健康」にまつわる注意点、上位5つを岡田さん監修のもとランキングにまとめた。
【1】血圧・コレステロールの薬
加齢により血圧やコレステロールの値が上がるのは自然現象。服薬で血圧が下がりすぎると脳へ血液が充分に送れず、認知症や脳梗塞のリスクが高くなる。世界的には、ほかに重大な病気がなく、この2つの数値のどちらかが悪いだけの場合、服薬の必要はないとされる。
【2】サプリメント
特定の成分だけが異常な高濃度で体に入ってくるため、体に負担となる危険がある。たとえばカルシウムのサプリは骨には使われず、腎臓や心臓、関節にたまり病気につながる恐れがある。ビタミンB12やEの過剰摂取も、がんの原因になると海外の調査でわかっている。
【3】痛み止めの服用
高齢になると、痛み止めを服用しても若いときのように短時間で痛みが緩和しないため、長期連用しやすい。痛み止めの成分であるロキソプロフェンは胃潰瘍、アセトアミノフェンは腎臓と肝臓を悪くし、病気のリスクを高める恐れがあるので、のみすぎに注意したい。
【4】テレビを長時間見る
海外の生活習慣追跡調査で、「テレビを見ている時間が長い人ほど、寿命が短くなる」という報告がある。体を動かす時間が短いため、老化の原因となる活性酸素がたまることが原因と考えられる。
【5】昼寝
昼寝をすることで寿命が延びるという根拠はない。また、高齢になってからの昼寝は若いときのように数分で起きられないことが多く、深い眠りに落ちやすい。それにより夜中になっても寝つくことができず、睡眠剤を服用する高齢者は多い。
その他、「がんの手術・検診」「ダイエット」など。高齢になってから見つかったがんは、手術する方が体の負担となる可能性が高い。また、骨や血管がもろくなっている高齢者がダイエットによってたんぱく質不足を起こすと、脳梗塞や骨折が起こりやすくなってしまう。
教えてくれた人
新潟大学名誉教授・医師・岡田正彦さん
※女性セブン2020年8月12日号
https://josei7.com/
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