睡眠と認知症の関係を専門医が解説 深い眠りを得るために心がけたい生活習慣
加齢による記憶力の低下は仕方がないと諦めてはいないだろうか。毎日の生活習慣次第で、“使える脳”に変えていくことも可能だという。その習慣の中には「睡眠」が重要な割合を占めている。“できる人”の睡眠とは…早速見てみよう。
6時間半~7時間半の睡眠がベスト
睡眠は人が生きる上で不可欠な生理機能だが、勉強家ほど睡眠時間を削ろうとする。
「脳の健康のためには6時間半~7時間半の睡眠が最適です。短すぎても長すぎても、質が悪くてもよくありません」
と話すのは、脳神経科学が専門の早稲田大学理工学術院教授・枝川義邦さんだ。
あなたの平均睡眠時間はどれくらい?
「女性セブン」(小学館)のメルマガ会員組織「女性セブン倶楽部」の会員に睡眠時間についてのアンケートを実施した結果(回答者1524人)、最適睡眠時間とされる6時間半~7時間半を含む「6時間以上8時間未満」に該当した人は46.9%。半数近い人が「6時間未満」で睡眠不足だとわかった。
物覚えがよい人が睡眠前にしている工夫とは?
■就寝2時間前からスマホの電源を切るようにしています。(57才・主婦・山梨県)
■寝室でアロマを焚(た)きます。(46才・会社員・東京都)
■毎晩パジャマに着替え、歯を磨き、読書するのが、私の段取り。(59才・主婦・熊本県)
深い睡眠は認知症予防につながる
脳も体も熟睡している状態を“ノンレム睡眠”というが、睡眠不足や不眠でこの状態を確保できないと、アミロイドβ(※)などの毒素が脳に蓄積され、アルツハイマー型認知症の発症リスクが高まる。
一方、適度な量と質のよい睡眠をとっていると、脳内でアミロイドβがきちんと除去されることが近年わかってきている。
認知症には、アルツハイマー病などの病気によるものと、脳の老化によるものがあるが、後者は進行を食い止められる。その改善のカギは、朝日を浴び、体を動かすことだ。
朝、日光を浴びると脳内で睡眠ホルモンの分泌が止まり、夜にはまた分泌されるので自然と質のよい睡眠が得られる。さらに、散歩で体を動かすことで、血流がよくなるだけでなく、五感が刺激されて神経細胞が活性化される。こうした生活リズムと深い睡眠が認知症予防につながるのだ。
(※)アミロイドβはアルツハイマー型認知症に見られる老人斑の大部分を構成しているたんぱく質のこと。
スマホの目覚まし機能で起きるのはよくない?
質のよい睡眠をとるには、スマホを寝室へ持ち込むのをやめよう。休めるべき脳を刺激してしまうからだ。とはいえ、目覚まし機能を使いたいという人もいそうだが…。
「個人的には、目覚ましとして使うだけなら持ち込んでも構わないと思います。スマートフォンなら、心地よい音楽などをアラーム音に選ぶことができますしね。近くにあるとどうしても動画やニュースを見てしまう場合は、機内モードで通信を遮断したり、隣の部屋に置くという方法も。離れたところにあれば、アラームを止めるために歩いていかないといけないので、目も覚めてちょうどいいと思います」(枝川さん)。
教えてくれた人
枝川義邦さん/脳神経科学者
早稲田大学 理工学術院教授。著書に『「脳が若い人」と「脳が老ける人」の習慣』(明日香出版社)、『記憶のスイッチ、はいってますか~気ままな脳の生存戦略』(技術評論社)など。
取材・文/北武司 イラスト/田中斉
※女性セブン2021年6月17日号