猫が母になつきません 第252話「だれ?」
「だれ?」そう声に出していました。その小さな生き物は見たことのない姿で、全体に茶色の毛が生えていますが尻尾やお尻、脚には毛がありません。小さな目でこちらをじーっと見ています。以前母が「庭にイタチがいた」と言っていたので、すぐ呼びに行きました。しかし母も「こんなの初めて見た」と。毛がないのはあきらかに皮膚病のせいだし、目もあまり見えていないような…かなり弱っています。インターネットで調べて、それは疥癬(かいせん)という皮膚病にかかったタヌキだということがわかりました。全国的に増えているらしい。見つけても接触しないように、人が介入することは生態系を乱すという理由で自治体は対応しない、ということでした(対応は自治体によって違います)。そのタヌキはまもなく死ぬでしょう。でも私にできるのは自分と母と猫たちが疥癬に感染しないように守ることだけ。それ以来、さびにブラシをする時にいつもタヌキのことを思い出します。生きているのもつらそうだし、だからといって…。《自然にまかせる》それは簡単なようで、なかなか大変な事だと思いました。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。