医療と介護が加わったコンビニサービス 大手3社の内容とは
その理由は少子高齢化だ。
「シニアのお客様や女性のお客様など広がる客層に対して他業態との一体型店舗の展開を強化しています」(ファミリーマート広報グループ)
ファミリーマートは薬局の他にもスーパーやカラオケ、外食産業など異業種とのコラボに積極的に乗り出しており、現在最も展開店舗数が多いのがこのドラッグストアとの一体型店舗で、’15年2月末現在32店舗まで増やした。
「お客様の声を聞くとコンビニに置いてほしいものの上位に必ず薬が入ってきます。薬を買うついでに、買い物や公共料金の支払いなど各種サービスを受けることができるのが強みです」(同前)
ファミリーマートは2018年度末までにドラッグストアと提携した一体型店舗を1000店まで増やす予定だ。
ローソンの介護拠点併設型店舗
そして、このたび介護事業を本格的に取り入れたのがローソンだ。ローソンはかねてより低カロリーの弁当やオーガニック食材など健康志向の商品を揃えた「ナチュラルローソン」を立ち上げるなど、健康分野に力を入れていた。そして4月3日、埼玉県を中心に地域密着型の介護サービスを展開する「ウイズネット」と提携し、介護拠点併設型店舗の1号店を埼玉県川口市にオープンしたのだ。
玉塚元一社長はオープニングセレモニーで「高齢化という日本全体が抱える問題に対し、町のニーズは高まっている」と話した。新店舗では日中ケアマネジャーまたは相談員が常駐(8時30分~17時30分)して介護相談に応じる。
「コンビニの利点は24時間オープンしていること。介護をするかたにとって有用な拠点になると考えます。買い物のついでに介護の相談をする、介護の相談をするついでに買い物をする、といったように気軽にお使いいただければと思います」(ローソン広報室)
“介護コンビニ”では、介護相談が受けられるほか、高齢者が集えるサロンスペースも併設。自治体や医療機関、介護事業所などの高齢者向けの情報を提供していく。シニア向けのお菓子、日用品、介護関連用品の品揃えを増やし、商品を自宅に届けるなどの買い物サポートまで充実している。
それにしてもなぜ、コンビニは医療・介護分野に積極的に参入しているのか。『コンビニだけが、なぜ強い?』(朝日新書刊)の著者である吉岡秀子さんが言う。
「コンビニは“アメーバのように変われる”と評されるほど時代の変化への対応力が強い。1970年代に誕生してから常に時代のニーズに対応し、お弁当やお総菜の充実、公共料金の支払い受け付け、ATMの設置など商品やサービスを新しくしてきました。そして少子高齢化の今、メインとなる顧客は当然シニア層です。企業として現在の社会問題やニーズに対応し、医療・介護分野に乗り出すのは当然の流れといえるでしょう」
その分野は先行する専門業者が数多く存在する。コンビニがやる意義は「小さな商域というビジネススタイル」と吉岡さんは指摘する。
「コンビニの商売の範囲は店から徒歩5~10分圏内と狭い。つまり“ご近所ビジネス”。なので、地域に密着した商売が得意なんです。消費者との距離が近いので、『○丁目の○○さんは独り暮らし』、『○○住宅の△△さんは足が不自由』といったように近隣住民のことを把握できます。だから他にはない細やかな対応ができる。それが今や全国に5万店以上ありますから、コンビニはもはや社会インフラといっていいでしょう」
便利で手軽な場所がますます頼りになりそうだ。
※女性セブン2015年5月7日号