「親の無駄遣いが目に余る」と悩む48歳・男性に毒蝮三太夫がズバリ!アドバイス【連載 第3回】
ある意味、親はもっとも付き合い方が難しい相手である。親や高齢者とのコミュニケーションにまつわる悩みに、毒蝮三太夫さんがズバリ答える「マムちゃんの毒入り相談室」。今回も忖度なしのマムシ節が炸裂する。「親の無駄遣いをやめさせたい」という48歳男性の悩みに対して、マムシさんはどんなアドバイスを贈ったのか!?(聞き手・石原壮一郎)
今回のお悩み:「使いそうにない健康器具や調理家電を通販で買ってしまう」
さっそく相談にいってみようか。48歳の男性が、こんなメールをくれた。
「父親は76歳、母親は72歳です。おかげさまで二人とも元気なんですが、実家に行くたびに、絶対に使いそうにない健康器具や調理家電が増えています。もっぱらテレビの通販で買ってるようですが、『もったいないから、やめなよ』と何度言ってもやめません。どうすればやめてくれるでしょうか。日頃はつつましく暮らしているのに……」
回答:「無駄遣いしない人生なんて、味気ない」
なるほどね。これはもう、好きにさせてやるのがいちばんいい。騙されて借金して高いものを買わされているわけじゃないんだから。父親と母親にとっちゃ、それが楽しみなんだ。大げさに言うと、生きる張り合いになってるんだろうね。無駄遣いをしない人生なんて、味気なくてしょうがないよ。
そもそも、親が自分で貯めた金や年金を使っているわけだから、子どもがどうこう言うことじゃない。親の金は親の金だからね。心のどこかに「無駄遣いした分を貯めてたら、いつかは俺のものになるはずなのに」っていう考えがあるんだとしたら、そんなのは忘れたほうがいいな。無意識のうちに親の金をアテにして、なんだかんだ口を出し始めると、親子の関係もきょうだいの関係も必ずおかしくなってくる。
ちょっと話は飛ぶけど、俺はね、日本にカジノをつくるのは大賛成なんだ。賭けマージャンは法律違反になって、どっかの元検事長みたいに起訴されちゃう。だからカジノをつくればいいって、前から言ってるんだよ。横浜につくる話は反対が多くてたいへんそうだけど、どっかの小さい島にでもつくればいいんじゃないか。初島か猿島あたりをカジノアイランドにしてほしいね。
そこに小金もっているヒマな年寄りを集めて、どんどん遊ばせる。ただ、上限を設けたほうがいいな。年寄りは1日に10万円までしかダメですよって。テラ銭を取るわけだから税収になるし、飲み食いもして経済が回る。「今日は大儲けしちゃったよ」「ちくしょー、明日は見てろ」なんてやってたら、年寄りにもいい刺激になって健康寿命が延びるよ。
年寄りの世代は、お金は貯めておくもんだって考え方が強くて、お金を使って遊ぶのは上手じゃない。今はコロナで遠くには出かけづらいけど、そうじゃなかったら旅行だってバンバン行けばいいんだよ。体が元気なうちしか行けないんだから。たくさんある人は豪華にやればいいし、それほどない人はないなりの旅行の仕方をすればいい。夫婦で力を合わせて稼いだ金なんだから、自分たちで使うのがいちばんだよ。
だけど、年寄りが集まっているところで、俺が「年寄りはもっと金を使おう」って言ったら、80歳を超えたババアが「マムシさん、貯金も大事だよ」って言ってる。「そんなに貯め込んでどうすんだ」って聞いたら、「老後の備えよ」って。今が老後じゃねえかって笑ったんだけど、染みついた意識っていうのは簡単には変わらないんだよな。
この相談をくれた人の親は、そういう意味では立派だよ。何にもしないで我慢して毎日過ごしてるんじゃなくて、欲しいと思ったものを買って人生を楽しんでるんだから。体は元気らしいから、コロナが落ち着いたら、旅行や食べ歩きを勧めてあげるのもいいね。ほかに楽しみがなくて、はたから見ると余計な買い物が増えるのかもしれない。
明らかに騙されている場合は、全力で守ること
ただ、そうやって楽しみの範囲でお金を使っているうちはいいけど、歳をとってくるとそれこそ詐欺や悪徳商法の被害に遭う心配もある。いつの間にか認知症が進んで、同じ商品を何度も買っちゃってたりとかね。そういうのも結局は、子どもが親と日頃からちゃんとコミュニケーションをとって、様子をしっかり見てるのがいちばんの予防になる。
「これは明らかに騙されてる」「これは危ない状態だ」となったら、そのときは子どもの出番だ。全力で親を守ってやってくれ。元気なうちは好きにやらせて、いよいよとなったら助ける。言うのは簡単だけど、タイミングをつかむのが難しいよな。
お金のことだけじゃなくて、親はどんどん歳をとって、できないことが増えていく。今のところ親とあんまりコミュニケーションが取れていない場合は、親が元気なうちにたくさん話すようにしたほうがいい。親自身も子どもも「まだまだ大丈夫」と思いたいのが人情だから、そういうことをつい先延ばしにしがちだけどな。
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毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)
1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、現在『土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送』内で毎月最終土曜日の10時台に放送中。84歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など精力的に活躍中。最新刊『たぬきババアとゴリおやじ 俺とおやじとおふくろの昭和物語』(学研プラス)は幅広い年代に大好評!取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。最新刊は「【超実用】好感度UPの言い方・伝え方」。この連載では蝮さんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。
撮影/政川慎治