地震でもし家具の下敷きになったら…救助を待つ?自力で脱出?正しい行動を専門家が解説
大きな地震はいつ発生するかわからないが、いざというとき命を守るためにとるべき行動を予め覚えておくことはできる。地震で家具が転倒、その下敷きになってしまった場合はどうしたらいいのだろうか?専門家に教えてもらった。
家族が家具の下敷きになってしまったら?
さて、問題です。もし、家族が家具の下敷きになってしまったら…。A、B、どちらの行動をとるべきだろうか?
【A】励ましながら救助隊を待つ
【B】自力で救出する
待っていても救助は来ない心づもりでいた方がいい
地震による負傷原因の3~5割が、家具や電化製品の転倒や落下によるものだ(※)。もし、家族が倒れてきた家具の下敷きになったらどうするか? 下手に動かさずに専門の救助隊を待った方がよさそうな気もするが…。
「地震などの災害時は、待っていても救助は来ない心づもりでいた方がいいでしょう」
と、備え・防災アドバイザーの高荷智也さんは言う。阪神・淡路大震災のときも、生き埋めになった人の約8割が行政などの救助隊ではなく、家族や近所の人に助けられた。
「被災地域が広くなるほど、この傾向は強くなります。特に地震の場合、救出が遅れると、津波や土砂災害、延焼火災などの二次災害に巻き込まれる恐れもあるので、自力による素早い救出が必要となります」(高荷さん・以下同)
よって【B】が正解だ。
さらに、下敷きになってから2時間以上が経過するとより危険が高まる。
「体が押しつぶされた状態が長く続くと、圧迫した部分にはカリウムなどの毒素がたまります。その状態から急に解放すると、毒素が全身を巡り、ショック死する危険性があります。目安となる時間は2時間とされるため、できるだけ素早い救出が鍵となります」
(※)東京消防庁「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」(2020年3月発行)より
重いものを持ち上げるにはテコの原理の活用を
救出は、近所の人などと2人以上で行い、ヘルメット・軍手・靴を着用しよう。そして、下敷きになっている人に声を掛け、体のどこが挟まれているかなどを確認する。
「障害物を一気に持ち上げるとバランスを崩して転倒したり、崩壊の危険性があります。上にのっているのがたんすなら引き出しを取り出すなど、上に覆いかぶさっているものを少しでも取り除きます」
このとき、あると便利なのがノコギリ、車のタイヤ交換時に使うジャッキ、鉄製のバールだ。ノコギリは大きな家具を解体するのに使え、ジャッキやバールは重たいものを持ち上げる際に活躍する。
「重いものを取り除く場合、テコの原理を活用するのがおすすめ。持ち上げるものと支点の距離を短くすると、楽に持ち上げられます」
隙間ができたら、素早く木材などを差し込んで再転倒を防止。負傷時は慎重に引きずり出そう。また、迅速な救出が行えるよう、あらかじめ、地域の防災講座などに参加しておくと安心だ。
まとめ
●救助はすぐに来ないと心得、自力での脱出を
●救出するときは、2人以上で行う。
●ヘルメット、軍手、靴を着用しよう
●下敷きになっている人に声をかけ、体のどこが挟まれているか確認
●一気に障害物を持ち上げず、たんすなら引き出しを取り出す
●ノコギリ、ジャッキ、バールなどの用意があると便利
●重いものは、テコの原理を活用して持ち上げる
教えてくれた人
高荷智也さん/備え・防災アドバイザー
取材・文/鳥居優美 イラスト/大窪史乃
※女性セブン2021年4月1日号
https://josei7.com/
●地震後、もし近所で火災が発生したら…いざというとき迷わないためのノウハウを伝授