地震後、もし近所で火災が発生したら…いざというとき迷わないためのノウハウを伝授
大地震はいつ起こるかわからないが、いざというときに命を守るために取るべき行動を覚えておきたいものだ。地震の際、怖いことのひとつは火災。もし、家の近所で火災が発生したら、まず何をすべき?火事が起きたときにどの方向に逃げる?専門家に教えてもらった。
首都直下地震の際、出火件数は役2000件も!?
地震発生後、もし近所で火災が発生したら…。まずは周囲に火事が起きたことを知らせ、119番に通報しよう。
しかし、災害時は消防車がすぐに駆けつけてくれるとは限らない。
「内閣府の試算では、首都直下地震の際の出火件数は約2000件。同時多発的に火災が発生した場合、ポンプ車が足りなくなる恐れもあります。燃え広がる前に、地域住民が協力して消火活動を行えるかが重要となります」
と語るのは、兵庫県立大学防災教育研究センター長の室崎益輝さんだ。
そのためにも平時から自主防災組織を中心に、非常時でも迅速に消火活動ができるように訓練や仕組みを強化しておくことが大事だという。
「ただし消火活動は10分間だけ。消火活動に夢中になり、気づいたら火に囲まれていたという実例もあります。10分間がんばっても消せなかったら、すぐに避難しましょう」(室崎さん・以下同)
火災の際、逃げる方向は風上?風下?
では火災から逃げる際は、どの方向に避難すべきか?
「基本的に、火災は風上から風下に延焼していきます」
となると、風上に逃げれば、火や煙に巻き込まれないような気がするが…。
風向きに対して直角の方向へ逃げる方が安全
「風上は火元に近いのでおすすめできません。それよりも、風の流れから外れ、風向きに対して直角の方向に逃げた方が安全度は高いでしょう」
ただし地震のときは、同時多発的に火災が起こるので、逃げた方向に別の火災が発生している場合も考えられる。そのようなときも慌てず、風の流れを読みつつ、より安全な方を目指そう。
火災は、風の強さが大きく影響する。阪神・淡路大震災のときはほぼ無風で、延焼スピードは時速40m程度だったため、走って逃げられたという。一方、関東大震災のときは、台風の影響で風が強く、延焼スピードは時速200~400m、最大時速では800mにも達したため、多くの人が逃げ切れずに亡くなった。
風の強い日は、直線距離200m以内に火が見えた段階ですぐに避難を
このスピードでは、目の前に火が迫ってから逃げるのでは間に合わない。
「今日は風が強いな」と思ったら、少なくとも現在地から直線距離200m以内に火が見えた段階で、すぐに避難しよう。事前に地図などで逃げるのに目印となる場所や距離を確認しておくとよい。
まとめ
●近所で火事を見かけたら、すぐ周囲に知らせ、119番に通報を
●地域住民で消火活動を行えるように、日頃から訓練や仕組み作りをしよう
●とはいえ、消火活動は10分以内で
●火災から逃げる際は、風向きに対して直角の方向へ
●逃げた方向でも火災が発生している可能性もあるので、より安全な方へ
●風の強い日は、直線距離で200m以内に火が見えた段階で避難を
教えてくれた人
室崎益輝さん/兵庫県立大学防災教育研究センター長
取材・文/鳥居優美 イラスト/大窪史乃
※女性セブン2020年12月10日号
https://josei7.com/