小学館IDについて

小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼント にお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
閉じる ×
健康

粘膜免疫を鍛える8つの習慣…風邪・ウイルスに備える

 風邪の季節がやってきた。しかし、コロナ禍の今年はその緊張感が例年とは違う。うっかりひいてしまった風邪が引き金となって、重大な感染症につながる恐れがあるからだ。そうならないためには、風邪をひかないための体づくりが欠かせない。筋トレやスタミナ食で体を鍛えるのではなく、「粘膜免疫」を鍛えることが健康の第一歩になる。その具体的な強化の方法を見ていこう。

粘膜免疫を鍛える8つの習慣

 粘膜免疫の中でも代表的な物質が、「IgA抗体」と呼ばれるもので、ウイルスなどの病原体やアレルギー物質にくっつき、その動きを鈍らせたり止めたりして体内への侵入を阻止している。みえ呼吸嚥下リハビリクリニック院長の井上登太さんが解説する。

「粘膜の細胞は数日で入れ替わり、IgAも一緒に入れ替わります。しかし、栄養素が不足すると充分な代謝が行われなくなる。すると粘膜の活動が鈍くなり、IgAなどの免疫抗体も減少します」

→ウイルス・菌から体を守る「粘膜免疫」強化したい IgA抗体って何?

 IgAは唾液や腸などに多い物質だとわかっている。神奈川歯科大学教授の槻木恵一さんは、「お腹の調子を整えることは、結果的にIgAを増やすことにつながる」と話す。

 まず、欠かせないのは食事だ。きちんと食事をし、ビタミンやミネラル、糖質などの栄養素を不足させないことが大切だ。

1.腸内環境を高める食生活を

「『腸-唾液腺相関』といって、腸と口腔内の免疫状態には関連性があることがわかっています。腸内環境がよければ、腸管粘膜の免疫力が高まっていることはわかりやすい。ところが、それだけでなく口腔内の免疫力も自然と高まり、全身の免疫力が高まるのです」

 腸内環境が整った状態は、便通がスムーズであることを基準にするといい。毎日の食事は、腸にいいものを意識したい。

「食物繊維を多く含む野菜や果物、納豆やヨーグルトなどの発酵食品は腸内環境を整えます。おすすめは、発酵食品の成分『プロバイオティクス』と、食物繊維の成分『プレバイオティクス』を混ぜて『シンバイオティクス』にすることです」(槻木さん)

→粘膜を鍛えて免疫力を強化|喉の粘膜対策になる食品、レシピ

 たとえば発酵食品の納豆と食物繊維が豊富なアボカドといった組み合わせで食べると、より効果的だという。同様に、ヨーグルトとバナナというコンビもいい。米ボストン在住の内科医、大西睦子さんは「良質な脂」の摂取をすすめる。

「さばやいわしなどに多く含まれる『オメガ3系脂肪酸』は、過去の研究からも腸内の免疫に有益だとわかっています」

2.肉中心の高脂肪食は避ける

 一方で、粘膜免疫を低下させる食習慣もある。井上さんは「食の欧米化」に警鐘を鳴らす。

「高脂血症、高血圧、糖尿病の3大生活習慣病を招きやすい肉中心の高脂肪食はマイナス。IgAの量を著しく減少させます。さらに、現代人は野菜を食べなくなり、食物繊維の摂取量が減っている。カット野菜などを好む人もいますが、加工の段階でビタミンなども含めた栄養素が抜け落ちていることを忘れないでください」(井上さん)

3.噛む回数を増やし唾液の量を増やす

 体内の“水際”である鼻や喉からのウイルス侵入を防ぐには、唾液量を増やすことも効果的だという。槻木さんが解説する。

「咀嚼回数を増やして唾液量を増やせば、そこに含まれるIgAの量も増えます。調理時に大きめに食材を切ったり、硬い食材を取り入れるなど、咀嚼回数が自然と増える工夫をしましょう」

4.食後の歯磨きで舌苔も除去を

 食後は歯磨きも忘れずに。虫歯予防だけではなく、粘膜免疫を良好に保つために有効だ。

「汚れた口の中で細菌が増殖すると、IgAがそれらの細菌にも反応してしまい、機能を使い果たしてしまう恐れがあります。舌につく『舌苔(ぜつたい)』も細菌の塊なので、専用のブラシなどで定期的に取り除いてください」(槻木さん)

5.1日30~60分程度のウオーキング

 食事以上に重要なのが運動だろう。運動によって腸の動きや、気道から異物を排出する「線毛運動」が活発になる。

「体温が上昇して血流がよくなると、免疫アップに必要な栄養素や酸素が全身に運ばれやすくなります」(井上さん)

 ただし、やればやるほどいいわけではない。適度な運動量をオーバーすると、逆効果になることもある。大西さんが指摘する。

「短い時間に高強度の運動を行うと、免疫の機能が抑制されてIgAの分泌が減ることがわかっています。また、アスリートは競技直後に呼吸器系の感染症が増えるのですが、激しい運動による免疫の低下が関係していると考えられています。理想は1日30~60分程度のウオーキングやストレッチなどの軽い運動を継続することです」

 筋肉痛を起こすほどハードな運動をする必要はない。

→軽くて疲れにい!楽に歩けるウオーキングシューズ

6.ストレスをためないこと

「ストレスをためると血流が悪くなり、充分な栄養や酸素の運搬が阻害されて、IgAなどの働きが低下します。50代以下で激しい風邪をひいたことがある人を対象にした報告があり、風邪をひいた回数とその年に起こった出来事を調査しました。すると、風邪をひく回数が多い人は、そのタイミングに就職や転勤、配偶者との死別など、精神的にストレスとなる出来事がありました」(井上さん)

 コロナ禍で増えた巣ごもり生活も、ストレスになる環境であれば免疫力の低下を招くかもしれない。

7.外遊びで粘膜免疫は鍛えられる

 さらに、子供たちは外で遊べないからと家の中ばかりにいると、粘膜免疫が弱くなる恐れがある。

「近年、アレルギー性皮膚炎や喘息の患者が増加している理由として、清潔な環境で過ごす時間が増えたことが指摘されています。ウイルスや細菌に触れる機会が減少すると、粘膜免疫の機能が低下します。そこへ、何かのきっかけで多量のアレルゲンに触れると、アレルギーを発症してしまうリスクが高いのです」(井上さん)

 コロナ禍のいまは難しいが、外で遊んでさまざまなウイルスや細菌と触れ合うことで、粘膜免疫は鍛えられる。

8.常用薬が粘膜免疫の働きを阻む

 常服薬がある人も要注意。普段のんでいる薬が粘膜免疫の妨げになっているかもしれない。

「高齢者は胃酸をおさえる薬を常用している人も多いですが、薬によって胃酸の状態を中性に近い状態に保ち続けていると、胃酸で殺菌されていたはずの菌が胃の中で繁殖を始めます。さらに抗生物質を多用していると、薬が効かない薬剤耐性菌ができることもある。その耐性菌が胃から喉や腸に流れると常在菌とのバランスが崩れ、粘膜免疫の働きを阻みます」(井上さん)

 高齢者に多い誤嚥性肺炎は、こうした菌が原因となることも少なくない。井上さんが続ける。

「基本的に、肺は無菌状態を保っています。しかし、口の中で増えた菌や胃から逆流した菌が肺に入ることで肺炎にかかってしまうのです」

 体調を崩してから回復する力ももちろん重要だが、緊急事態であるいまは粘膜免疫を高め、病気そのものを遠ざける方が安心だ。

「風邪やインフルエンザにかかると、治るとはいっても体力を消耗します。ですが粘膜免疫は病気にかかる前に防ぐので、体に負担をかけないところが素晴らしいのです」(井上さん)

 回復より防御。それを意識すれば風邪知らずの冬が過ごせそうだ。

教えてくれた人

みえ呼吸嚥下リハビリクリニック院長・井上登太さん、神奈川歯科大学教授・槻木恵一さん、米ボストン在住の内科医・大西睦子さん

※女性セブン2020年11月26日号
https://josei7.com/

●唾液の力を高めて感染予防、免疫力UP…唾液が増える食べ物は?

●「マスクで口呼吸」の弊害 免疫力低下、扁桃腺炎…認知症を招くことも

●免疫力を低下させる「宿便」、ぽっこりお腹の解消法|空腹時の白湯と梅流しが効果的

関連キーワード

コメント

ニックネーム可
入力されたメールアドレスは公開されません
編集部で不適切と判断されたコメントは削除いたします。
寄せられたコメントは、当サイト内の記事中で掲載する可能性がございます。予めご了承ください。

シリーズ

最新介護ニュース
最新介護ニュース
介護にまつわる最新ストレートニュースをピックアップしてご紹介。国や自治体が制定、検討中の介護に関する制度や施策の最新情報はこちらでチェックできます!
介護中のニオイ悩み 対処法・解決法
介護中のニオイ悩み 対処法・解決法
介護の困りごとの一つに“ニオイ”があります。デリケートなことだからこそ、ちゃんと向き合い、軽減したいものです。ニオイに関するアンケート調査や、専門家による解決法、対処法をご紹介します。
介護付有料老人ホーム「ウイーザス九段」のすべて
介護付有料老人ホーム「ウイーザス九段」のすべて
神田神保町に誕生した話題の介護付有料老人ホームをレポート!24時間看護、安心の防災設備、熟練の料理長による絶品料理ほか満載の魅力をお伝えします。
「聞こえ」を考える
「聞こえ」を考える
聞こえにくいかも…年だからとあきらめないで!なぜ聞こえにくくなるのか?聞こえの悩みを解決する方法は?専門家が教えてくれる聞こえの仕組みや最新グッズを紹介します
切実な悩み「排泄」 ケア法、最新の役立ちグッズ、サービスをご紹介
切実な悩み「排泄」 ケア法、最新の役立ちグッズ、サービスをご紹介
数々ある介護のお悩み。中でも「排泄」にまつわることは、デリケートなことなだけに、ケアする人も、ケアを受ける人も、その悩みが深いでしょう。 ケアのヒントを専門家に取材しました。また、排泄ケアに役立つ最新グッズをご紹介します!
「老人ホーム・介護施設」ウォッチング
「老人ホーム・介護施設」ウォッチング
話題の高齢者施設や評判の高い老人ホームなど、高齢者向けの住宅全般を幅広くピックアップ。実際に訪問して詳細にレポートします。
「介護食」の最新情報、市販の介護食や手作りレシピ、わかりやすい動画も
「介護食」の最新情報、市販の介護食や手作りレシピ、わかりやすい動画も
介護食の基本や見た目も味もおいしいレシピ、市販の介護食を食べ比べ、味や見た目を紹介。新商品や便利グッズ情報、介護食の作り方を解説する動画も。
「芸能人・著名人」にまつわる介護の話
「芸能人・著名人」にまつわる介護の話
話題のタレントなどの芸能人や著名人にまつわる介護や親の看取りなどの話題。介護の仕事をするタレントインタビューなど、旬の話題をピックアップ。