女性ひとりの老後、住まい問題…家は売るべき? リフォームは急ぐべき?
厚生労働省が発表した平均寿命のデータを見てみると、女性の方が男性よりも6年も長生きするということが分かった。もし仮に、夫に先立たれひとりの暮らしが始まってみたら、住み慣れた家がやけに広く感じ、手放したいと思うかもしれない。しかし、夫婦で建てた「夢のマイホーム」の価値は、そのときにはすでにゼロになっているかもしれない…。
女ひとりの住まい問題…古い戸建ては売るべき?
不動産コンサルタントでさくら事務所会長の長嶋修さんが話す。
「30代の頃に建てた一戸建てなら、築40年近く経っているはずです。それだけ古い物件だと、建物の価値はゼロ。売っても土地代にしかならず、家の解体費用を支払うと、手元に残るお金はぐっと少なくなってしまうでしょう」
土地の値段とは違い、家の値段は住み始めた瞬間から下がり続けていく。どうしても家を売りたいなら、「いまがいちばん高い」と考えて、即、行動した方がいい。しかし、家を売った後のことまで考える必要がある。
「お金の面では割り切ることができても、気持ちの面で割り切ることができない人は多い。思い出が詰まった家を離れて、慣れない環境に変わったことで体調を崩す人もいるようです」(長嶋さん・以下同)
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家を売ってマンションに移り住んだ高齢者の実体験
二束三文で家を売って小さなマンションに移り住んでも、快適な余生が送れるとは限らない。
「一戸建てを売ったお金で1LDKのマンションに引っ越して、質素に暮らすつもりでした。
でも、毎月家賃だけでなく、管理費と修繕積立費に2万円、駐車場代に1万円も取られるんです。ご近所さんはふた回り以上年下の人ばかりで挨拶くらいしか会話がなく、家に引きこもりっぱなしの日々が続いています」
お金の問題だけでなく、年を取ってから環境が変わるストレスは計り知れない。
「一戸建てなら玄関を出てすぐに外に出られていたのが、エレベーターや階段を使わなければならないのがわずらわしく、外出しなくなる高齢者も多い。するとQOL(生活の質)が下がって、認知症や孤独死のリスクも高まります。最近は高齢者が多く住むマンションも増えていますが、その多くが築50年以上経っているような古い物件。マンションの管理が行き届かず、防犯システムも整っていないため、犯罪の温床になりかねません」
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リフォームは急がず…下準備だけに
家を手放そうにも高く売れず、移り住むのも不安。いちばんいいのは、いま住んでいる家をリフォームすることだ。とはいっても、リフォームは急ぐべきではない。
高齢者の生活支援や居住環境調整に詳しい、大阪保健医療大学准教授の山田隆人さんがアドバイスする。
「リフォームは必要性を感じてから行うべきです。
特に、元気なうちに手すりをつけると、本当に手すりが必要になったときには腰が曲がって高さが合わなくなっていたり、手すりで通路の幅が狭くなって車いすが通れなくなったり体をぶつけたり、かえってけがのリスクが上がります。すぐに手すりをつけられるように、壁の中に下地を仕込むなどの下準備だけにしておくのが無難です」
ドアノブを握り玉式からレバー式、バー式につけ替えたり、床を畳やカーペットからフローリングに替えておいたり、体の状態に左右されにくいものから取り掛かろう。
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教えてくれた人
長嶋修さん/不動産コンサルタント・さくら事務所 会長、山田隆人さん/大阪保健医療大学 准教授
※女性セブン2020年11月5・12日号
https://josei7.com/