犬の車酔い、原因と対策|獣医師が教える犬の乗り物酔い7つのサインとは…
犬と出かけるのに車を利用する飼い主は多いが、実は犬も人間と同様に車酔いをすることがある。犬の車酔いの症状は? 原因や対策とは…。愛犬を車に乗せるならぜひ知っておくべき乗り物酔いについて獣医師が解説する。
犬も車酔いをするの? 原因は?
10月から「GoTOトラベル」に東京発着の旅行も追加された。キャンペーンを利用して、愛犬と旅行や、遠出を計画している方も多いと思うが、気を付けたいのが犬の車酔いだ。
「車酔いをする犬は、結構多いんですよ。愛犬を車に乗せるには、飼い主が車酔いの原因や症状や、乗り物酔いのサインを理解しておくこと。そして犬が車酔いしないように出発前から段取りしておくことが大切です」
こう話すのは、目黒アニマルメディカルセンター/MAMeC顧問の獣医師・佐藤貴紀さんだ。
佐藤さんによると犬の車酔いの原因は、以下のようなものがある。
犬が車酔いする原因とは
犬が車酔いを引き起こす原因とは何なのか?「犬も人と同様に車の揺れで三半規管を乱れて乗り物酔いをします。
ほかにも、食事時間、車内温度、当日の体調、車に慣れているかどうかなど、複数の要因が重なることで、犬は車酔いをします」(佐藤さん、以下同)
犬の車酔い、代表的な4つの症状
佐藤さんによると、主に以下の4つが考えられるという。
1.三半規管の乱れ
耳の奥にある平衡感覚をつかさどる三半規管が、車による揺れにより正常に働かなくなり、平衡感覚が乱れてしまったため。
2.自律神経の乱れ
窓から見える景色がどんどん変わる見慣れない景色に脳が混乱し、自律神経が乱れてしまったため。
3.車内のにおい
ガソリンや食べ物、芳香剤など、人間は気にならないにおいも、犬にとってはつらい場合も。車内のにおいが合わず、症状を助長してしまうこともある。
4.過去のトラウマ
過去に車酔いを経験した、車で苦手な場所に連れていかれたなど、過去のトラウマが引き金となる精神的なストレスによるもの。
「人間の場合も、乗り物しやすい人としにくい人がいるように、犬も個体差があるので、原因は何かを探り、その子にあった方法で予防してあげましょう」
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乗り物酔いの症状|犬も吐くの?
上記のような原因から犬も車酔いをする。乗り物酔いしているときの具体的な症状は以下の通り。
1.頻繁にあくびをする
2.そわそわして落ち着かない
3.口をクチャクチャさせて、何かを飲み込んでいるような様子
4.口を開けてハーハーと呼吸が荒い
5.ヨダレを垂らす
6.嘔吐をする
7.水を頻繁に飲みたがる
などがある。
犬の車酔いを防ぐ対策チェックリスト
旅の道中で体調が悪くなってしまっては、愛犬もツライし、飼い主も心配だ。では、車酔いしないためにはどうすればいいのか。前日までにすること・当日・ドライブ中と、時系列に沿って、犬の車酔い対策のポイントを解説する。
STEP1:前日までに車に慣れさせる
□日頃から犬を車に慣らせておく
□“車に乗る=楽しい場所に行く”というプラスのイメージ作り
愛犬とのお出かけを計画している方は、日頃から愛犬を車に乗せて、車に慣らせておこう。
「その際、最初は15分、次は30分など、愛犬の様子を見ながら、少しずつ時間を伸ばしていきます。
さらに、ドライブ後は公園で一緒に遊ぶなど、車に乗るといい事があるとプラスのイメージを作ってあげることも大切です」
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STEP2:当日~出発前は軽い運動を
□食事は出発する2~3時間前に済ませる
□出発前に軽い運動をする
□車に乗せる前に排泄をさせる
空腹や満腹では嘔吐をしやすくなる。出かける当日は、出発の時間から逆算して2~3時間前には食事を済ませた方がよい。
「排せつを済ませ、いつもより少し短めの散歩をさせるなどして体を動かしておくと、ドライブ中は寝て過ごせることもあり、車酔いの予防にもなります」
STEP3:ドライブ中はこまめに休憩を
□2時間に1回を目安に休憩をとる
□クレート(犬を運ぶケースのようなもの)に入れるなどして犬の体を固定する
犬も水を飲んだり、排泄はしたくなるので、2時間を目安にトイレ休憩をとること。休憩の際は、窓を開けて車内の空気を入れ替えるのも忘れないようにしよう。
「人間以上に、犬は車の揺れを大きく感じています。クレートに入れたり、ペットセーフティハーネス(ペット用のシートベルトのようなもの)などで、体を固定してあげたりすると、体が揺れにくくなって乗り物酔いの予防にも有効です」
なお、犬を抱っこしながらの運転は、道路交通法違反で取り締まりの対象となっている。なにより危険なので絶対にしてはいけない。
犬が車酔いしてしまったときの対処法
もしも犬が車酔いをしてしまった場合は、以下のような対処を。
車酔いの症状や、愛犬の様子がおかしいと思ったら、まずは安全な場所に車を停車させて車内の換気をする。
もし散歩できそうなら、気分転換を兼ねて15分程度でも歩かせてあげるのもおすすめだ。
また、愛犬が過去に車酔いした経験がある、酔うかもしれないので心配だ…という場合は、動物病院で酔い止め薬を処方してもらうのも手だ。
動物病院の方針にもよるが、症状がなくても「車に乗るので酔い止め薬がほしい」と相談すれば、処方してもらえることもある。心配な場合は、一度かかりつけの動物病院に相談してみよう。
犬を車に乗せるときは車酔いについて飼い主がよく理解したうえで、愛犬の様子を見ながら楽しいドライブを心がけよう。
教えてくれた人/獣医師・佐藤貴紀さん
麻布大学獣医学部卒業後、勤務医を経て独立し白金高輪動物病院を設立。院長として勤務後、JVCC二次動物医療センター目黒病院センター長を務める。現在、目黒アニマルメディカルセンター顧問(https://mamec.wolves-tokyo.com/)。専門は「循環器」。全国に100人しかいない「獣医循環器学会認定医」。「SuperDoctors 〜名医のいる相談室〜」(https://www.youtube.com/channel/UCUxW…)にて配信中。
取材・文/鳥居優美