健康

新たな段階基準を設定「ロコモティブシンドローム」とは?|あなたのロコモ度をチェック!

 10月8日は「骨と関節の日」。ホネの「ホ」を分解すると十と八になることから、「骨と関節を中心とした『運動器』の大切さを考える日にしてほしい」と定められた記念日だ。2020年の「骨と関節の日」を前に、日本整形外科学会はロコモティブシンドロームの段階を判定する基準として「ロコモ度3」を追加。自分で簡単にできる「ロコモ度テスト」を活用して自分の体の衰えに気づき、要介護状態にならないように対策する指標にしてほしいという。

ロコモティブシンドロームとは?

 ロコモティブシンドローム(通称ロコモ)とは、骨や関節のほか、筋肉や軟骨などを含めた「運動器」の障害により、立つ・歩く・座るなどの移動機能に支障をきたした状態のことだ。

運動器トラブルは要支援・要介護になる原因に

 日本整形外科学会は、40歳以上の日本人のうちロコモに当てはまる人は約4590万人と推計。実際に関節疾患や骨折・転倒といった運動器トラブルは、要支援や要介護状態になる原因の多くを占めている。要支援や要介護状態にならないためにも、早いうちにロコモに気づき、克服することが重要だ。

やってみよう! ロコモ度テスト

 自分がロコモかどうかを簡単に判定できるのが「ロコモ度テスト」だ。ロコモ度テストには、「立ち上がりテスト」「2ステップテスト」「ロコモ25」の3つの評価法がある。

【立ち上がりテスト】(下肢筋力を調べる)

●両脚の場合

 高さ40cmの台に座る。足幅は肩幅と同じくらいに広げ、床に対して脛(すね)が70度になるようにして、両腕を組む(基本姿勢)。その状態から反動をつけずに立ち上がり、3秒間キープ。40cmの台から立ち上がれたら台の高さを10cmずつ低くする。10cmの台から立ち上がれたら片脚のテストへ。

●片脚の場合

 基本姿勢に戻り、左右どちらかの脚を上げて膝を軽く曲げる。同じように立ち上がり、3秒キープ。立ち上がれたら、台の高さを10cmずつ低くする。

 難易度は、両脚40cm<両脚30cm<両脚20cm<両脚10cm<片脚40cm<片脚30cm<片脚20cm<片脚10cm<。両脚または片脚で立ち上がれた一番低い台がテスト結果。

【2ステップテスト】(歩幅を調べる)

(1)スタートラインに立ち、両足のつま先を合わせる。
(2)できる限り大股で2歩歩き、両足を揃える。バランスを崩したらやり直し。
(3)2歩分の歩幅を測る。2回行い、よかったほうの記録を採用。

 結果は、「2歩分の歩幅(cm)÷身長(cm)」で計算する。

【ロコモ25】

「背中・腰・お尻のどこかに痛みがありますか?」「家の中を歩くのはどの程度困難ですか?」など、体の状態や生活状況についての25の質問に答えることでロコモ度を測定する。ロコモ25はオンラインでチェックできる。

ロコモ25 https://locomo-joa.jp/check/test/locomo25.html

結果発表! あなたのロコモ度は?

 3つのテストの結果が下表のどこに当てはまるかを確認。もっとも進行している段階が、自分のロコモ度を表している(どこにも当てはまらない人はロコモではない)。

●ロコモ度1=移動機能の低下が始まっている。

・立ち上がりテスト:どちらかの一方の脚で40cmの台から立ち上がれないが、両足で20cmの台から立ち上がれる。
・2ステップテスト:1.1以上1.3未満
・ロコモ25:7点以上16点未満

●ロコモ度2:移動機能の低下が進行している。

・立ち上がりテスト:両脚で20cmの台から立ち上がれないが、30cmの台から立ち上がれる。
・2ステップテスト:0.9以上1.1未満
・ロコモ25:16点以上24点未満

●ロコモ度3=移動機能の低下が進行し、社会参加に支障をきたしている。

・立ち上がりテスト:両脚で30cmの台から上がれない。
・2ステップテスト:0.9未満
・ロコモ25:24点以上

ロコモ度別の対処法

 日本整形外科学会によると、ロコモ度2以上に該当する人は40歳以上の日本人のうち1380万人。ロコモ度3に該当する人は40歳以上の日本人のうち580万人で、全体の10.3%と推定される(下グラフ参照)。ロコモ度3の人は60代から現れ始め、年齢とともに増加する。

 以下を参照して、ロコモ対策を行って欲しい。

・ロコモ度1

 筋力やバランス力が落ちてきているので、運動を習慣づけ、充分なたんぱく質とカルシウムを含むバランスのよい食事を意識する。

・ロコモ度2

 自立した生活ができなくなるリスクが高い。体に痛みがあれば運動器疾患の可能性があるので、整形外科専門医の受診を。

・新たに設置されたロコモ度3

 自立した生活ができなくなるリスクが非常に高い。運動器疾患の治療が必要になっている可能性があるので、整形外科専門医の診療を。

 

手術によってロコモ度が改善するケースも

 ロコモが進行していても、手術によって改善できることがある。

 日本整形外科学会が腰部脊柱管狭窄症200例を分析したところ、手術前の状態が「ロコモ25」でロコモ度2と判定される人が96.5%だった。その人たちが手術を受けたところ、多くの患者で改善が見られ、1年後には「ロコモ25」の点数が24点以下になった(下グラフ参照)。

 股関節のトラブルがあるケースでも、人工股関節にする手術(人工股関節置換術)を受けたことで、術後3ヶ月程度で「ロコモ25」の点数が24点以下になるケースが多かった。これらのデータから、手術によって体の状態や生活状況が改善したことがわかる。

 日本整形外科学会理事長の松本守雄さんはこう話す。

「『ロコモ度テスト』の結果は、自分は運動や食事を改善したほうがよいか、あるいは整形外科を受診するべきかなどを考える目安になります。今はロコモでない人は、将来も自立した生活を続けるために、運動器の健康に気を配っていただきたいです」 

取材・文/市原淳子

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