健康

高齢者の高血圧対策に「1日1個のキウイ」がいい理由とは?

 生活習慣病の中で、日本でもっとも患者数が多いとされるのが「高血圧」。70歳以上になると「血圧を下げる薬」をのんでいる人は半数以上にも上る(※1)。

 そんな高血圧への対策として注目したいのが「キウイフルーツ」だ。最近はオーストラリアなどからの輸入品のほか、国産も増えてますます身近になっている。栄養たっぷりなのはもちろん、半分に切るだけで食べられるなど、手軽でうれしいメリットがいっぱいのこのフルーツの魅力を栄養の専門家に聞いた。

高血圧は日本の国民病?

 日本の高血圧性疾患の患者数は約993万7000人。そのうち男性は約431万3000人、女性は564万3000人に上る(※2)。

 高血圧の薬をのむ人の割合は、男性では40代、女性では50代から年齢を重ねるごとに増え、70代以上になると半数以上の人が薬のお世話になっている(※1。グラフ参照)。

 高血圧は自覚症状がないため、自分では気づきにくい。しかし高血圧が進むと動脈硬化が起こり、心臓では狭心症や心筋梗塞、心不全など、脳では脳梗塞や脳出血などの脳卒中や認知症が起きやすくなる(※3)。

日本人の食塩摂取量は世界の目標量の2倍!

「血圧コントロールの基本は、なんといっても減塩です」と、管理栄養士の足立香代子さんは話す。

「塩にはナトリウムが含まれています。塩を摂りすぎると血液中のナトリウムが濃くなり、それを薄めるために多くの水分が必要になります。そうなると血液の量が増えて血管にかかる圧力が高くなり、高血圧となるのです」(足立さん。以下「」内同じ)

 食塩摂取の目標量について、WHO(世界保健機関)は男女ともに5.0g以下、厚生労働省は女性6.5g、男性7.5gとしている(※4)。しかし実際には、日本人の食塩摂取量の平均は10.1g(※5)と、どちらの基準も大きく上回っている。

高血圧対策に毎日1個のキウイ習慣

 そこで注目したいのがミネラルの一種「カリウム」だ。

「カリウムには過剰なナトリウムを体から排出する働きがあるため、高血圧対策に有効な栄養素なのです」

 足立さんがカリウム摂取のためにおすすめの食材としてあげるのが、キウイフルーツ。キウイには大サイズ1個(可食部約100g)あたり、290〜300mgものカリウムが含まれていて(※6)、果物の中ではトップクラス。

 ちなみに、カリウムの摂取目標量は1日あたり、15〜74歳の男性で3000mg、75歳以上の男性で2800mg、15〜74歳の女性で2600mg、75歳以上の女性で2400mg。血圧が高めの人は約3500㎎以上が望ましい(※7)。

「カリウムは水に溶けやすいため、野菜や果物を生で食べるとカリウムを逃さず摂取できます。キウイフルーツは半分に切るだけで手軽に食べられるので、カリウムを効率よく摂れるのがいいですね」

 キウイにはカリウムのほかにも、抗酸化力の強いビタミンCや、腸内環境を整えるのに有効な食物繊維などの栄養素が豊富に含まれている。

簡単に減塩できる4つの工夫

 足立さんに、無理なく減塩できる方法をアドバイスしてもらった。

(1)しょうゆさしをスプレー式に

 傾けて注ぐタイプのしょうゆさしを使うと、しょうゆをかけすぎてしまうことがある。スプレー式に替えると1回の使用量を減らすことができる。

(2)ソルトミルの中身を換える

 ソルトミルは、中身の半分程度をハーブやスパイスにする。塩の使用量を減らせるだけでなく、スパイスやハーブの香りで味の薄さを補える。

(3)煮物の味付けは最後に

 具材を出汁だけで煮込み、しょうゆや塩は最後に加える。舌は表面の味を感じやすいので、具材の中まで味を染み込ませず、表面に味をつけるだけで十分おいしく感じられる。肉じゃがのように炒め煮する煮物の場合は、具材を炒めた後に少し冷ましてから味付けすると、塩分が染み込みにくくなる。

(4)野菜と果物を積極的に摂る

 カリウムは野菜や果物に豊富に含まれているため。

「毎日の食事の中で、野菜は1日350g、果物は1日200g摂ることが目標とされています。キウイなら1日1個食べることで1日分の果物の半分をクリアできますし、カリウムなどさまざまな栄養をいっぺんに補給できます。ほかの果物や野菜を組み合わせてカリウムを摂り、食事を楽しみながら高血圧対策ができるとよいですね」

※1 厚生労働省「平成30年国民健康・栄養調査」より「薬の服用状況」。
※2 厚生労働省「平成29(2017)年患者調査」より、「主な傷病の総患者数(平成29年10月)」より。なお、総患者数は表章単位ごとの平均診療間隔を用いて算出するため、男性と女性の合計が総数に合わない場合がある。
※3 厚生労働省の情報サイト「e-ヘルスネット」より。
※4 厚生労働省「日本人の栄養摂取基準(2020年版)」より。
※5 厚生労働省「平成30年 国民健康・栄養調査」より。
※6 「日本食品成分表2015年版(七訂)追補2018年」より。カリウムの含有量は、緑色のキウイフルーツの可食部100gあたり290mg、黄色のキウイフルーツの可食部100gあたり300mgとなっている。
※7 「高血圧治療ガイドライン 2019」;2012年のWHOのガイドライン51では、血圧低下及び脳卒中リスク低下のためには、1日にカリウム摂取量90 mmol(3510 mg)以上の摂取が推奨されている。

教えてくれた人

足立香代子さん/管理栄養士。一般社団法人臨床栄養実践協会理事長、せんぽ東京高輪病院名誉栄養管理室長。1968年中京短期大学家政科食物栄養専攻卒。1985年より、せんぽ東京高輪病院(現・東京高輪病院)に勤務。長年の臨床経験に基づき、患者の個性、症状にあわせた栄養指導に取り組む。2014年より現職。日本臨床栄養学会理事。

取材・文/市原淳子

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