最新!平均寿命1位は香港、日本は?長寿国に学ぶ長生きの秘訣【まとめ】
2020年7月に公表された厚生労働省「令和元年簡易生命表の概況」によると、日本人の平均余命は過去最高を更新。また、世界の平均寿命は香港が1位で、女性はなんと88.13年。いったい日本は何位だったのか…。
最新のデータから、世界の平均寿命のトップ5とワースト5をまとめた。あわせて、長寿国・香港の健康長寿の秘訣を、これまで掲載した記事からピックアップ。9月21日、敬老の日にちなみ”長寿”についての話題をまとめてレポートする。
最新版 日本人の平均余命は?
男性の平均寿命…81.41年
女性の平均寿命…87.45年
厚生労働省が公表したデータ※によると、男性の平均余命は81.41年、女性は87.45 年。男女の差は6.03歳となった。男女とも過去最高を更新している。
※厚生労働省「令和元年簡易生命表」「主な年齢の平均余命」より。https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life19/dl/life19-02.pdf
なお、同データの「平均寿命の年次推移」によると平均余命が80歳を超えたのは、女性が昭和60年、男性は平成27年だった。また、昭和22年にさかのぼると、男性50.06年、女性53.96年。過去約70年で50歳から80歳へ、平均余命は30年も伸びているということになる。人生100年というのもそう遠くない未来かも…。
世界の平均寿命1位は香港、日本は?
同データによると、世界の平均寿命の1位は香港で、過去5年連続首位を記録している。男女とも香港がトップで、女性は88.13年、男性は82.34年。
ちなみに、日本は女性が2位で87.45年、男性は3位で81.41年となっている。
※厚生労働省「令和元年簡易生命表」「平均寿命の国際比較」より。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life19/dl/life19-04.pdf
※データは、国により作成基礎期間や作成方法が異なるため、厳密ではないが、厚労省が現在入手している資料を用いて比較。
【女性】
1位…香港 88.13年
2位…日 本 87.45年
3位…スペイン 86.22年
4位…韓国 85.7年
5位…シンガポール 85.7年
【男性】
1位…香港 82.34年
2位…スイス 81.7年
3位…日本 81.41年
4位…シンガポール 81.4年
5位…スウェーデン 81.34年
世界の平均寿命ワースト5は?
ちなみに、世界の平均寿命は50か国中、ワースト1は、男女とも南アフリカで女性は63.1年、男性が59.1年となっている。
【女性】
1位…南アフリカ 63.1年
2位…パキスタン 67.62年
3位…インド 70.4年
4位…バングラデシュ 73.5年
5位…エジプト 75.1年
【男性】
1位…南アフリカ 59.1年
2位…パキスタン 63.55年
3位…ウクライナ 67.02年
4位…ロシア 67.75年
5位…インド 67.8年
上記のように、平均寿命は、50か国のうち、30か国以上の平均寿命が80歳を超えている一方で、60代という国もあるのが現状だ。
そこで、平均寿命1位を誇る香港の長寿の秘訣を、過去に取材した記事の中からピックアップしてお伝えする。
香港・長寿の秘密【1】食生活…朝粥と常温のビール
「日本人は朝から炊いたご飯を食べてお腹は大丈夫?」
香港の朝食は家ではなく、飲食店や屋台で取ることが多い。日本では米やパンが主食だが、当地では「お粥」を食べるのが一般的だ。
朝の喧騒のなか、香港の繁華街・旺角の飲食店でお粥を食べていた楊禧さん (85才・男性)が言う。
「毎朝、お粥を食べているよ。朝は内臓がまだ寝ぼけているから、胃腸に優しいお粥を食べるよう子供の頃に親から教わった。日本人は朝から炊いたお米を食べるようだけど、お腹は大丈夫なの?」
女性セブン記者に逆質問する楊さん。「日本の常識は香港の非常識」のようだ。
医師も太鼓判!香港の特製スープ
お昼時の飲食店で気づくのは、最初に「スープ」を頼む人が多いことだ。旺角のレストランで熱々のスープを頬張る孔就勝さん(83才・女性)が言う。「食事の前にはいつもスープを飲みます。飲食店には季節に応じて『例湯(ライトン)』という、“本日のスープ”などがある。『今日はジメジメしているから瓜のスープにしよう』などと、その日の気候や体調に合わせてスープを選びます。お気に入りの鶏スープを飲んだら、内臓がじんわりと休まる気がするよ」
高齢者医療に詳しい香港の余達明医師は、香港の特製スープに太鼓判を押す。
「香港でよく飲まれる薬膳スープの『老火湯(ラオフオタン)』は、数時間煮込んで作るので食材から充分なミネラル分が溶け出します。日本や欧米のスープは煮込み時間が短いので、そこまでの栄養素は出ません」
ビールもコーラも常温で飲むのが普通
亜熱帯に属する香港には穏やかな四季があり、今の時期は日本と同じく30℃を超える蒸し暑い日が続く。
街角で水筒を片手に水分補給していた林大偉さん(72才・男性)に「何を飲んでいるのか」と尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「白湯ですよ」
日本では夏場にキンキンに冷えた水を一気飲みする人が多いが、香港では夏でも「常温」もしくは「白湯」が一般的だと林さんが続ける。
「夏場はできるだけ体を冷やさないよう注意しています。氷の入った水を飲むなんて考えられません(苦笑)。香港ではビールやコーラも常温で飲むのが普通です」
確かに夏場なのに漢方の薬草を煎じた温かいお茶の「涼茶(リヤンチヤ)」が人気で、街のいたるところに涼茶スタンドがある。
日本人にあまりなじみのない「お粥」「スープ」「白湯」に共通するのは、「熱」だ。香港在住で著書に『世界一の養生ごはん』(小学館)がある医学博士・楊さちこさんが解説する。
「中国の医学では、冷えは万病のもと。医食同源が根づいた香港の人は冷たいものを避けて、体をなるべく温めるものや、消化がよくて栄養補給しやすいものを好みます。
とくに高齢者は漢方医が顔負けするほど食材の効能に詳しく、体調や気候に合わせて食材を選びます」
→オリジナル記事を読む:長寿世界一は香港!不調を食べ物で整える「医食同源」の教え
香港・長寿の秘密【2】ライフスタイル…太極拳と麻雀
ヨボヨボになっても家の中にこもらず、自分の足で歩く
大音量で古典音楽が流れるなか、ゆったりとした動作で体の重心を左右に移動しながら、手足を大きく広げてポーズを決める。
早朝7時、湾仔(ワンチヤイ)にある公園で20人ほどのお年寄りが太極拳に熱中する。香港では見慣れた光景だ。
参加者の劉景勝さん(69才・男性)に話を聞いた。
「毎朝6時に起きてこの公園に来ます。子供が3人、孫が5人、ひ孫が6人いるけど私はまだまだ元気。太極拳が終わったら、仲間と一緒に飲茶をしに行くのが楽しみ。長寿の秘訣? 毎日笑顔でいることかな(笑い)」
さらに公園を歩くと、若者に交じってバスケットボールに興じるおじいちゃんを見つけた。「おいくつですか」と声をかけると「60才だ」と笑いながら答えたのは李唐開さん。
「健康のためでもあるけど、バスケをしていると気持ちが晴れ晴れする。10代から70代まで年齢に関係なく誰でも参加できる。毎週日曜日は朝8時から試合があるんだよ」
米プロバスケットボールリーグ・NBAで活躍した中国人選手・姚明(36才)の影響で、香港でもバスケは大人気。16才の若者に交じり90才がプレーするのも珍しくないという。
中国に返還後、公園に鉄棒など高齢者向けの体操器具が設置されたこともシニアのエクササイズを促進する。
麻雀、将棋などのボードゲームは脳に刺激を与え、活性化させる
大陸らしさを感じるといえば、公園での麻雀、将棋などのボードゲームだ。猛暑にもかかわらず、公園のあちこちで高齢者がボードを取り囲んでは歓声を上げる。高齢者医療に詳しい香港の余達明医師は語る。
「ボードゲームは脳を刺激するほか、指先を使うので認知症予防にもなる。勝負事なので、ドキドキすることも脳を活性化させます」(余先生)
日本では最近、禁煙に関する法律が話題だが、香港はその先を行く。香港の喫煙率は日本のおよそ半分の10.5%で、建物内は全面禁煙になる。たばこの値段が一箱1000円程度するため、たばこをやめた香港人は多い。
健康長寿のポイント?高齢者の外出
街を歩いて改めて驚くのは、夏の暑さにもかかわらず大勢の高齢者を見かけることだ。
香港で医療コンサルタントを営む堀眞さんは、健康長寿のポイントは「高齢者の外出」だと指摘する。
「昔からの習慣もあり、香港のお年寄りは家の中にこもるより、とにかく外出しようとします。ヨボヨボになっても杖をついて外出し、よちよち歩きでいいから自分の足で歩こうとするんです」
実際、街角では、杖をついたお年寄りが家族やメイドに付き添われながら、自分の足でゆっくり歩く姿をよく見かける。街の人々はそんなシニアを温かく見つめている。
多くの高齢者が外歩きを楽しみたくなる環境づくりも香港の魅力の1つだ。
→オリジナル記事を読む:長寿世界一の香港 秘訣は、高齢者の「外出好き」「多忙」か
香港・長寿の秘密【3】高度な医療と格安の治療費
香港の公立病院は医療費が格段に安い
「昔は医者の評判もよくなかったから、すぐに病院に行かず、ちょっとした不調はなんとか自分で整えようとしていた。だけどここ数年は医者の腕もいいから病院に行くよ」
香港のシニアと話していると、このような声がよく聞かれる。
近年の香港の健康長寿を支える1つの要因は「医療」である。香港の医療は公立病院と私立病院の二本柱が支える。私立病院は患者が快適に治療できるようサービスが充実しているが、治療費や入院費は高額になる。一方、公立病院は医療費が格段に安い。香港で医療コンサルタントを営む堀眞さんは、こう語る。
「香港在住者であることを証明する政府発行のIDさえあれば、1日入院しても治療費は100香港ドル(約1500円)という驚きの医療費です。どんな先端医療を受ける場合もこの額は変わらず、以前には生体肝移植の費用が3万円というケースもありました」(堀さん)
高齢者には1年で1000香港ドル(約1万5000円)分の医療チケットを支給するサービスもあり、シニアには至れり尽くせりだ。
香港の医師は臨床経験が豊富で、高水準
公立病院でも医療レベルは高水準だと堀さんが続ける。
「公立病院は待ち時間こそ長いものの、私立病院と比べて遜色のない医療レベルになっています。香港は患者1人に対する医師の数が少ないので臨床経験が豊富になります。
また、医療が標準化されていて、最も合理的な治療を医師が判断するため、診療の予約日は病院側が一方的に決めます。
アメリカの基準に従って新薬を承認できるので、日本では許可が下りていない薬による治療も可能です」
香港の面積の小ささは医療面でもアドバンテージとなる。
「香港ではどんな郊外でも車を30分も走らせれば大病院に到着します。狭く交通網が発達したメリットは大きい」(堀さん)
→オリジナル記事を読む:香港を世界一の長寿国にした高い医療レベルと格安治療費事情
平均寿命トップを独走する香港の食生活やライフスタイルを取り入れて、健康長寿を目指そう。
構成/介護ポストセブン編集部
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