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健康

老眼鏡は早めに使い始めるのが◎目の不調、老化を予防する老眼鏡の選び方|最低2本持ち、シーン別に使い分けを

 目を細めて腕を伸ばして、新聞やスマホを遠くに離す…老眼鏡デビューの兆しを感じたら、知っておきたいことがある。正しい使い方を身につけないと、思わぬ不調が起こるかもしれないのだ。お値段? デザイン? “目のつけどころ”はそこじゃない。

目のピントが合いづらくなったら、老眼のスタート

 最近、新聞や雑誌の文字が見づらくなった。手元から遠ざけて目を凝らすと、ようやく文字を読み取れる。これって、まさか──

「日常的に読み書きをしていた距離や、自分が楽な姿勢で作業できる距離で、目のピントが合いづらくなったら、老眼のスタートです。一般に40代の前半から老眼は始まり、加齢とともに進行します」と指摘するのは、メガネスーパー営業本部でジェネラルマネージャーを務める“老眼のプロ”こと吉野正夫さんだ。

●老眼のメカニズムって?

 そもそも老眼は、どんなメカニズムで起きるのか。近著に『患者が絶えないカリスマ眼科医がやっている 失明しない習慣』(小学館)がある、二本松眼科病院の眼科専門医で副院長の平松類さんが解説する。

「老眼は、カメラのレンズのような役割をする『水晶体』が加齢によって弾力を失ったり、水晶体を動かす『毛様体筋』という筋肉が衰えたりすることで起こる。2つのうちどちらが衰えても、目のピントがうまく合わなくなります」

●増えるスマホ老眼

 早ければ30代後半から老眼になるというが、最近はスマートフォンやタブレットなどの普及による“スマホ老眼”が増え、さらに“老眼の若年化”が進んでいるという。

「人間は通常1分間に30回ほどまばたきをしていますが、スマホやタブレットを使っているときは、7~8回程度しかしない。さらに、本を読むときよりも近い距離でものを見るので、毛様体筋にかなりの負担がかかり、老眼を進行させるのです」(平松さん)

 進行すると、時間帯によっても、ものが見えにくくなる。

「仕事などで目を酷使して、夕方になると近くのものや暗いところのものが見えにくくなります。老眼が進むと、くっきりとピントが合う『近点距離』が年に約5㎝ずつ遠くなり、近くのものがどんどん見えにくくなっていく。さらに進むと、それまでの距離では目を凝らしても読み書きすることが難しくなります」(吉野さん)

 これは、「Quality Of Life(QOL・生活の質)」を大きく左右する。また、視力の低下によって、認知症やうつ病のリスクも高まるといわれている。「年寄りくさいから」と、見えにくいのをがまんしていると、健康に支障をきたしてしまう。使い始めを先延ばしにしてはいけないのだ。

→スマホ老眼の解決法を読む

老眼鏡を使うことで目の疲労や老化、不調を予防

 みさき眼科クリニック院長の石岡みさきさんが解説する。

「老眼は加齢とともに進み、70才くらいで落ち着くまで、進行を止めることはできません。ただし、老眼鏡を使うことで生活の質を高めれば、目の疲労や老化による不調を予防することにつながります。“老眼が始まった”と思ったら、誰でも、なるべく早く老眼鏡をかけた方がいい」

 老眼鏡が“おばあちゃん、おじいちゃんの眼鏡”だったのは昔の話。いまは若々しく生きるためにも老眼鏡が必要なのだ。下のチェックシートを使って、自分の老眼が進行しているかどうか確かめてみてほしい。

老眼鏡の種類

 では、老眼鏡にはどのような種類があるのか。吉野さんは、「明視域」(自分の目に負担なく見える距離)によって、以下の4種類のレンズに分けられるという。

【1】近用専用:明視域が30~50㎝
【2】近近両用:明視域が30㎝~1mほど
【3】中近両用:明視域が30㎝~2mほど
【4】遠近両用:明視域が30㎝~2m以上

「『近用』は、近くを見るとき専用の老眼鏡で、本や新聞を読むのに適しています。『近近』はデスクワーク向き。手元の作業をしながら、机の周りにある資料などを手に取るときもよく見えます。『中近』は、自宅でソファに座ってテレビを見たり、事務などで接客をするときに使い勝手がいいといえます。『遠近』は、最も奥行きがある老眼鏡。車の運転や旅行をするときも安心です」(吉野さん)

 さらに、1枚のレンズで複数の機能を持つものもある。

【1】の近用専用は、1枚のレンズに焦点が1つしかない「単焦点レンズ」。【2】~【4】は、多くが1枚のレンズの中に複数の焦点が連続的に配置された「累進多焦点レンズ」と呼ばれるものだ。

既製品の老眼鏡には要注意!

 老眼鏡は、正規の眼鏡店のほか、100円ショップや書店などでも販売されている。しかし吉野さんは「既製品には要注意」と指摘する。

「既製品の老眼鏡は、左右のレンズの度数が同じ。しかし、左右の度数や目の形が完全に同じ人は存在しません。既製品では、片目に度数が合ったとしても、もう片方は合わない可能性が高いのです」

 片方でも度が合わない老眼鏡を使い続けると、目が疲れたり見えにくくなったりするほか、血行不良を起こし、肩こりや頭痛を招いたり、一時的に目のピントが合わなくなったりするなどの視力障害の原因になる恐れもある。

「正規の眼鏡店で購入する老眼鏡は、利用者の目の状態に合わせ、1㎜単位で調整する“オーダーメード”。既製品のような視力障害や目の疲れが起こることは少ない」(吉野さん)

●他の病気の可能性も…まず眼科の受診を

 石岡さんも指摘する。

「近くのものが見えにくくなったと感じたら老眼を疑うべきですが、40代以降になると、緑内障などの目の病気で見えにくくなっている可能性もある。そのため、まずは眼科で診察を受けてください」

 眼鏡づくりは技術が必要なので、実は初心者の眼科医よりも、ベテランの眼鏡店の方が上手だという。

「“眼科でもらった処方箋を持って眼鏡店に行く”のがいちばん安全です。100円ショップの老眼鏡が偶然目に合う人もいますが、レンズの質がよくないものもあり、フレームもゆがみやすいのでなるべく避けてほしい」(石岡さん)

 面倒がって既製品で済ませようとしたり、安価だからといって飛びついてはならないのだ。

4種類の老眼鏡の特徴と向いている人の解説表

老眼鏡は最低“2本持ち”を

 では、どのように老眼鏡を選べばいいのか。まず心がけたいのは、利用シーンに応じた使い分けだ。室内で本を読むだけなら「近用」でOKだが、外出する場合は、「中近」か「遠近」が望ましい。

「車を運転するときは、遠くの標識から計器やカーナビなど近くのものまで見える『遠近』が最適です。夫が運転するので助手席に座るだけだったり、歩いて外出したりする場合は、遠くを見る必要がなく、『中近』で充分。ただし、自転車でスーパーに行く場合などは、より遠くも見える方が安心できるため『遠近』がおすすめです」(吉野さん・以下同)

 できれば、シーンに合わせて、2種類以上の老眼鏡を組み合わせるのが理想的だ。

「おすすめしたいのは、『遠近』と『中近』の組み合わせです。スポーツや旅行など、遠くを見るときは『遠近』を使い、外食など、メニューを見たり人と会話したりするときは『中近』などと使い分けるのがいい」

 それなら、いちばん遠くまで見える「遠近」1本だけでこと足りるのではないか、と思うかもしれない。しかし、一見万能に思える「遠近」にも“苦手分野”はある。

「焦点が2つある遠近レンズは、遠くを見るときはレンズの上の方、近くを見るときは下の方を使います。そのため、長時間の読書やパソコン作業をするときなどは、正しい位置で見続けるのが難しく、目が疲れるのです」(石岡さん・以下同)

 なかでも累進多焦点レンズは、真正面から見なければぼやけてしまう。たとえば、本を読みながら横目でちらっとテレビを見ようとしてもよく見えないので、顔ごとテレビの方に向けなければならないと、石岡さんは言う。

「階段を下りるときも、顔を真下に向けなければならず、遠近の老眼鏡をかけたままでは危険な場合もあります」

 適材適所で用途に合う眼鏡を選ばなければ、重大事故につながってしまいかねない。

“色眼鏡”で見れば夜道も安心

 老眼鏡を選ぶ際は、周囲の明るさもカギとなる。

「明るさによっても見え方は大きく左右されます。眼鏡店に行く際は、自宅の電球を調べて、自分の生活環境がどれくらいの明るさなのか伝えるといい。また、パソコン作業が多い人などは、目からパソコンまでの距離などをあらかじめ計測しておいた方がいい」(吉野さん・以下同)

 よく、水色や紫色のついた老眼鏡をかけている人がいるが、単なるおしゃれではない。

「年齢を重ねると目の“レンズ”が黄色っぽくなります。それと同時に、白い光が黄色やクリーム色に見えるようになる。すると、夜間の車のヘッドライトが見えにくくなるなどの危険が生じます。ブルー系のレンズが入った老眼鏡を使うと色のコンストラストがはっきりと見えやすくなるのです」

 日常的にコンタクトレンズを着用している場合も注意が必要だ。特に使い捨てのコンタクトレンズは眼鏡と違って、左右同じ度数で処方されることが多い。そのため、老眼鏡の度数を調整する必要があるのだ。

「ソフトコンタクトレンズは乱視の矯正ができない場合が多いため、老眼鏡でカバーできるように併用した方がいいでしょう」

 眼鏡店で店員に「まずお好きなフレームを選んで」と言われたら要注意だ。

「遠近のレンズは、ある程度の縦幅が必要。なので、フレームにもある程度の大きさが必要です。“おしゃれだから”と縦幅の細いフレームを買うと、のちにトラブルになりがちです」(石岡さん)

 見た目を最優先にしてはならないのだ。また、顔より横幅の狭い老眼鏡はずり落ちやすくなるため、きちんと自分の顔幅に合わせたものを選ぶことが大切だ。

「さらに、姿勢、頭の傾きのクセ、目の傾きのクセまで計測したうえでフレームを選ばないと、老眼鏡をかけたときにゆがんで見えるようになる。結果、慢性的な疲れ目の原因になります」(吉野さん)

 最近、よく見かける「鼻パッドなし」のタイプも、あまりおすすめできない。

「鼻パッドのない眼鏡はおしゃれですが、残念ながら西洋人向きのデザイン。日本人は鼻が低いので、鼻パッドがないと眼鏡がずれてしまい、視点が定まりません」(石岡さん)

 老眼鏡の保証期間は、半年~1年。その間なら、何度でも交換できる。トライ&エラーを繰り返して、賢い老眼鏡ライフを送りたい。

教えてくれた人

平松類さん/二本松眼科病院副院長。眼科医。目の健康についてテレビや雑誌で発信。著書に20万部突破の『1日3分見るだけでぐんぐん目がよくなる! ガボール・アイ』(SBクリエイティブ)や『患者が絶えないカリスマ眼科医がやっている 失明しない習慣』(小学館)など多数。

※女性セブン2020年7月16日号
https://josei7.com/

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