【東急田園都市線】注目のグループホーム、サ高住、介護付有料老人ホーム【まとめ】
評判の高い高齢者施設や老人ホームなど、カテゴリーを問わず高齢者向けの住宅全般を幅広くピックアップし、実際に訪問して詳細にレポートしている「注目施設ウォッチング」シリーズ。
渋谷駅から中央林間駅までを結ぶ東急電鉄が運営する田園都市線。全部で27駅あり、渋谷区、世田谷区、川崎市、横浜市、町田市、大和市をつないでいる。沿線は住宅地として開発され、日本の経済発展に歩調を合わせるようにして栄えていった。そして今、沿線の高齢者人口は増加傾向にある。そこで今回は、田園都市線の介護付有料老人ホームを紹介する。
家庭的な暮らしを送れるグループホーム「たのしい家 目黒東が丘」
東急田園都市線「駒沢大学」駅から徒歩9分のところにあるグループホーム「たのしい家 目黒東が丘」。東京都目黒区東が丘の閑静な住宅街に2019年4月にオープンした。隣には保育園があり、園児たちとの交流も行っているという。
グループホームは正式名称を「認知症対応型共同生活介護」といい、認知症の高齢者を対象とした専門的ケアを提供する施設で、少人数で共同生活をするのが特徴だ。グループホームの目的は、認知症の高齢者が住み慣れた地域で生活を続けられるようにすること。そのため、施設と同じ地域に住民票があることが必須だ。自治体によってはその地域の住民票を持ってからの期間に条件があるところもあるので確認が必要だ。
高齢者向けの施設といえば、食事や部屋の掃除などをスタッフが代わりにしてくれるというイメージを持っている人が多いかもしれないが、ここでは共同生活を送りながら、できることは自分で行うのが基本だという。グループホームではその名の通り、高齢者が共同生活を送っている。2階建ての「たのしい家 目黒東が丘」では各階9人ずつのグループで生活。集団生活とはいえ、それぞれにプライバシーが守られた個室があり、落ち着いた環境で暮らすことができる。
こちらでは「できることは見守る」を基本姿勢に、自分らしく生活していくための自立支援を行っているという。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)との違いは、認知症ケアのできる専門性を持った介護スタッフが24時間いることだ。共同生活を送るにあたって気になるのはやはり共用部分。個浴型のお風呂が用意されていて、シャワーチェアもあるので、座位が保てれば問題なく入浴できるそうだ。
洗濯物は汚れ物とそうではないものに分けて、スタッフが丁寧に洗ってくれるので、汚れたままの服を着続けてしまうような心配はないとのこと。
食事作りは共同で行い、掃除なども分担。一人ひとりが役割を持つことを大切にしているという。廊下の掃除は誰、昼食作りは誰と仕事の割り当てのように決まっているのではなく、その時その時の状況に合わせて、スタッフが声をかけ、できる人が役割を担っているそうだ。
「ご自身で食事を作ったということが自信になりますし、◯◯さんが作ってくださったんだよ、というお話をすると、恥ずかしがりながらもうれしそうにされています。役割を持つことは自立支援のためにも大切ですね。今までずっと家で料理をされていた方は、私たちよりも上手なので助けてもらっています」(ホーム長の櫻井彩子さん)
食事作りのため、徒歩5分ほどのところにあるスーパーに散歩を兼ねて買い物に行き、食材を購入するのが日課。その日の体調や気分を最優先に、順番に全員が行けるように記録もつけながら調整しているという。
認知症の症状の特徴として、物を忘れてしまったり、頭で思い描いたことを言葉に出すのが難しい人もいる。そのため、新聞の折込チラシを見てもらいながら、その日に食べたいものを考えてもらうといった工夫もしているのだという。
「今までの生活でしてきたことをそのまま続けることで、認知症の症状が落ち着いてくることもあります。何もしないで過ごすより、できることをしていただいた方が自信にもつながります。安全を優先するために家では家族に危ないからと言われて、包丁や火を使うことを止められていることもありますが、ここではスタッフが様子を見ながらできることはやっていただいています」(櫻井さん)
介護付き有料老人ホームとの違いも要チェック。介護付き有料老人ホームの場合は、要介護度が重い利用者も受け入れているところが多いが、グループホームでは基本的には、医療行為を伴う介護が必要な人は入居が難しい場合がある。こちらは往診医や後方支援病院、協力医療機関などと連携する形で医療体制を整えているそうだ。
→スタッフが「できることは見守る」グループホーム<前編>
→認知症の人が共同で調理や掃除。家庭的な暮らしを送れるグループホーム<後編>
自立から要介護5まで自分らしく生活できるサ高住「グレイプス用賀」
東急田園都市線「用賀」駅から徒歩7分のところにあるサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)「グレイプス用賀」。桜新町駅も近く、スーパーなど日常生活に役立つ店も多い。高い利便性を享受しながら、砧公園や馬事公苑が近くにあるので豊かな緑も楽しめる。
グレイプス用賀は全120室ある比較的大規模なサ高住で、要介護5の状態になっても住み続けることが可能。つまり、医療ニーズがあったとしても生活できる環境が十分整えられており、終の棲家として考えることができるという。
コンシェルジュが全入居者に提供する基本サービス「状況把握及び生活支援」「健康管理」「その他各種手配など」に加えて、ケアフロアとして用意されている2階では「見守りサービス」が提供されるという。この見守りサービスには、食堂やアクティビティへの送迎、服薬支援、安否確認、食事の支援などがあるそうだ。緊急コールにも24時間対応してくれるので、突発的な事態が起こっても安心とのこと。
部屋は、1Rの29.18~39.45平方メートル、1LDKの37.33~46.96平方メートル、2LDKの66.77平方メートルの3種類あり、2人で入居することもできる。夫婦のどちらかにケアが必要な場合など、有力な選択肢になりそうだ。食事は建物内の厨房で調理していて、体の状態に合わせた調整も可能とのこと。また、月に4回程度、季節に合わせた行事食があり、楽しみにしている入居者も多いという。
自由度を高めながら安心した生活ができる空間を目指し、建物は親会社である東京建物のブリリアシリーズの仕様に準拠。引き戸のレールを上につけることによって段差がなくし、つまづきによる転倒を防止するなど細やかな工夫をしているという。
元気なうちからサ高住に移り住み、コンシェルジュの手厚いサービスを受けることによって、結果的に健康寿命を延ばすことを目指しているという。家族が離れて住んでいたり、仕事などで常に自宅に家族がいない高齢者にとって、自分のことを気にかけてくれるコンシェルジュがいることは想像以上にメリットが大きいとのこと。
まだ元気で、自分が介護を受けることが想像できないという人にも、一度見学をしてみることをお勧めしたい。今回紹介した施設に限らず、スタッフや入居者の雰囲気を実際に感じておくと、いざという時に慌てずに判断できそうだ。
サービス付き高齢者向け住宅の”サービス“とは、「安否確認サービス」と「生活相談サービス」のことで、この2つが施設として義務付けられている。つまりこれ以外のサービスはそれぞれのサ高住が独自に行っているもので、一般の賃貸住宅に近い形態のものから、介護付き有料老人ホームに近いものまである。サ高住を探し始めるとそのことに戸惑う人もいるようだが、費用も違うので慎重に納得したうえで選びたい。
→自立から要介護5まで自分らしく生活できるサ高住<前編>
→自立から要介護5まで自分らしく生活できるサ高住<後編>
理学療法士が常勤しリハビリ特化型を目指す介護付有料老人ホーム「フローレンスケアたまプラーザ」
東急田園都市線「宮前平」駅よりバスにて5分、最寄りのバス停から徒歩2分のところにある介護付有料老人ホーム「フローレンスケアたまプラーザ」。急行が止まり、商業施設が充実している「たまプラーザ」駅にも近く、落ち着いた生活環境と利便性を享受できる。
フローレンスケアたまプラーザの最大の特徴は入居者の要望や身体状況に応じて適度な社会生活を維持できるように、フロアごとのユニットに分かれた少人数制のケアを取り入れていることだ。医療依存度の高い人は1階、認知症の人は2階、そして比較的元気な人は3階というように、心身の状態に合わせて各フロアを分けているという。各フロアで食事も風呂も完結しているため、それぞれの状態に合わせた生活が送れるそうだ。職員も各フロアでシフトを作り担当制にしているため、いつも同じ職員からケアを受けることができることも特徴の一つ。
フロアごとにスタッフを配置するだけではなく、各居室の担当介護職員も決まっているそうだ。いつも同じスタッフが介助をしてくれるので、入居者も家族も安心して任せられるという。フローレンスケアたまプラーザでは、2007年の開設当初からユニットケアにこだわり、一人ひとりに目を配ることを意識してきたそうだ。
フローレンスケアたまプラーザは「リハビリ特化型」を目指し、理学療法士を常勤で配置。入居者一人ひとりに個別・集団・生活リハビリを行っていくための計画書を作っているという。「生活全部がリハビリ」との考えのもと、理学療法士と介護職員が入居者の情報を共有しているそうだ。認知症の予防のための脳リハビリや作業レクリエーションもあり、廊下に昔懐かしい「回想写真」を貼り出すといった取り組みも行っている。
生活リハビリを丁寧に行うと職員の負担は増えるため、介護職員の協力が不可欠。理学療法士との連携も試される。これらのような施策を進めるため、フローレンスケアの本部にはリハビリの指導役を置いているという。リハビリの現場を経験した作業療法士の資格を持つ職員が各施設の現場の指導、アドバイスを行い、生活リハビリは適切に実施できる体制を作っているそうだ。
リハビリを円滑に進めるために、職員の能力向上にも力を入れているという。フローレンスケアたまプラーザの職員の56%が介護福祉士の資格を持っており、正社員の比率も76%と高い。フローレンスケアの他の施設では、介護福祉士の割合が8割を超えるところもあるという。パンフレットやホームページに書いてある入居者と職員の比率だけを見て、手厚い介護が提供されているのかを判断するのではなく、介護福祉士や正社員の比率もチェックするようにしたい。
「リハビリ特化型」を目指しているフローレンスケアたまプラーザ。理学療法士と介護職員が連携している様子をその目で確かめてみてはいかがだろうか。
→理学療法士が常勤しリハビリ特化型を目指す介護付有料老人ホーム<前編>
→理学療法士が常勤しリハビリ特化型を目指す介護付有料老人ホーム<後編>
働き盛りのときに構えた生活拠点で老後も暮らし続けたいと願う人は多いのではないだろうか。自宅と同じ慣れ親しんだ最寄り駅の施設でなくとも、同じ沿線であれば継続した生活を送りやすい。田園都市線沿線には今回紹介したように、様々な高齢者向け施設があるので、近くの駅から順番に見ていくのも良さそうだ。
撮影/津野貴生 取材・文/ヤムラコウジ
※施設のご選択の際には、できるだけ事前に施設を見学し、担当者から直接お話を聞くなどなさったうえ、あくまでご自身の判断でお選びください。
※過去の記事を元に再構成しています。サービス内容等が変わっていることもありますので、詳細については各施設にお問合せください。