コロナストレスでのホルモンの乱れに要注意!ホルモンとの正しい付き合い方
私たちの体内に存在するホルモンは、脳、胃、腸、卵巣など、身体のほとんどすべての臓器で作られ、血液に乗って別の臓器に運ばれ、心身の健康を保つために働いている。ホルモンは、血圧、糖尿病などにどのように作用しているのだろうか。
血圧を上げる「アンジオテンシンⅡ」をコントロールするホルモン
血圧はいくつもの要因によって調節されているが、肝臓で分泌される「アンジオテンシンⅡ」に血圧はいくつもの要因によって調節されているが、肝臓で分泌される「アンジオテンシンⅡ」には血圧を上げる作用がある。血管を収縮させるほか、味覚に作用して「しょっぱいものが食べたい」と思わせることで、血圧を上げる。よく使われる降圧剤の一種にアンジオテンシンⅡの産生を阻害するものがあるほど、その作用は強力だ。
●食卓塩ではなく海の塩、岩塩などの塩を選ぶ
「アンジオテンシンⅡは『レニン』という別のホルモンによってコントロールされているため、それ自体を“悪者”と言い切るのは難しい。しかし近年では、アンジオテンシンⅡの増加は動脈硬化に直接関与しているのではないかと指摘されています。
薬をのむ以外でアンジオテンシンⅡの作用を抑えるには、運動や減量が有効です。また、しょっぱいものが食べたくなったら、ジャンクフードや食卓塩ではなく、あら塩、海の塩、岩塩など天然の塩を選ぶことを心がけてください。天然の塩に含まれるカリウムやマグネシウムなどのミネラルには、体内から余分な塩分(ナトリウム)を排出する作用があるため、血圧が上がりすぎるのを防ぎます。カリウムはバナナやほうれん草にも豊富です」
と、ナチュラルアートクリニック(四ッ谷)院長で予防医療に詳しい御川保仁さんは語る。
糖尿病に深い関わりのあるホルモン「インスリン」
「新型コロナウイルスが重症化しやすい」といわれている糖尿病は、膵臓から分泌されるホルモン「インスリン」と深いかかわりがある。
糖尿病には2種類ある。膵臓の不調でインスリンが分泌されなくなる「1型」と、生活習慣の乱れでインスリンの分泌量や働きが低下する「2型」だ。御川さんによれば、最近は糖尿病の発症には至らずとも、2型と同様にインスリンの働きが落ちている人が増えているという。
●規則正しい生活習慣が大切
「インスリンは本来、食後すぐに分泌され、血糖値を下げるために働きます。しかし、これがうまくいかずに血糖値が乱高下しやすくなると、自律神経のバランスが乱れて、不眠や慢性疲労、めまい、立ちくらみ、免疫力の低下といった症状が表れます」(御川さん、以下「」同)
1型糖尿病は治療が必要だが、2型糖尿病の場合は、生活習慣を見直すことでインスリンの働きを改善することができる。
「マグネシウム、亜鉛、クロムなどのミネラルを摂るのがいいでしょう。インスリンは体内に炎症があると働きが悪くなるという説もあります。歯周病や慢性咽頭炎、胃腸の炎症などの治療も、糖尿病を防ぐためには有効だといえます」
骨粗しょう症はエストロゲンの減少が原因
女性に多い生活習慣病の1つに、骨粗しょう症がある。
これは、加齢によるエストロゲンの減少が原因だ。エストロゲンには骨からカルシウムが溶け出すのを防ぐ作用があるため、閉経後に女性ホルモンが減少すると、骨がもろくなりやすい。しかし、前述のように、年を重ねてから女性ホルモンが減ることは避けられない。
そこで登場するのが、血中のカルシウム濃度を調整する副甲状腺ホルモンの「パラトルモン」だ。
「パラトルモンは、血液中のカルシウム濃度が低くなると、骨に保存しているカルシウムを溶かしたり、腸からのカルシウムの吸収を促して濃度を調整します。つまり、血中のカルシウム濃度をキープしておくことでパラトルモンが骨からカルシウムを溶かすのを防ぐことができるのです。そのためには、カルシウムの吸収を助けるビタミンDやマグネシウムをしっかり摂っておくこと。パラトルモンが増えすぎるのを抑えられます」
外出自粛でホルモンバランスが乱れがち
 ナビタスクリニック川崎の内科医・谷本哲也さんによれば、ホルモンとは、「規則正しく、生き物として当たり前の暮らしをしていれば、おのずと整ってくるもの」。朝が来たら起きて活動し、お腹が空いたら食べ、夜が来たら眠るだけで、“自分のホルモンが持つ最大限の力”を発揮してくれるという。
「とはいえ、どうしても不規則になりがちな人や、惰性的な暮らしが染みついている人もいるでしょう。今回の新型コロナウイルスの流行による外出自粛でホルモンバランスが乱れ、高血圧や糖尿病、骨粗しょう症のリスクが上がる人が多いはず。精神的にも大きなストレスです。でも、そんなときほど、睡眠と食事と運動を心がけるしかありません」(谷本さん)
●体が喜ぶ事をして生きることが大切
成城松村クリニックの院長で婦人科医の松村圭子さんも続ける。
「家から出られず、世界中がストレスフルないまこそ、気持ちを切り替えて、生活を見直すチャンスにしてほしい。新たに室内運動を始めたり、料理や掃除に凝って家のなかの居心地をよくする工夫をしたり、思い切ってカーテンや寝具を洗ってみたりするのもいいでしょう。普段しないことをしてワクワクするとドーパミンが出て元気になれます。どのホルモンも、適切な分泌量であれば、体によい作用をもたらしてくれます。
更年期以降は女性ホルモンが減りますが、ほかのホルモンの恩恵を受けることで、快適に過ごすことはできます。50才で女性ホルモンが減っても、人生100年時代といわれるいま、まだまだ折り返し地点です。毎日楽しんで、体が喜ぶことをして生きることが何より大切です」
いい面も悪い面も持つホルモンたちは、こんなときでもあなたの中で日夜働いている。うまく味方につけよう。
教えてくれた人
御川保仁さん/ナュラルアートクリニック(四ッ谷)院長。予防医療に詳しい。
谷本哲也さん/ナビタスクリニック川崎の内科医。
松村圭子さん/成城松村クリニックの院長。
※女性セブン2020年4月30日号
https://josei7.com/
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