コロナ重症化リスクが3倍!高血圧をリセットする生活習慣|座り方・寝起き・お風呂・歩き方
猛威を振るう新型コロナウイルスに対し、高血圧の人は重症化リスクが最大3倍とされ、致死率が最も高い基礎疾患とされている。日ごろから血圧が高めの人はこのデータを知ると、怖くなってしまうかもしれない。
しかし、生活の中で少しずつ気をつけていけば血圧を改善することができるという。年間7500人の高血圧患者を診療し、「医者も信頼する血圧専門医」の市原淳弘さんが、誰でもできる“超最新”血圧リセット術を教えてくれた。
椅子にゆったり座る“社長座り”で血圧降下
普段の姿勢や座り方も血圧に大きくかかわる。
「猫背になってパソコンやスマホをのぞき込む時間が長いほど、血圧が上がるリスクがあります。というのも、首のつけ根部分には血圧を調整する機能があり、うつむきの姿勢が続くと血圧が上がります。座りっぱなしもよくありません。股関節の太い血管が圧迫され続けて血流が悪くなると、血圧が上がりやすくなります」(市原さん・以下同)
血流をよくするために、1時間に1度は立ち上がって体を動かすか、座り方を工夫してみるといい。市原さんは、ゆったりと座る“社長座り”を紹介する。
「椅子に浅く腰かけて、両足を投げ出し、背もたれにゆったりともたれてください。上半身を135度ぐらいに反らすだけで血流がよくなります。ひと呼吸してリラックスすれば、副交感神経が活発になり、血圧が下がります」
●高血圧に効く「座り方」
背もたれにゆったりともたれ(腰が135度になる程度)、足を投げ出して座る“社長座り”。血流がよくなり、高血圧リスク減
椅子は、できるだけ体に圧迫を与えないものがいい。
「例えば木の椅子など、座る部分の素材が硬いとお尻の筋肉が圧迫されて、血流が悪くなります。硬い椅子なら、座布団を敷いて圧迫を軽減するといいですね」
横向き寝、朝起きたらまずスマホでニュース
睡眠と高血圧にも深い関係がある。
「睡眠不足のまま無理をすると血圧が上がります。体が睡眠を求めているのに無理をすると、脳を覚醒させるために、血圧を上げるアドレナリンがたくさん出ます。睡眠時間の目安は、40才以上で7時間、40才未満で8時間。それ以下は睡眠不足と考えてください。疲れたら無理せず、昼寝を取り入れましょう」
眠る姿勢にも血圧ダウンの秘訣があるという。おすすめは「横向き」だ。
「酸素不足になると、血圧が上がりやすくなります。仰向けではなく横を向いて寝ると、睡眠中の気道を確保できるので、体は酸素を取り込みやすくなります。横向きで寝ると、日中の血圧が平均15mmHg下がったという研究報告もあります。特に睡眠時無呼吸症候群の人は、横向きがいいですよ」
●血圧に効く「眠り方」
酸素不足を防ぐために、枕は高すぎないものを選びたい。
「横を向いたときに、あごが上がったり下がったりせず、鼻から胸が平行になる高さのものを選びましょう。高すぎる枕は、気道を狭めます」
起床時にも、高血圧を予防するために工夫ができる。
「目が覚めてすぐに体を起こすと、血圧が急上昇します。目が覚めたらベッドの中で伸びをしたり、手足を振ったりして、体をウオーミングアップしましょう。次にスマホでニュースを読んだりして、脳を覚醒させてからゆっくり起床します」
お風呂は夜に10分つかる、朝風呂は高リスク
夜に入浴すると、睡眠中の血圧を下げることができる。入浴後は1時間くらいでベッドに入るのが理想だ。
「鹿児島大学医学部が中心となった共同研究では、41℃のお湯に10分間つかってから寝た場合、上の血圧が15mmHgも低下しました。一方、湯船に入らずに寝た場合、血圧の低下は7mmHgにとどまった。つまり、2倍も差があったのです」
お湯の温度は39~41℃で、つかる時間は10分がいい。
「高齢になると温度に対する皮膚の感覚が鈍くなり、熱いお湯に長く入りたくなってきます。しかし、自分では気持ちよくても、皮膚を介して体はダメージを受けていることがあります」
そもそも血圧は一日のなかで変動するものだ。睡眠中は下がっているが、朝起きてから少しずつ上昇し、約1時間半後に最高値に達する。日中で血圧がいちばん高くなる朝の時間帯の入浴は避けよう。
「入浴前、服を脱ぐと寒いので血管が縮み、血圧が上がります。その後湯船につかると、血管が拡張して血圧が下がります。そしてまた、脱衣所で血圧が上がる。そもそも入浴という行為は血管にかなりの負担をかけるものです。特に高齢者は、血圧の急変動(ヒートショック)による心筋梗塞や脳卒中のリスクが高くなります。ヒートショックを防ぐためには、暖房をつけて脱衣所や浴室を暖かくしておくことです」
今年2月11日に亡くなった野村克也監督(享年84)も、入浴中のヒートショックが原因だと考えられている。入浴中の事故は11~3月までが多いので、気を抜かないようにしたい。
1日計30分以上の早歩き
何気ない排便習慣にも高血圧のリスクが潜んでいる。
「トイレでのいきみが原因で、高血圧から脳血管障害を起こすケースは少なくありません。お腹に力を入れて『いきむ』と、上の血圧が平均20mmHgも上がるというデータがあります」
とはいえ、便秘のときはどうすればいいのか。
「いきむ時間が長いほど血圧が上昇するので、1回10秒以内にとどめて。一旦息を吐いて、落ち着くようにしましょう。トイレをがまんするのもよくありません。トイレの後にスッキリするのと反対に、がまんしているときは脳が緊張して、血圧が上がります」
健康のためのウオーキングは、歩数を気にするよりも早歩きする方が効果的だ。
「少し速めで、1km12分くらいの速度が目安です。あまり速く歩きすぎると、交感神経が活発になって逆に血圧が上がってしまいます。歩く時間は1日30分以上が理想。10分を3セットでも大丈夫。時間帯は、起床後1.5~2時間くらいがベストです」
無理をしすぎてはストレスになって血圧が上がってしまう。無理のない範囲で続けることが大切だ。
教えてくれた人
市原淳弘さん/「東京女子医科大学高血圧・内分泌内科教授。「医者も信頼する血圧専門医」である。最新著に『食べ方、座り方、眠り方で下がる! 血圧リセット術』(世界文化社)がある。
イラスト/小山ゆうこ
※女性セブン2020年4月16日号
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