長生きできる究極の呼吸法|腹式呼吸の基本のやり方
突然死の中で最も多いとされる急性心臓死。大半は虚血性疾患だが、その原因は心臓などの細胞に酸素が届かなかったことにある。細胞の酸欠は、ほかにもあらゆる不調や生活習慣病、不定愁訴を引き起こすのだ。
そのため、普段の呼吸に加え、合間に腹式呼吸を取り入れ、細胞呼吸を円滑にすることが大切。その方法とは? ハーバード大学やソルボンヌ大学などで最先端医療に携わるスーパードクター、根来秀行さんに聞きました。
自律神経の乱れが細胞呼吸に影響を及ぼす
●毛細血管の血流はストレスに左右される
細胞呼吸は取り込まれた酸素と栄養素でエネルギーを生み出す、生物の活力源。だが、そのルートが途絶えてしまったり、酸素が入ってこなくなったりすると、スムーズに細胞呼吸ができず、体の活力も失われてしまう。
「実は自律神経の乱れでも血流の悪化や毛細血管の減少が起こり、細胞呼吸を邪魔します。たとえば、毛細血管の根元にある前毛細血管括約筋は、交感神経が優位な状態になると収縮し、副交感神経が優位だと緩み、血流はメンタルでも左右されるのです(上のイラスト参照)」
IT猫背や口呼吸、浅い呼吸のほか、ストレスや緊張、寝不足などの影響で酸欠状態になりやすいのが細胞呼吸の弱みでもある。
「健康長寿の要は毛細血管と細胞呼吸にあります。ストレスの多い生活の中で細胞呼吸を正常に戻すには、朝晩に腹式呼吸を取り入れ、通常の胸式呼吸と併せてバランスよく呼吸することが大切です」
そのカギを握る腹式呼吸の習得には、細く長い鼻からの息を吐く練習が大切だ。また、焦りや緊張対策、集中力アップなど、目的に応じた呼吸法もあるので、その使い分けにも注目したい。
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実践法!腹式呼吸を身につける基本の「4・8呼吸法」
【1】椅子に座り(立ったままでも、あお向けに寝た姿勢で行ってもOK)、ラクな姿勢で鼻から軽く息を吐く。
【2】鼻から息を吸いながらお腹をふくらませつつ、「1、2、3、4」と心の中で数える。このとき、背中側にも空気が入っていくようなイメージで行う。
【3】肛門→恥骨→へそ→横隔膜の順で内臓を持ち上げるようなイメージで、お腹をヘコませつつ、鼻から8秒かけてゆっくり息を吐く。その後、2と3を気持ちが落ち着くまで繰り返すのがポイントだ。
まずは「吐く息を長くする」呼吸の反復練習から! 腹式呼吸を身につけるには、基本となる「4・8呼吸法」から始めるのがおすすめ。
この「4・8」とは、腹式呼吸で4秒鼻から吸って8秒鼻から息を吐くという意味で、吐く息を長くするのがポイントだ。これを朝晩や、気づいたときにこまめに行うと、鼻呼吸や腹式呼吸が自然と身につく。行う際にへそに手を当て、お腹の動きを確認するのもおすすめだ。
また、息を吐く際に骨盤から内臓を持ち上げる意識を持つと、骨盤底筋のトレーニングにもなる。
駅伝チームは「5・5・5」、関取は「4・4・8」の応用編
根来さんの呼吸法指導の中で、応用編の代表が「5・5・5呼吸法」。腹式で5秒間息を吸い、5秒間息を止め、腹式で5秒間息を吐くのを反復する呼吸法だが、ダメージを回復し、同時に集中力を高める効果があるため、青山学院大学の駅伝チームも箱根駅伝で取り入れ、優勝への原動力になった。ほかに、大相撲では、花道で緊張をほぐす「4・4・8呼吸法」を実践する関取もいるそうだ。
※呼吸法手順は、最新刊『病まないための細胞呼吸レッスン』(集英社)より抜粋引用。
教えてくれた人
根来秀行さん/医学博士・総合内科専門医。ハーバード大学医学部客員教授専門は内科学、腎臓病学、抗加齢医学、 遺伝子治療、長寿遺伝子、 睡眠医学など多岐にわたる。最新著書は『ハーバード&ソルボンヌ大学Dr.根来の特別授業 病まないための細胞呼吸レッスン』(集英社)。
イラスト/鈴木みゆき
※女性セブン2020年3月12日号
https://josei7.com/
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