肩こり・老眼・息切れ・不眠…不調を改善する呼吸法7つ|息苦しい、だるいは「隠れ酸欠」が原因かも
季節が移り変わるこの時期、「息苦しい」「だるい」と病院に駆け込む人が増えている。理由は「隠れ酸欠」。普通に呼吸をしているつもりでも、酸素を体内に取り入れる機能が低下し、体の不調につながっているという。呼吸の回数は1日2万回。もしその方法が間違っていたら…。体の不調がみるみる改善する「7色の呼吸法」を専門家に聞いた。
息苦しさの原因は「酸欠」
兵庫県在住の広川英子さん(48才・仮名)は、ここ最近息苦しさに悩んでいた。
「階段を上がる時はもちろん、普通に歩いていても、なんだか苦しくて‥‥。体が常にだるかったり、夏でも手足が冷えたり、むくみもとれず悩んでいました。重い腰を上げて病院で診察を受けると、医師から『隠れ酸欠ですね』と言われたんです。初めて聞いた言葉だったので、びっくりしました」
広川さんが診断された「隠れ酸欠」とは、いったいどのような症状なのだろうか。
そもそも人間は、無意識下で繰り返される呼吸により空気中の酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出。取り入れた酸素は血流に乗って体のすみずみに送られ、活動のエネルギーとなる。
『すべての不調は呼吸が原因』(幻冬舎新書)の著書がある東京有明医療大学学長の本間生夫さんが解説する。
隠れ酸欠で落ち込み、イライラ、全身の老化が進む
「呼吸しても肺に残り、交換されない空気の量を『機能的残気量』といいます。年齢を重ねると呼吸が充分にできなくなり、この分量が増えていきます。すると外から新しい空気を取り入れるスペースが狭まり、換気効率が著しく低下してしまい、少し動いただけでも息切れしやすくなります」
この状況を「隠れ酸欠」という。最大酸素摂取量は年齢とともに減少し、25才以降では10年で10%減少する。80代では30代に比べ、50%以上も減少するという。
そうなると、体のあちこちに不調をきたすことになると本間さんが続ける。
「空気の出し入れがうまくできないと、体を動かすエネルギーを生み出せなくなるため、体中の細胞の代謝が落ちる。体が疲れやすくなるほか、胃腸の調子を崩したり、腰痛、肩こりやむくみの原因となったり、不眠を引き起こすこともある。さらに、気分が落ち込んだり、イライラするなど精神面にも影響を及ぼすばかりか、全身の老化をも促進してしまうのです」
隠れ酸欠を引き起こす3つの原因「加齢」「姿勢」「ストレス」
そんな恐ろしい「隠れ酸欠」へと私たちを陥らせる原因は大きく3つある。その1つ目として挙げられるのは「加齢」だ。
「呼吸は肺が膨らんだり縮んだりすることで行われますが、肺自体は自力で膨らむことはできず、肋間筋や横隔膜を代表とする『呼吸筋』のおかげで動いている。しかし、老化するにつれて筋力が落ちる。また、肺を取り囲む胸郭が硬くなったり、肺自体の弾力性も失われていき、若い時と同じように呼吸ができなくなっていくのです」(本間さん)
2つ目の原因は「姿勢」だ。
日本リバース本院の院長を務める今野清志さんが話す。
「パソコンに向かって仕事をしたり、スマホを操作する時間が増えた現代人は、どうしても猫背になりがち。必然的に首を下げることにつながり、呼吸の通り道である気道をふさいでしまっていて、呼吸が浅くなっています」
自律神経に詳しい順天堂大学教授の小林弘幸さんは3つ目の理由をこう話す。
「ストレスがたまると副交感神経と交感神経の2種類の自律神経のバランスが悪くなり、筋肉の緊張で血管が収縮、血流が悪くなります。すると呼吸も浅く、速くなりがちです。それでは酸素を体内に充分取り込むことはできません」
その3つ、誰しも心当たりがあることばかりだろう。今すぐにでも深呼吸をしたくなるが、それでは根本的な解決にはならないと前出の本間さんは言う。
「医学的に深呼吸は『随意呼吸』と呼ばれるもので、意識的に行う呼吸だが、普段から体内に酸素を取り入れるためには、無意識に行われる、ふだんの呼吸(代謝性呼吸)を底上げすることの方が重要。そのためには呼吸筋のストレッチやトレーニングが効果的です」
「隠れ酸欠」を解消する呼吸法は大きく7つある。効果てきめんな「7色の呼吸」を紹介していこう。