猫が母になつきません 第175話 「わりきれない」
母は小銭を使うのが苦手らしい。とにかく小銭を使わず、たまると財布から出してしまいます。実は《小銭があっても常にお札で払う》というのは認知症の初期に見られる典型的な行動のひとつにあげられています。計算能力が低下して買い物の支払いが難しくなるのです。母もお店のレジでとっさに計算するのは無理、ささっと小銭を取り出すのも無理、結果小銭を使うのが億劫になって財布は小銭でいっぱいになり、出すしかないのだと思われます。出した小銭はいつも適当にそのへんに置いてしまうので、母が長い時間を過ごす居間を掃除をすると必ず小銭があちこちから出てくる。私はそれを集めて本棚にある漫画のキャラクターがついた缶に入れることにしていて、ちょっとした小銭貯金みたいになっています。母が返してきたじゃらじゃらの2千円はその缶の小銭に違いありません。お札だろうが小銭だろうが2千円は2千円。価値に違いはありませんが、なぜか損したような、割り切れない気持ちです。使えない、使われない小銭たち…その意味を知っているからちょっと悲しいんでしょうか。
【作者プロフィール】
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。
第101話「まだまだうめぼし」
第102話「ゆずれない」
第103話「ストップ再利用」
第104話「きづかれる」
第105話「いま?」
第106話「あっというま」
第107話「のまない」
第108話「つけない」
第109話「つかない」
第110話「ドライブスルー」
第111話「るすでん」
第112話「リフォーム」
第113話「かいかえる」
第114話「ピンク!」
第115話「足元注意」
第116話「にらまれる」
第117話「さがしもの」
第118話「こっせつ_その後」
第119話「はかない」
第120話「猫の手」
第121話「やればできる」
第122話「あっとうされる」
第123話「おしまくる」
第124話「ゆだんする」
第125話「いただく」
第126話「たべない」
第127話「いるやつ」
第128話「さむい」
第129話「きこえてる?」
第130話「いぞんする」
第131話「はいらない」
第132話「おかないで」
第133話「つける」
第134話「はなせる?」
第135話「あじみする」
第136話「きになる」
第137話「すいてた」
第138話「のばされる」
第139話「とほうにくれる」
第140話「にっこうよく」
第141話「おさまる」
第142話「みせにくる」
第143話「おこられる」
第144話「ぜんぶだす」
第145話「あてはまる」
第146話「みえる」
第147話「ハマる〈ちらしずし編〉」
第148話「 ねている」
第149話「にている」
第150話「週末の恋人」
第151話「みせつける」
第152話「かくす」
第153話「にぶい
第154話「れんしゅうする」
第155話「みつける」
第156話「メッセージ」
第157話 「どうしても」
第158話「いうべきか」
第159話「わかる」
第160話「なくさない」
第161話「かえる」
第162話「こまかい」
第163話「たいふう」
第164話「きゅうきゅう-その1」
第165話「きゅうきゅう-その2」
第166話「きゅうきゅう-その3」
第167話「まねする」
第168話「きえる」
第169話「ひさしぶり」
第170話「おとなになる」
第171話「はがき」
第172話「まくら」
第173話「るすでん-ふたたび」
第174話「のっかる」