脳が老化したマウスに与えられていたエサは?
満杯の会場の受講者の多くは中高年だ。やはり健康への関心は高い。その後の質疑応答でも、時には矛盾する健康情報とどう向き合えば良いのか、とまどう人たちの様子がうかがえた。
最初に手をあげたのが60代と思われる男性だ。「運動して本当に大丈夫なんですか?」という問いだった。
講座では、酸素消費量が多ければ、身体の細胞の酸化が進み、老化が進むという話だった。健康のために運動が推奨されているが、運動すれば酸素を多く消費し、返って老化が早めるのでは? という主旨だ。何もしないのが一番なのか。朝遅くまで寝ているのは健康のためだと、家でまた語るネタ(言い訳)ができたかに思えたが、甘くはなかった。
福井先生によれば、確かにプロレスや大相撲、アメリカンフットボールなどの選手は短命の傾向があり、それは激しい運動や訓練により、酸素消費量が多いためと考えられる。だが、ふつうの人が歩いたりジョギングしたりすることは何の問題もないという。
「私の話を聴いてよく学生が言うんですよ。山の上の酸素の薄いところでずっと寝ていれば一番いいんでしょって。勉強して頭を使うこともいけないんでしょって。そんなことはありません!」(福井先生)
私の言い訳は、その学生たちと同じ間違いだったようだ。運動せずに肥満になれば、脳からの分泌物質が変わり酸化を進める。やはり「適度な運動」は欠かせないのだ。
質問はその後、健康食品や健康飲料、さらに健康法全般へと広がって行く。中には首を傾げたくなる健康食品や健康法の質問も飛び出す。だが、少しでも可能性があるならむげに否定はできない。表示と内容が違うように明らかに怪しそうなものもあるので注意が必要と、福井先生は事例をあげながら慎重に答えていく。福井先生は「脳の老化(酸化)」の研究者であって、健康食品や健康法の専門家ではない。会場にいる人たちもそれはわかっていても、聞かずにはいられないのだろう。次はどんな質問が出てくるのだろうと、こちらがドキドキしながら聞いていると、案の定、また、突飛な質問が飛び出した。ピンピンコロリだ。
どうすれば、ピンピンコロリができるのか?