ラブホは脱衣所、浴室が広く要介護や車いすの人が利用しやすい
「一般論でいえば、ラブホテルは老舗に価値がありません。古さ=汚さだから。裸になる場所ゆえ、女性にとっては衛生面がいちばん大切なのです。
でも『富貴』は違う。建物の中は極めて清潔です。畳は掃除に手間がかかるのに、いつも完璧。効率性を度外視した造りなので、拭くところが多いのに、ほこりが一切たまっていない。オーナーや従業員の意識が、他のホテルと比べて段違いに高いのです。
最新のホテルでさえ、回転率重視が行きすぎている所はにおいが残りがち。ラブホテルで営まれているのはハートフルな行為だけでなく、お金のみの関係や、時には人の愛憎が表れることもある。私、ラブホテルの取材を1日5軒もすると熱が出ますもの。エネルギーを取られる気がすることも…(苦笑)。でも、『富貴』にはそれがない。いやなにおいがなく、風が通っている」(金さん)
ちなみに、彼女のインタビューは『富貴』の一室で行った。言われてみれば、室内には心地よい畳の香りが漂い、ベッドも壁も清潔感で溢れている。
「古いのに綺麗」という奇跡
『富貴』の最高齢従業員は84才の女性。人と建物を大切にするオーナーの教えが行き届き、誰一人として仕事の手を抜かない。
だからこそ、「古いのに綺麗」という奇跡の環境が維持され、老若男女が集まり、温かい人の営みが生まれる。
この“穢れのなさ”が、『富貴』の最大の価値なのかもしれない。