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暮らし

60代からの【入浴習慣新常識】体に負担をかけないことが大切「毎日石けんで体を洗う必要なし」「50才を過ぎたらサウナは?」

 身も心も清める日本のお風呂文化。湯船につかる習慣は、日本人の健康寿命を延ばすことに貢献しているという説もある。近年のサウナブームに伴い、温泉やスーパー銭湯などに通う人も増えつつあるが、リラックスやストレス解消だけでなく安全に、効果的にお風呂に入りたいもの。知っておけば役立つ、中高年から高齢者までの正しい入浴法を温泉療法の専門医に聞いた。

教えてくれた人

早坂信哉さん/医師・医学博士。東京都市大学人間科学部教授、温泉療法専門医。入浴、温泉、サウナ、岩盤浴などの温熱浴に関する医学的な研究、診療を続け、テレビや雑誌での解説、講演なども多く行う。監修書に『名医がやっている 正しいサウナの入り方』(宝島社)などがある

お風呂の三大効果は『温熱作用(体の温め)』『浮力作用(リラックス)』『水圧作用(血流改善)』

「お風呂の三大効果は『温熱作用(体の温め)』『浮力作用(リラックス)』『水圧作用(血流改善)』ですが、ここ数年の研究で、さらなる効能が加わりました。1つはうつ予防。高齢者約3200人を対象にした調査の結果、毎日(週7回以上)湯船につかる人は、週0~6回の人に比べ、6年後のうつ発症のリスクが約24%減少(※1)。そして2つ目は要介護認定予防。毎日入浴する人は、週0~2回の人に比べ、3年後のそのリスクが約30%低かったのです(※2)。このように、入浴は健康を維持するために必要なもの。忙しいときはさっとつかるだけでもいいので、毎日入浴する習慣を続けてください」(早坂さん・以下同)

(※1)全国の高齢者3224人を対象に6年間追跡した調査発表より(2023年東京都市大学)。

(※2)全国の要介護認定を受けていない高齢者1万3786人を対象に3年間追跡した調査発表より(2018年千葉大学)。

60才になったら実践したい入浴習慣の新常識6選

【入浴習慣の新常識1】汗が出るまで入浴して初めてデトックス効果がある

「デトックスというのは、体内の老廃物が汗によって排出されることのようですが、汗の成分はほぼ水分で、老廃物は含まれていません。医学的にいうと、血液が老廃物を回収し、肝臓や腎臓で有害物質をデトックス(解毒)します。発汗してくると0.5~1℃くらい体温が上がり、血流もかなりよくなります。汗をかいてきたら『体の中でデトックスが始まった!』と思ってください」

【入浴習慣の新常識2】運動した30分~1時間後、血流が落ち着いた頃に湯船に入った方がいい

「息が上がるような運動の直後は、まずシャワーで汗を流し、30分~1時間後、血流が落ち着いた頃に湯船に入った方がいいですね。なぜなら、たとえば筋トレをした直後、血液は筋肉に流れていっています。その途中で湯船に入ってしまうと筋肉に行くべき血液が皮膚にまで行き渡ってしまい、疲労回復を遅くするのです。それでも運動直後に入りたい人は、38℃前後のぬるま湯にしてください。過去に比較の実験をしましたが、直後でも1時間後でも疲労回復度は同じでした」

【入浴習慣の新常識3】湯の温度や入浴時間は目的によって変えよう

「就寝前の入浴は39~40℃がおすすめ。副交感神経が優位になり、リラックスします。入浴時間は10分程度で、5分ずつなど時間を分けて入ってもOK。一方、朝シャキッと目覚めたい、もうひとがんばりしたいというときは、42℃前後の熱めの湯に5分ほどつかると、交感神経が刺激されてすっきりします。熱い湯に入るときは必ずかけ湯やシャワーをかけ、体をならしましょう」

【入浴習慣の新常識4】毎日石けんで体を洗う必要なし

「女性は30代、男性は50代から皮脂が減るので、毎日石けんで洗うと皮脂の取りすぎに。毎日湯船に入るなら、皮脂が多い頭皮や顔、においが気になる脇の下やお尻まわり以外、石けんは必要ありません」

【入浴習慣の新常識5】心臓・肺疾患のない人は肩までつかると呼吸機能のトレーニングになる

「疾患がなければ問題ないです。深くつかるほど温熱作用、浮力作用、水圧作用がしっかり得られます。水圧で胸に圧がかかることで呼吸機能のトレーニングにもなります。逆に、心臓や肺の機能が弱っている人、主治医から入浴の指導を受けている人は、負担の少ない半身浴で。入浴時間は全身浴の倍ですから、20分ほどを目指しましょう」

【入浴習慣の新常識6】50を過ぎたらサウナは要注意

「熱~いサウナの後のキンキンに冷えた水風呂で整うのが最高!」というサウナ好きが多いが…。

「サウナは、いわばヒートショックを作っているようなもの。若い人にはいいのですが、50才を過ぎたら整う前に血圧上昇、狭心症、脳卒中のリスクがあります。高すぎる温度、冷たすぎる水風呂はやめ、温度差の少ないマイルドな入り方にしましょう。男女とも40~50℃のミストサウナやスチームサウナ、岩盤浴がおすすめです。ドライサウナしかない場合は、いちばん温度の低い(おそらく60~70℃)の最下段に場所を取り、発汗や動悸がしたらすぐに出てください。水風呂の代わりにぬるめのシャワーでOK。外気浴は問題ありません」。

取材・文/佐藤有栄 イラスト/鈴木みゆき、しまだなな 写真/PIXTA

※女性セブン2024年6月6日号
https://josei7.com/

●「湯舟につかるのは“最強健康術”」でも正しく入らなければ逆効果「42℃以上のお風呂に入ってはいけない」と専門家

●「高齢の母に安心して湯船に浸かって欲しい」入浴補助用具の選び方・おすすめアイテムを専門家が指南

●「毎日入浴する」「よく笑う」「ペットを飼う」…寝たきりになるリスクを下げる行動リスト「明るい人はケガの治りも早い」

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