断捨離しすぎは認知症リスクがあがる!? 何をどう残すべきか脳科学者が解説
年老いた親の代わりに、溜め込んだ不用品の処分を…という人はちょっと待って! 「“断捨離”によって思い出を振り返る機会を失うと、脳の機能が衰え、孤独感からも認知症のリスクを高める可能性が」と警告するのは、脳科学者の加藤俊徳さん。認知症にならないために、捨てすぎない片付けを心がけたい。
思い入れのあるものは手元に残したいけれど、何十年と生きるとそれだけ思い出の品も増え、収納スペースにも限界が。そこで、どんなものが記憶を呼び戻す糸口になるのか、また、どう残せばよいのか、いつ見返すとよいか、脳科学者の加藤俊徳さんに聞きました。
* * *
Q1:楽しい思い出は忘れにくい?
A:「記憶系脳番地は感情系脳番地のすぐ近くにあり、喜怒哀楽を感じて感情を刺激することで、記憶は定着しやすくなります。特に楽しい気持ちは脳内物質のセロトニンを活発化させるため、脳の働きが活性化され、より記憶に残りやすくなります」(加藤さん、以下「」は同)
また、セロトニンを活発化させると免疫力が上がるなど、認知症以外の病気にもうれしい効果が期待できる。
Q2:部屋の収納が狭いのですが、思い出のものを残す優先順位は?
A:収納スペースに合わせて、思い入れの強いものを厳選する。かさばって保管場所に困るものは、写真に撮ってそのもの自体は処分してもOKだ。
「ただ、新品では替えがたい思い出が詰まっている場合、たとえば本なら、何年も読み込んでボロボロになっていたり、書き込みがある方が、読んでいた時のことを鮮明に思い出せます。新品の本とは違うので、表紙や書き込みのあるページだけ残すのも1つの方法です」
Q3:見るとつらい思い出がよみがえるものも残した方がよい?
A:つらい気持ちになると脳の働きが停止しやすいので、捨ててもいい。ただ、時間の経過で、つらさを乗り越えていたり、つらくても前向きな気持ちになれるものは残した方がよい。
「たとえば、受験勉強の時に使って短くなった鉛筆を見たら、“あの時があったから今の自分がある”“あの時に比べたら今の困難はたいしたことはない”など、思い出だけでなく今を生きる原動力にもなり得るのです」
Q4:見たもの、聞いたこと、香り…最も記憶を呼び戻すものは?
A:思い出の品は見るものだけが記憶を呼び戻すのではなく、昔使っていた香水、よく聴いていた音楽など、五感すべてが記憶につながる。人により、記憶が呼び戻されるものはさまざまだが、多くの人に鮮明に思い出されるものは母親の愛用品だ。
「母のお気に入りだった着物など、見ると一緒に出かけた思い出から始まり、さまざまなことが思い出されます。懐かしいという気持ちも、記憶に定着されやすいのです」