本当は怖い低栄養<2>早期発見・予防のコツ~プロが教える在宅介護のヒント
低栄養が原因でサルコペニアになる前に…今すぐ予防を!
先のチェックで1つでも当てはまることがあったら、低栄養や、低栄養を原因とするサルコペニアの予防を始めましょう。
まず、食生活を見直すことが大切です。バランスよく、十分に食べるには、なるべく豊富な種類の食べ物を、いろいろな調理法、味つけで食べる工夫をしてください。
食欲を促す「五味・五色・五法」献立のススメ
低栄養予防が必要な原因として、病気や口腔・睡眠・排せつのトラブル、服薬の問題などが考えられる場合は、医療機関を受診して、原因の特定と治療が必要ですが、そのような原因がない場合は、次のポイントを意識して、献立を考え、食事のバランスを整えましょう。
・「 五味」をそろえる
五味:甘い、塩辛い、酸っぱい、苦い、辛い
・ 「五色」をそろえる
五色:白、黒(紫)、黄、赤、青(緑)
・ 「五法」をそろえる
五法:焼く、煮る、揚げる、蒸す、生食
五味・五色・五法がそろった献立になるように工夫すると食卓に彩りが出て、食事が楽しめ、低栄養予防になって一石二鳥です。
一食で五味・五色・五法をそろえるのが大変な場合は、間食も含めて1日で五味・五色・五法をそろえてみましょう。量の目安は、メインのおかずや副菜、デザートはしっかり食べて、主食のごはんやパンを調整するとよいでしょう。
すべての準備を手づくりするのが大変なら、お惣菜や加工食品を活用するほか、楽しい外食の機会を増やしたり、一食もしくは二食は、配食サービスを利用するなどして、無理しないことが続けるコツです。
高齢者にはたんぱく質が欠かせない。毎食たんぱく質の1品を
特に、高齢の方はたんぱく質が不足することが多くみられます。たんぱく質は、次のようなはたらきをする栄養素ですから、健康維持に欠かせません。若々しさや生活能力、運動機能を保つためにも不可欠な栄養素です。
・ 筋肉や内臓、皮膚、爪、髪など体内のすべてをつくる
・ 代謝に欠かせない酵素をつくる
・ 消化器や脳神経系がはたらくために必要なホルモンをつくる
・ 感染から守る免疫細胞をつくる
・ 血中酸素や脂質を運搬する
・ 血液やリンパ液の浸透圧を調整する
・ 血液を弱アルカリ性に保つ
・ エネルギー源として利用される ほか
たんぱく質を多く含む食品は肉、魚、卵、乳製品、豆類などです。食事のときは必ず何か1品を加えるようにしましょう。
そして、おいしく、しっかり食べるには食欲を感じる工夫も大切です。香辛料を利用したり、食事の彩りやバリエーションに配慮する「五味・五色・五法」に加え、軽い運動や家事でなるべくからだを動かす機会を増やしましょう。お腹が空くと、食欲が出て、食事がおいしくなります。バランスよく、十分に食べて、しっかり栄養をとりましょう。
安田淑子さん:管理栄養士。地域食支援グループ・ハッピーリーブス(東京都新宿区)副代表。1993年より高齢者の栄養管理・食支援に携わる。ハッピーリーブスは、歯科衛生士・管理栄養士・理学療法士が協働で、在宅で療養する高齢者の食支援を行う任意団体。安田さんは主治医の指示書にもとづいて介護保険で行う「居宅療養管理指導」の訪問栄養ケアを担当。ほかに新宿ヒロクリニック外来での栄養相談などのほか、デイサービスでの昼食の栄養ケア、専門職向け食支援教育の講演、執筆など。著書に「介護スタッフのための 安心『食』のケア 口腔・嚥下・栄養」(共著、秀和システム刊)。
イラスト/飛鳥幸子 取材・文/下平貴子
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