コミュニケーションを重視し個別ケアに取り組む介護付有料老人ホーム<前編>
ほかにも好きな歌手のコンサートにスタッフと一緒に行った話など、鈴木さんからはいくつもエピソードが出てくる。オンリーワンプロジェクトのポイントは、ひとりひとりの希望を叶えるために話を聞くことにあるようだ。
オンリーワンプロジェクトは、生まれてから今までに至る人生のヒストリーを作ることから始める。それぞれの状態に合わせて、スタッフが入居者や家族から話を聞くという。そして、幼少の頃のことや仕事での活躍、家庭のことなどを年表のような形でまとめていく。
入居者のヒストリーはスタッフ間で共有され、日々の介護にも活かされる。認知症が進み、自分の意思をうまく示せなくなった入居者の希望を想像してくみ取ることにも使っている。また、どのような名前で呼ぶか、どのような内容の会話をするかにも役立てているそうだ。たとえば、社長だった入居者が自分の名前を呼ばれても反応がなかったのに「社長」と呼ぶと反応を示したり、机をいつも手で撫でていたのが職人時代の動きだったことが分かったりすることがあるという。ひとりひとりの人生を知って接するかどうかで、介護の質が大きく変わるのだ。
コミュニケーションを重視した運営方針
高齢者向け施設の入居者の楽しみの一つは食事だ。その分、要求される水準も高い。食事の場面でも、集団生活のなかでいかに個別ケアを実現するかという課題が出てくる。
「薄い味が好きな方もいれば、濃い味が好きな方もいる。肉が好きな方もいれば、魚が好きな方もいる。全てを叶えるのはなかなか難しいですが、要望を聞く機会を多く取るようにしています。試食会、懇親会、厨房スタッフを交えての話し合いを開催しているほか、アンケートも取って反映させていますよ」
ここでポイントになるのが、入居者とスタッフがコミュニケーションを取ることだ。要望をしっかりと聞き、できることとできないことを伝える。できることは実際に反映させる…というコミュニケーションを取ることで入居者の満足度も高まるのだ。
「コミュニケーションを取ることが重要です。信頼関係がないと介護の仕事は成り立たないと思っています。施設を選ぶ際も信頼関係を築けるかどうかが重要ですね」
もみの樹・杉並はうるさいくらい、些細なことでも入居者の家族ともコミュニケーションを取るという。たとえば、小さなあざができても報告するそうだ。
「報告することでお叱りを受けることを受けることもありますが、事実は事実として謝罪をして、再発防止に努めます。それが誠意だと思います」
家族と施設のコミュニケーションの場としては、年に2回の運営懇談が行われている。そしてさらにフロア別懇談会を行っている。フロア別懇談会は具体的な細かい要望が出てくる貴重な機会だという。
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次回後編では、個別ケアを充実させるための介護ロボットの導入や、安心してゆったりとした時を過ごすための様々な施策を紹介する。
【データ】
施設名:もみの樹・杉並
公式WEBサイト:https://www.mominoki-life.com/suginami/gaiyo.html
所在地:東京都杉並区和泉3-52-8
最寄駅:京王井の頭線「永福町駅」北口より約650m
類型:介護付有料老人ホーム
運営主体:大和ハウスライフサポート株式会社
敷地面積:3703.91平方メートル
延床面積:3686.04平方メートル
室数:64室
入居要件:入居時、原則65歳以上で要介護認定(要支援・要介護)を受けている方
構造:鉄筋コンクリート造 地上3階建
開設年月日:2006年3月1日
料金:
【1】入居一時金プラン
月額利用料は年齢に関わらず26万6760円、入居一時金は年齢別に区切られている
63~72歳:3750万円
73~79歳:3255万円
80~85歳:2750万円
86~89歳:2260万円
90~94歳:1830万円
95歳以上:1055万円
【2】月払い契約方式プラン
月額利用料は60万2760円、入居一時金は0円
※【1】【2】の月額利用料内訳/管理費、特別サービス費、食費、基本料金、家賃
撮影/津野貴生
【このシリーズのバックナンバー】
●手厚い「個別ケア」を実現した介護付有料老人ホーム<前編>
●手厚い「個別ケア」を実現した介護付有料老人ホーム<後編>
●自立支援介護に実績のある介護付有料老人ホーム<前編>
●自立支援介護に実績のある介護付有料老人ホーム<後編>
●元イタリアンの料理人が腕をふるう介護付有料老人ホーム<前編>
●元イタリアンの料理人が腕をふるう介護付有料老人ホーム<後編>
●医療法人が運営するクリニック併設の介護付有料老人ホーム<前編>
●医療法人が運営するクリニック併設の介護付有料老人ホーム<後編>