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お正月が発見のチャンス!家の中で見つかる認知症のサイン

 東京―岩手と遠距離で、認知症の母の介護している工藤広伸さん。家族の目線で”気づいた””学んだ”数々の介護心得をブログや書籍などで公開し話題となっている。今回は、正月に帰省した際、ぜひチェックしたい家の中の話。久しぶりに会う親のちょっとした変化は、本人の様子や態度のみならず、環境に現れていると工藤さんはアドバイスする。帰省予定の人必見!

 * * * 

 お正月に帰省されたとき、ご両親や祖父母のアレっと思う変化に気づくことがあるかもしれません。

「同じことを何回も言うようになったなぁ」
「どうも言っていることのつじつまが合わないなぁ」

 といった本人の変化は分かりやすいのですが、家の中やその周辺の様子が変わっていることもあります。居間、台所、寝室、冷蔵庫の中、押し入れやタンス、引き出しの中に、思わぬ変化を発見!ということも。

 わたしも、母の認知症が分かり、岩手の実家へ帰省してみたとき、本人の変化以上に身の回りの様子に驚きの連続でした。どのような経験をし、どう対処したかについてお伝えします。

変化1:分別、処分ができずゴミが山積みに

 わたしが一番驚いたのは、自宅にある小屋2カ所の入り口付近にうず高く積んであった燃えるゴミです。

 ドアを開けた瞬間、今にも崩れ落ちそうな異臭を放つゴミを見て、何が起こっているのか分からず、しばらく考え込んだほどでした。

 認知症の母は、燃えるゴミの収集日が何曜日か理解できなかったために、ゴミを溜めていたのです。また、母は手足が不自由なので、雪道を歩いてゴミ置き場まで行くことができないということも、同時に分かりました。

【こう対処した!】 
 そこで、介護サービスを利用して、ヘルパーさんに定期的にゴミを捨ててもらうようにお願いをし、ゴミ問題を解決しました。

 また、燃えないゴミ、古紙、ペットボトルなどは、地域によって曜日ではなく指定日であることも多く、廃棄ルールが複雑で対応が難しいです。これらに関しては、わたしが帰省したときにまとめて廃棄するようにしています。タイミングが合わないときなどは、ゴミ収集場へ持ち込むこともあります。

 特に燃えるゴミは腐るので、緊急度が高いです。きちんと処理できているか、チェックしてみるといいと思います。

変化2:灯油の注文を忘れ、灯油タンクの残量がほぼゼロに

 オール電化であれば問題ないのですが、中には灯油を利用して暖房や給湯をされているご家庭もあるのではないでしょうか? うちは、灯油で給湯を行っているため、灯油が切れるとお湯が出ません。また、灯油ファンヒーターを利用しているため、灯油がないと部屋を暖めることもできません。

 母の住む岩手県盛岡市は、本州一寒い県庁所在地と言われていて、冬はマイナス10度以下になることもあります。そんな地域で灯油の在庫を切らしてしまうことは、死を意味します。

 認知症になる前は、自分で在庫を確認して、なくなったら電話で配送を頼んでいました。しかし、在庫確認することを忘れてしまうため、電話ができませんでした。灯油タンクの目盛がほぼゼロだったことに、青ざめたことを今でも覚えています。

【こう対処した!】
 調べてみると、灯油の定期配送サービスがありました。配送会社には、認知症の母が住んでいることを伝え、在庫が切れないようチェックするようにお願いしました。また、火の心配があったので、灯油ファンヒーターを使う部屋を減らし、エアコンを設置しました。

変化3:食器棚の整理がめちゃくちゃに

 家族5人で住んでいた時期もあったため、食器が大量にありました。几帳面な母は、きれいに食器を片付ける人だったのですが、ある日引き出しを開けてみると、箸やスプーンなどカトラリーを入れる場所に、なぜか大皿が乗っていました。通常、食器の定位置があると思うのですが、その定位置が覚えられないのです。

【こう対処した!】
 そこで、分かりやすくするために、最低限必要な食器のみを残すことにしました。食器を捨てることはもったいないと考える母なので、数か月かけて少しずつ食器を廃棄することで、気づかれないようにしました。食器を定位置に戻すことは未だにできませんが、それでも食器が少なくなったため、以前よりは探しやすくなりました。

思わぬモノが、思わぬ場所に。見えない場所の変化をチェック!

 こんなこともありました。3年前の生菓子が押し入れから出てきたのです。ゾッとしました。タンスからリンゴが出てきたこともありますし、冷蔵庫で生ゴミを冷やしていたこともありました。

 ある認知症の講演会でも聴いたのですが、このように家の見えないところにも認知症のサインが現れることがあるそうです。

 認知症のサインを、当人の言動から探るということはよくあります。しかし、周りの環境をチェックしてみるという方法も有効だと思います。

 生活していくうえで必要なことができていない、いつもあるべき場所に物がないといった変化も現れます。

 認知症介護5年目になった今でも、実家に帰るとまず部屋の変化をチェックしています。言動を取り繕うということはよくありますが、部屋を取り繕うということも母を見ていると多いように思います。見える範囲だけキレイに保とうとして、見えないところはいいかげんになることもあります。

 お正月に帰省されたら、家中チェックしてみて、見えない変化を探してみてはいかがでしょうか? そして、気になることがあった場合は、お近くの「もの忘れ外来」へ相談してください。

 今日もしれっと、しれっと。

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工藤広伸

祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母(認知症+CMT病・要介護1)のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間20往復、ブログを生業に介護を続ける息子介護作家・ブロガー。認知症サポーターで、成年後見人経験者、認知症介助士。 ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(http://40kaigo.net/)

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