「排せつ」のトラブル<1>「介護中の便失禁は、便秘が原因の場合も」~プロが教える在宅介護のヒント
訪問看護に行った先では、便秘のときには早くスッキリ出したいと便秘薬を使うことが習慣になっている方に会うことが少なくありません。
医師の診察を受け、処方された便秘薬を規則正しく服用している場合は問題ありませんが、自己判断で量を加減したり、市販薬を追加、常用することは腸の機能を弱らせ、一時的に便秘が解消しても下痢と、より頑固な便秘を繰り返すなど、状態を悪くする場合もあります。
高齢者はとくに、年齢を重ねることで大腸のはたらきが弱っているため、その上で薬を使いすぎると腸管の絨毛(じゅうもう)が炎症を起こし、腸の健康を守る機能や栄養素をとり込む機能が低下します。
腸の周りには免疫細胞が集まっているので、腸のはたらきが弱ると、免疫力が低下して、あらゆる病気にかかりやすくなるだけでなく、腸内の炎症は大腸がんのリスクを高めるため、訪問看護では自然な排便周期が取り戻せるよう、排便コントロールを重要に考えます。
高齢者の排便コントロールは、なるべくひとりひとり、自然な排便周期を取り戻すことを目標に、専門的なケアとはいえ、とくに下剤など即効的な手段だけに頼りすぎないことが大切です。予防的ケアを暮らしの中で続けましょう。
次回(第2回「排泄のトラブル」)は、腸のはたらきが低下することによって高齢者に起こることが多い2つの便秘タイプと、家庭で可能な予防法をお伝えします。
なお、病院や施設によっては、一律3、4日排便がなければ下剤・摘便・浣腸といった即効的な排便コントロールをすることが多いです。退院、退所後に便秘が起きたら、入院、入所中に「大腸刺激性下剤」の使用など、どのような排便コントロールが行われたかが影響していることもあるので、その点を確かめ、今後の排便コントロールについて在宅医や訪問看護師などに相談してください。
取材・文/下平貴子
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