介護費用Q&A|いくらかかる?公的介護保険だけで大丈夫?
A:「親の介護を子が担うことも多くあります。その際の介護費用を軽減させるためにも、親のお金の事情は把握しておく必要があります」(太田さん)
そのためには親がどれくらい貯金をしているかなどを知る必要があるが、どのように聞き出すかは悩みどころ。いきなり聞くと「財産狙いでは?」と気分を害す親もいるとか。
吹田さんは、親に聞きやすい雰囲気を作るために、まずは自分の介護を含めた将来設計の話をして、きっかけを作るのがいいと語る。
「そうすることで、親も自然に話しやすくなってくると思います。親の預貯金、保険、年金などはどれくらいあり、通帳や印鑑はどこに保管しているかがわかれば、突然、親が介護状態になっても慌てることなく対処できます」
Q:高額な自己負担金を減らすには?
A:介護の必要度が増してくると、次第に介護費用が家計を圧迫する。そのための軽減策が、「高額介護サービス費」という制度だ。居宅サービスや施設サービスを利用して1か月間の自己負担額が一定の基準を超えたとき、市区町村に申請することで、超過した分が払い戻される(食費や居住費、住宅改修費、福祉用具購入費などは除く)。
「さらに1年間(8月~翌年7月まで)に同じ医療保険の世帯内で、介護と医療の合計の自己負担額が上限を超えた場合、申請により超えた分が支給される『高額医療・高額介護合算療養費制度』を利用することもできます。70才以上で一般所得(年収156万~370万円)世帯は56万円、現役並み所得世帯は上限額が細分化されて自己負担額の上限があります。あらかじめ自分がどの所得世帯にあてはまるのかを確認しておきましょう」(吹田さん)
Q:公的介護保険だけで足りる?
A:実際に介護生活が始まると、公的介護保険サービス対象外の費用が思いのほか発生する。在宅介護の場合では、要介護度が高くなるとおむつ代や防水シーツ、寝具、衣類、流動食、配食サービス、補聴器、杖など、さまざまなものが必要になり、シーツや衣類などの汚れ物も多くなるため、洗濯の水道代も増える。
体調が悪くなれば病院にかかる回数も増え、医療費や病院への交通費もかかってくる。電車やバスに乗れない場合は、必然的にタクシーを使わざるを得ないため出費はかさむ。
「公的介護保険で入れる施設が満床で民間の介護施設を選んだ場合など、オプションでさまざまな費用が発生するケースもあるので、料金形態をよく確認することが必要です」(太田さん)
Q:民間の介護保険・共済はどんなもの?
A:一定の要介護認定を受けたときなどに、「一時金」や「年金」で保険・共済金を受け取れるというのが主な保障内容だ。一般的に掛金は掛け捨てとなる。ある商品では、40~75才まで加入でき、40才で加入すると月々の保険料の支払いは4000円台後半~5000円台となる。
保障が受けられるのは、要介護2~5に認定されたときや所定の重度要介護状態になったとき。一時金500万円が受け取れる商品もあり、何かと負担が多い介護生活の初期段階で家計負担がかなり軽減される。
ここ数年、民間の介護保険・共済を検討する人が増えているという。理由は公的介護保険の先細りへの不安や親が祖父母を介護するのを見てきた人たちが、公的介護保険だけでやりくりするのが難しいと感じているからだ。
「経済的にも精神的にも負担なく介護を受けるために、健康なうちに民間の介護保険・共済を選択肢の1つとして考えてもよいのではないでしょうか。自分や親が介護状態になる可能性を考えると、一生涯続く介護保障を選ぶのが安心です」(吹田さん)