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連載

認知症の母の通院介助ができず薬をもらえない!困った息子が取った対策と遠距離介護14年目に起きた初の緊急事態

 東京在住の作家でブロガーの工藤広伸さんは、岩手・盛岡に暮らす認知症の母の遠距離介護も14年目、これまで月に2度実家に戻るペースを保ち続けてきたが、帰省を断念せざるを得ない緊急事態に。介護のキーパーソンとなる工藤さん不在の遠距離介護をどう乗り切るのか。帰省を断念した理由と対策を綴る。

執筆/工藤広伸(くどうひろのぶ)

介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(82才・要介護4)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。最新著『工藤さんが教える 遠距離介護73のヒント』。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/ Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442

遠距離介護14年目、初の緊急事態

 2012年11月に始まった、岩手と東京の遠距離介護。新型コロナウイルスの影響で帰省が困難だった時期を除き、これまで一度も休むことなく遠距離介護を続けてきました。しかし今回初めて、遠距離介護を中止せざるを得ない状況になってしまったのです。

 中止の理由は、わたし自身の体調不良でした。37度台後半の熱が出たあと、4日間にわたって微熱が続きました。なかなか熱が引かないため内科を受診したところ、医師から扁桃炎の可能性を指摘されたのです。

 処方された薬を飲めば回復するかと思いきや、病院を受診したその日の夜から、今度は咳が止まらなくなりました。日中よりも夜中になると激しく咳込むようになり、2時間しか眠れない夜が2日も続いたので、耐えられずに再受診しました。

 再受診の翌日に、実家に帰るつもりでした。医師に相談したところ、感染の心配はないから高齢の母に会っても大丈夫との回答。しかし体調が回復しない可能性を考慮して、キャンセルした訪問介護やデイサービスを利用できるかどうか、ケアマネさんに確認をお願いしました。

 すぐに返事をいただき、ヘルパーさんもデイサービスも利用可能とのこと。ケアマネさんと話をして、翌朝の体調次第で元気なら帰省し、体調が悪ければ遠距離介護を中止する方向でまとまったのです。

介護の手配をしたが「解決できない問題が…」

 朝起きたとき、咳はまだ残っていましたし、微熱で寝込んでいたため、体力が落ちていました。この状態のまま実家へ行き、母の排せつ介助をしたり、食事の準備をしたりするのはさすがに厳しいと思いました。

 また、わたしが咳をするたびに母から「あんた風邪ひいたの?」と何度も繰り返し質問されたとしたら…。母の優しさとはいえ、自分が弱っているときにはこのやり取りは正直しんどいかもしれない。ケアマネさんに連絡を入れ、今回の遠距離介護は見送ることにしました。

 介護自体は、わたしがいなくても大丈夫なように手配できましたが、「通院」と「薬の処方」が未解決でした。母は便秘を抱え血便が出た経験から、定期的に肛門科を受診しています。

 いつもわたしが母を連れて病院の肛門科を受診するのですが、通院できないので岩手にいる妹を頼りました。

 ところが妹も肩の調子が悪く、母の歩行介助が難しいと連絡が来ました。自費の通院付き添いサービスの利用も考えましたが、肛門科の受付横に貼られていた『リフィル処方箋』の案内を思い出したのです。

「リフィル処方箋」を利用することに

 2022年4月からスタートしたリフィル処方箋は、症状が安定している患者に対して、医師の診察を受けずに、薬局で薬を受け取れる制度です。リフィル処方箋1通につき、最大3回まで利用可能です。

 実は2025年11月に発売した、わたしの著書『工藤さんが教える遠距離介護73のヒント』(翔泳社)でリフィル処方箋を紹介したのですが、執筆のきっかけはこの肛門科に貼ってあった案内でした。

 母は2年ほど通院を続けており、最近は症状も安定していました。そこでわたしが肛門科に電話をかけて、リフィル処方箋の発行をお願いできないか尋ねたところ、医師の判断で承認され、薬を調達できたのです。

 これで遠距離介護の予定はすべてクリアし、あとはわたしの病気の原因を突き止めるだけになりました。

介護を長く続けるために必要なこと

 内科を2回受診して、薬も服用したのですが、夜中の咳は一向に収まりませんでした。眠れないなか、AIに相談し呼吸器内科や耳鼻咽喉科の受診を勧められました。

 藁にもすがる思いで、呼吸器内科を受診。肺炎や喘息の検査を行ったところ、咳喘息と診断されました。咳喘息は痰がからまない乾いた咳と、夜間の咳が特徴です。ヒューヒューといった異常な呼吸音もなく、わたしの症状とすべて一致していました。

 咳喘息は風邪が治ったあとやアレルギー、ストレス、季節の変わり目などに発症しやすいそうで、原因に関しては現在調査中です。

 診断から3週間ほど経った現在も、吸入薬による治療を続けています。症状が改善したと勘違いして、通院を止めてしまう患者さんが非常に多いのだとか。3か月を目安にしっかり通院して、完治を目指したいと思います。

 母の認知症が軽度だった頃は、多少熱があっても実家に帰って、自分の部屋で寝て治した経験が何度かあります。当時の母は自分で料理を作れたし、排せつ介助も必要なかったので、介護の負担が少なく、何とかなりました。

 しかし重度の認知症になった今は、生活のあらゆる場面でサポートが必要です。咳喘息を抱えながら母の介護をしていると、危ない行動を取ろうとする母にどうしても大きな声で行動を制止しなければならない場面もあり、咳込んでしまうことも…。

 わたしは53才になりました。介護者として、自分自身の健康を意識しなければならない年齢に差し掛かっていると思います。今回のように体調がすぐれないときは、ムリをせずに介護のプロの力を借りられる態勢や関係性を構築しておくことが大切だと実感しました。

 今日もしれっと、しれっと。

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