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《林家ペーさんと赤羽のカラオケボックスにいると…》義妹がくも膜下出血で倒れた、と1本の電話 そして4日後…68歳女性ライター「こんなにも日常が突然断ち切られる別れがあっていいのか」 

 10年の間に母親や弟、義父、親友、愛猫と多くのかけがえなのない家族との別れを経験してきたオバ記者ことライターの野原広子氏(68歳)。そして今度は、仲の良かった義理の妹を失った。一緒に旅行に行くなど、かけがえのない日々を過ごしてきたという。やりきれない思いを今綴る。 

* * * 

「くも膜下出血で倒れ救急車で…」 

 突然の別れに身の置き場がない。なんかもう、こんなことってある? なんで? 茨城に住む義妹・Nみ(57歳)がくも膜下出血で倒れたという一報を受けてからほぼ半月。弟の横にいて延命の手術を“するしない”から、葬儀や埋葬のことなど、さまざまなことを決めてきたけれど、何もかも現実感がないんだわ。自分の体も頭もそのあたりに散らばったようでまとまりがつかない。 
 
 ことの始まりは3月8日、日曜日の午後2時。私は林家ぺーさんにスマホで動画を見る方法を伝授しようと赤羽のカラオケボックスにいたの。ふつうにYouTubeで動画を見ている人は「なにそれ?」というくらい簡単なことだけど、知らない人にLINEや通話で知らせるのはほぼ不可能だ。 

 なのでお会いしてやって見せたらすぐに「へぇ〜、驚いたねぇ。スマホってこんなことも出来るの! ああ、これこれ、こんな昔のコマーシャル、見られるのね」とぺーさんから驚きの言葉を引き出した。その時。弟から電話が入った。 
 
「姉ちゃん、今、大丈夫? なんかNみちゃんがくも膜下出血で救急車で国立国際医療センターに運ばれたんだって。オレもこれから行くけど少し時間がかかるから先に行って様子見てくれないかな」 
 
 弟の声はいつも通りだけど、私はくも膜下出血と聞いてたちまち体がこわばった。 

海外旅行、神社仏閣巡りもよく行った 

 この日、華道家の義妹Nみは、教室のある新宿まで茨城から車で出かけていたの。東京で教えるようになって4、5年経つかしら。インスタのフォロワーが2万7000人いて新幹線に乗ってくる生徒もいる。 
 
 華道の先生とは、花材の配置を教えるのが仕事と思っていたけれど、それはほんの一部。その何倍もの時間、何軒も花屋を回ってイメージに近い葉物や花を集めに費やす、というのはNみから教わった。 

 てか、Nみが回っている花屋の半分は私も同行した。東京で倒れる前日も実家の墓参りがてら弟夫婦と蕎麦を食べに行っている。というのも弟夫婦は高校の同級生で子供もいない。東京で風来坊をしている私にとってこれ以上ない気楽な遊び相手で、温泉巡り、蕎麦屋巡り。ここ数年は神社仏閣巡り。30代、40代の頃はNみと海外旅行にも行っている。 
 
 思えば弟と結婚したばかりの20代のNみは引っ込み思案でそのせいか猫背ぎみ。それを私はいつも「猫背に美人なし」とからかった。それが40代で華道と出会いメキメキ頭角をあらわしたら、背筋がシャンと伸びていた。インスタの中の花はどんどん研ぎ澄まされていって、コメント欄には日本語、英語、中国語が並んでいた。いつしか私はハラハラしながら『@sousou_hana』を開くようになった。 

一命は取り止めたがステージ5 

 午後3時。そのNみが透明な管を口にくわえて、薄暗い集中治療室のベッドに横たわっている。脳に刺激を与えないように目にタオルをかけられているから鼻から下しか見えないけれど、頬のラインから口元が紛れもなくNみだ。 
 
「それでどうなんですか?」と部屋を出て看護師に聞くと「あくまでも一般論ですが、くも膜下出血を起こすと3割が即死、3割が障害が残る。3割が日常生活に戻れると言われています」と言う。 
 
 すぐに主治医に呼ばれたので、看護師から聞いたことを言うと、「妹さんは即死ではなくて一命は取り止めましたが、ステージが5段階の5です」と、脳の画像を示しながら言う。「こうしている間にまた破裂を起こすことも考えられます。左目は瞳孔が開いています」と言う。 

 もしかしたら私ひとりでNみを看取ることになるのか! そう思ったらいてもたってもいられず再び集中治療室に入ろうとしたら、「2度目の破裂を起こしていて、今、処置をしています。待ってください」と看護師に止められた。刻々と事態が悪くなっていった。 
 
 夕方6時過ぎて弟が来、ほどなくしてNの姉も福島から駆けつけ、私が聞いた主治医の説明をもう一度3人で聞いた。ひとりで背負っていたNみの命を3等分したようで肩の荷が少し降りた。 
 
 それから3日間、Nみは意識不明ながらどうにか命をつないで別れの時間をくれた。息を引き取る時は茨城から同級生が駆けつけて弟はいまわの時まで「Nみちゃん、ありがとう!」と語りかけ続けた。 

割り切れない別れ、あきらめきれない別れ 

 それにしてもこんなにも日常が突然断ち切られるような別れってあっていいのかしらと思う。怒りに似たような気持ちが湧き上がる。でもこれは私が知らなかっただけで世の中にはいくらでもあることなんだよね。 
 
「交通事故なら朝、元気で出かけて行った家族が帰ってこないんですよね。別れの時間があっただけよしと思うしかないか」 
 
 自宅に帰ったNみに最後の別れをするためにご近所や弟の職場の人が集まってくれた。そこでそんなことを言うと年配の人が「うちがそうよ。17歳の高校生の息子がバイトに行くと行って出かけて車に追突されたの」と一枚の美青年の写真を見せてくれた。「主人は夜中に突然『うっ』と言ったきり亡くなったのよ」と言った人もいる。 

 割り切れない別れ。あきらめきれない別れ。今こうしていてもふとした瞬間にNみの顔が浮かぶ。声が聞こえる。こんな思いをした人が世の中にはいくらでもいるのよね。数年前、92歳の母親を介護の末に清々しく見送ったのとは大違いだ。 
 
 もうすぐ69歳のおらが春。正念場という言葉が桜の花の向こうで揺れている気がした。 

◆ライター・オバ記者(野原広子)
1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。2021年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。実母の介護も経験している。

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