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《介護・看取りを経験》布施博が妻・井上和子と語る介護の現実「要介護状態になるのを防ぐしかない」と続ける禁酒「何十年も毎晩、いいちこを1瓶空けていたのに…」

『ずっとあなたが好きだった』(TBS系)など、数々のトレンディドラマで活躍し、バラエティ番組でもお茶の間に親しまれた俳優の布施博さん(67歳)と、妻で女優の井上和子さん(54歳)。同居していた布施さんの母親の介護・看取りを夫婦で終えて、現在は井上さんの父親の介護に向き合っている。長年の介護経験から見えてきた日本の制度の問題提起や、布施さんならではの潔すぎる「終活観」などを聞いた。【全3回の第3回】

「明日は我が身」のはずが目を背けてしまう。それは政治家も同じ

――長く介護をされてきて、現在の日本の介護制度や社会の受け入れ体制に対して、変わってほしいと感じる問題点を教えてください。

布施さん:これは本当に難しい問題です。自分が将来「介護される側になる」ということは、なかなか想像できないんですよ。頭ではわかっているんです。誰もが通る道で、明日は我が身だって。だけど、自身がその立場になっていないうちは、自分は大丈夫だろうと思ってしまう。それは制度を作る政治家だって同じです。

理想を語るのは簡単ですが、結局は国や社会が本気で動かないとどうにもなりません。日本が超高齢化社会になることなんて、何十年も前からわかっていたじゃないですか。「おい政治家、一体何をやってきたんだ!」と言いたくもなりますよね。

その上で、ぼくが圧倒的に必要だと感じているのは「施設の充実」と「労働力不足の解消」です。ヘルパーさんの仕事は本当に過酷です。それに対する対価がきっちりと支払われる体制をちゃんと作らなきゃいけない。今すべての業界で労働力不足が起きていますが、介護業界も例外ではありません。

――介護サービスを利用されていると思いますが、使い勝手など、気になるところはありますか?

井上さん:要介護度が上がれば、使えるサービスの幅や限度額が増えて助かると思っていたんです。でも、私の父が要介護5になってみてわかったのは、単価がすごく高いということ。週に6日、7日とデイサービスを利用できるはずなのに、実際にそれだけ入れると、自己負担額がとんでもない金額になってしまうんです。

布施さん:だからこそ、手厚い金銭的な補助が必要です。もちろん、財源はどうするんだという話にはなりますが、そこにお金を使わないと、介護している家族の生活まで破綻してしまいます。80代の奥さんを80代の旦那さんが介護するような「老老介護」もよく見かけますし、きちんとした施設や金銭的サポートなしには介護は不可能です。

「終活はしない、お墓にも入らない」という潔い生き方

――親の介護をされていて、自身の終活を意識しましたか?

布施さん:全然していません。お金もないし、資産もゼロですから。終活の一環として身辺整理のようなことをするにも、整理する物がゴルフクラブくらいしかありません(笑い)。そもそも「終活」って言葉が、あんまり好きじゃないんですよ。自分の人生を終える前に人に迷惑をかけないように準備しておくことだと言うけれど、特別な資産や財産を持っている人に限った話じゃないですか。

――例えば、遠くに住んでいる友人に会っておく、年賀状じまいをする、なども終活の一環といえますが、いかがでしょうか。

布施さん:ないですね。年賀状も、もう何年も書いていません。そういうところは本当に淡白なんです。ぼくは芸能界の冠婚葬祭にもほとんど行きません。だって、白々しいじゃないですか。そこまで親しくもないのに、葬儀では悲しい顔をして、結婚式ではお祝いをして。もちろん、純粋な動機の人もいるでしょうけど、ああいう場が嫌いなんです。

井上さん:でも、大切な人が亡くなったりすると、出席はしないけれど、泣きながら一晩中お酒を飲んでいたりするんですよ。

布施さん:だから、好きな人のお墓参りには行きますよ。お墓といえば、ぼくはお墓に入りたくないんです。太平洋に散骨してほしい。

井上さん:お墓がないので、じゃあ私が死んだらどこに行けばいいのって話ですけど。

布施さん:フリマアプリなどで物を売ったりして、せめてお金だけは残したいと思っています(笑い)。ただ、現実的にはぼくらが老後のことを語り合う余裕なんてありません。義父の介護が終わったら、次はぼく自身が認知症にならないように努力しなきゃいけない。彼女の人生が、ずっと介護になっちゃいますからね。

自分の人生は「自分で閉じる」覚悟と健康管理

――もし、ご自身が要介護状態になったとき、ご家族にこうしてほしいという要望はありますか?

布施さん:もし「これ以上生きていたら周りに迷惑をかける」と判断したら、自分の人生は自分で閉じないとダメだと思っています。ただ、現実には介護される側になると「自分が介護されている」という自覚自体がなくなってしまうわけですから、どうしようもないですよね。だから、できるだけ頭を使って、要介護状態になるのを防ぐしかないんです。

――予防や健康面で、どんなことをされていますか?

布施さん:毎日筋トレをしています。あとは、お酒が大好きだったのですが、3年前に完全にやめました。30代後半から何十年も毎日、麦焼酎の「いいちこ」を1晩で1本空けていたんです。とっくに肝硬変で死んでいてもおかしくないですよね。40代の時に医療番組に出演した際、「もう肝硬変になりかけている。余命3年だ」と宣告されました。それで慌てて半年間、酒とタバコをやめたんです。

その後、同じ番組に特別ゲストで出たら、「余命が27年延びた」と言われました。お医者さんも「こんな例はない、学会で発表したい」と驚いていましたね。たまたま舞台の仕事があって、トレーニングをしていたのもよかったんでしょう。

それで「大丈夫だ」と安心して、また飲み始めちゃったんですよ(笑い)。それでまた番組に出たら、数値が最悪になっていて「もうダメだ」と。そこからまた1年酒をやめて、なんていうのを繰り返していたんですけど、今回の禁酒は続けられそうです。年末などの行事で1杯飲んでも、おいしいと感じなくなりました。

井上さん:近所の医師に診ていただいたのですが、「そんなに飲んでいて、肝臓が正常になってるなんてあり得ない」と言われたことがあります。彼が丈夫な身体でよかったです(笑い)。末永く、彼と楽しく暮らしていきたいですね。

◆俳優・布施博

ふせ・ひろし/1958年7月10日、東京都生まれ。1984年、ドラマ『昨日、悲別で』で俳優デビュー。以降『君が嘘をついた』『ずっとあなたが好きだった』など、トレンディドラマを中心に数多くの作品に出演して人気を博す。1994年には自ら劇団「東京ロックンパラダイス」をプロデュースし、後進の育成にも尽力。実母の介護を経験し、現在は義父の介護をする妻を支えている。

◆女優・井上和子

いのうえ・かずこ/1972年4月10日、東京都生まれ。劇団あすなろ、いずみたくミュージカルアカデミーを経て、布施博主宰の劇団「東京ロックンパラダイス」に所属し、数多くの脚本も手掛けていた。2012年4月に布施と結婚。布施の母を二人三脚で介護し、最期を見届けた。現在は要介護5である自身の父の介護を行っている。

撮影/小山志麻 取材・文/小山内麗香

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