在宅緩和ケア医・萬田緑平さん、“病院で死ぬか家で死ぬか論”に「“最期はどこで死にたいのか”と問うのではなく、“最期までどこで生きたいのか”を考えてみよう」
最期まで自宅で暮らし、穏やかに旅立ちたい」と願う患者をサポートする在宅緩和ケア医・萬田緑平さん。数々の著書が話題の医師が明かす、幸せな最期に向けて元気なうちにやっておくべきこととは。対談を含めて60ページに渡って萬田さんが在宅医療についての解説を担当した『夫が「家で死ぬ」と決めた日 すい臓がんで「余命6か月」の夫を自宅で看取るまで』(倉田真由美著)から一部抜粋して紹介する。
元気なうちから選択肢について話し合う
最期をどこで、どのように迎えるか――。「人は必ず死ぬ」ので、元気なうちから準備しておくべきです。
死ぬことにがんと診断されて気づくのか、再発と診断されてから気づくのか、治療法がないと言われた時なのか、余命宣告されてから気づくのか…。
死ぬ前日になっても「まだ死なない方法があるかも」と、「人は必ず死ぬ」ことを認めない、気づかない人もいる。そういう人にとって死はつらいに決まっています。誰も救うことができません。病気と診断されて、あるいは余命を宣告された時、冷静に考えたり判断したりすることは難しくなります。事前に何も考えていないから、いざという時が訪れると判断に戸惑い、医師に提示されるままになり、家族と意見がぶつかってしまうのです。
ぜひ元気なうちから、「人生の最後について」家族と話し合っておきたいものです。もしも病気で余命1年と宣告されたら、どんな治療を選ぶのか、どんな選択肢があるのか。終末期を過ごすのは病院か、自宅か。
「最期はどこで死にたいのか」と問うのではなく、「最期までどこで生きたいのか」を考えてみるといいでしょう。誰だって、死について考えたり、死に場所や死んだ後のことを考えたりするのには、最初は抵抗があります。もしも病気が発覚したら、どんな風にどこで過ごして生きていきたいか。そんな風に考えてみるのはどうでしょう。
あるいは、これまでの人生について話してみるのもいいですよ。子どもや親御さん、配偶者、あるいは友達と。長く一緒にいる人と、人生を振り返って、あんなことがあった、こんなことがあったと話してみる。残された人生でやってみたいことを語り合ってもいい。人生を見つめ直すきっかけにもなります。
日頃から家族を大切にして感謝を伝えていれば、自分も感謝をされる。思いやりや優しさは双方向なんです。これまで多くの看取りを経験して思うのは、逝き方は生き方。
その人がどんな人生を歩んできたのか、生き方は死に方に反映されるということ。幸せな最期、穏やかに旅立つことは誰にでも叶えられるのです。
プロフィール/萬田緑平
1964年生まれ。群馬大学医学部卒業。大学病院の外科医として多くののがん患者の手術や抗がん剤治療を行う中で医療や看取りについて疑問を感じ、2008年から緩和ケア診療所に勤務。2017年「緩和ケア萬田診療所」を設立し、患者と家族のケアを続ける。『家で死のう!』(フォレスト出版)など著書多数。出会った患者と家族の日常と看取りまでを追ったドキュメンタリー映画『ハッピー☆エンド』も話題に。
撮影/五十嵐美弥
