【脳の老化予防法】脳内科医が教える8つの“脳番地”と鍛え方「意図的に面倒なことをする」「ラジオを聴く」「古いアルバムを見る」のも効果的
日常生活のなかでは、例えばこんな行動がトレーニングになるという。
「いつもと違う服を着る、最新の歌謡曲を聴いて歌ってみるなど新しいことへのチャレンジは、インプットされた情報を加工・操作し、新たな知識や知恵を獲得する思考系脳番地を強く刺激します。いつもと違う服を着れば視覚系が鍛えられ、カラオケで新しい歌に挑戦して持ち歌を増やせば聴覚系や記憶系脳番地が同時に刺激できるでしょう」
生活のなかで意図的に「面倒なこと」をすることも、複数の脳番地トレーニングになる。
「楽で便利な生活は物事や言葉を理解する理解系脳番地の働きを鈍らせます。調べ物はネットに頼らず図書館に出向く、買い物は実店舗でするなど、あえて面倒な選択をすると理解系をフル活用して考えるようになり、実際に行動すれば運動系があわせて刺激されます」
日常の何気ない習慣・行動でも鍛えられる。
「アルツハイマー型認知症には、脳内の“時間軸”が壊れ、過去と現在の記憶が区別不能になる特徴があります。これを防止するには記憶系脳番地を意識的に使うことが重要。一例として、古いアルバムを頻繁に見返すことも有効で、時間軸の確認・修正が行なえます。写真を見ると右脳側の視覚系脳番地が活発化するので、当時を思い出して喜怒哀楽が込み上げれば感情系脳番地も強く刺激されます」
また「あえて興味のない新聞や雑誌の記事に目を通す」ことも有効だと加藤医師は言う。
「普段接しない情報に触れると、理解系脳番地が情報を整理・理解しようとフル稼働します。さらに、近接する感情系脳番地を呼び覚ます相乗効果も得られるため、脳番地トレーニングには一石二鳥と言えるでしょう」
ラジオ聴取、音読、電車移動なども脳番地を鍛える絶好の機会
娯楽や情報収集はテレビに頼らず、ラジオを選ぶこともポイントになるという。
「聴力の低下は認知症リスクを約8%上げるとされ、対策が欠かせません。ラジオ聴取は聴覚系脳番地を鍛えるほか、耳から入る音の情報を脳内で処理、想像力を喚起する働きを促すため、右脳の記憶系脳番地を成長させることが分かっています。
さらに有効なのが、声に出して読み自分の耳で聞く“音読”です。音読は視覚系、聴覚系、伝達系を中心に脳の広い領域を同時に刺激し、ネットワークを強化します。その際、助詞の“てにをは”部分を強調して読むと聴覚系、記憶系を一層刺激することができます」
外出時は通勤電車などの移動中も脳番地を鍛える絶好の機会となる。
「吊り革に両手でつかまり、目を閉じ片足立ちをするだけでも運動系脳番地が刺激されます。視覚的情報が遮断されるなか、バランスを取ろうと脳が覚醒し、集中力の向上にもつながります」
また、電車やバスでは「車内アナウンスをリピート」することで聴覚系、記憶系、伝達系脳番地が、「次の駅・バス停で降りる人を予測」することで視覚系、記憶系、理解系、思考系脳番地がそれぞれ鍛えられるという。
仏壇がある部屋の掃除や花の水やりが認知症の予防に効果的
アルツハイマー型認知症の初期症状の一つとして「部屋が散らかる」という特徴があるが、その予防策として加藤医師が推奨するのが「部屋の片づけ」だ。
「部屋が散らかっていても気にならないのは、目から入る情報を正確に処理できない視覚系脳番地の衰えが推測されます。また必要なもの、不要なものが判断できないのは思考系が弱っている証左。使ったものを元の場所に戻せないのは、前の状態が覚えていられない記憶系が衰えた表われです。このように低下する脳機能に刺激を与えるため、部屋の掃除や片づけは非常に有効です。軽い運動にもなり、運動系の強化にもなる。4つの脳番地を同時に活性化でき、認知症予防に繋がります」
ただし、部屋に置くモノを極端に少なくし、片っ端から捨てれば良いというわけではない。
「あまりに殺風景な部屋だと、脳に与える刺激が少なくなり逆効果です」
加藤医師によれば、8つの脳番地鍛錬に向く部屋にはいくつかの特徴があるという。
その一つが「仏壇」だ。
「仏壇や神棚があると脳の活性化に好影響が期待できます。宗教的な話ではなく、毎日お線香を焚く、お花やご飯を供える、水を換えるなどの行為そのものが複数の脳番地に刺激を与えるからです。脳の老化防止には、毎日欠かさない習慣がある状態が望ましい。花を飾って水やりなどの世話をすることも同様の効果が得られます」
音楽などを聴くための「スピーカー」も脳番地を刺激する装置になる。
「好きな音楽を流しながら家事や片づけをすると、感情系脳番地が刺激されて“やる気”が引き出されます。その際、『曲が終わるまでにこの作業をやり遂げる』と決めれば、記憶系も刺激される。歌いながらの作業なら、運動系と思考系を鍛えることができます」
そのほか、「額に入れた写真」や「旅行先で購入した飾り物」などを目に付く場所に置いておくと、「アルバムを見る」のと同じように記憶系や感情系の刺激になるという。
※週刊ポスト2025年10月17日・24日号
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