60才から萎縮が始まる脳を若返らせる5つの方法「ウオーキング」 「推し活」「食事はよくかむ」他
「60才を境に急激に脳の萎縮が始まることがわかっています」、そう教えてくれたのは、脳科学者の西崎知之さん。年を取ることは避けられないが、脳の萎縮を遅らせる方法はいくつかあるという。詳しい話を見ていこう。
脳の萎縮は60才から始まっていく
加齢に伴い、物覚えが悪くなり、物忘れがひどくなる。年を取ることは誰もが避けられないため、脳の衰えもまた、人類の課題だ。
「脳の曲がり角は60才。60才を過ぎたら危機感を持ってほしい」と話すのは脳科学者の西崎知之さんだ。
「脳の中で記憶と学習を司るのが海馬(かいば)ですが、この海馬が萎縮することで、認知症になる確率が高くなります。MRIで20~90代までの脳の画像を見比べた結果、60才を境に急激に海馬の萎縮が始まることがわかっています」(西崎さん・以下同)
1.認知症予防にはウオーキングが最適
海馬の萎縮を止めるために、できることはあるのか。
「認知症予防としてさまざまな方法が紹介されていますが、医学的にエビデンス(根拠)があるのは、ウオーキングだけです。詳細なメカニズムはまだわかっていませんが、疫学データでは証明されています。
代表的なものとして、アメリカの高齢女性1万8766人を対象にした疫学研究によると、ウオーキングを週に1.5時間以上行っている人は、週に40分以下しか行っていない人に比べて、認知機能の低下が明らかに少ないと報告されています」
ウォーキングは1日7500歩以上が目安
では、歩けば歩くほど認知症予防になるのだろうか。
「これも疫学データによるものですが、1日の平均歩数が7500歩未満の人は、7500歩以上歩く人に比べて、6か月後の視覚性記憶の低下が見られました。このことから、1日7500歩以上歩けば充分と考えられます。
ただし、だらだら歩いていてはだめ。速く歩く方が認知症予防になるといわれています。ウオーキングを始めるときは、いつもより少しスピードを上げて歩くようにしてください」
2.ドキドキする事も脳に刺激をあたえる
そのほかにも恋をすると気持ちが若返るといわれるが…。
「恋愛やセックスをするとドーパミンという神経伝達物質が放出されることがわかっています。ドーパミンが不足するとパーキンソン病の原因となりますが、過剰になると統合失調症の原因になるので、恋をすると若返るという科学的根拠はまだ見当たりません。ただ、昔から“恋をすると女性はきれいになる”といわれるのは、女性ホルモンの分泌が増えて肌にハリが出ると考えられるため、あながち間違いではないようです」
恋でなくても、何か夢中になれるものを見つけると、脳にいい刺激になるそうだ。
3.趣味を持って楽しむ 4.好きなアイドルの推し活
「パズルやゲーム、歌、楽器演奏、園芸など趣味を持って楽しむことは若さを保つためには大切なことです。好きなアイドルを応援する推し活もいいですね。気持ちを前向きにしてくれるものは、脳にとってもよいことだと思います」
また、ふだんの生活では五感を働かせることが重要だという。
「視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚を働かせると、記憶のセンターである海馬を活性化させます。ウオーキングの合間に見つけた花のにおいをかいでみる、虫や鳥の声に耳を傾けるなど、自然と接し、五感を研ぎ澄ませるのが、脳を若く保つためには必要なことです」
5.食事は一口で20~30回はかむこと
さらに、食事はよくかみ、腹八分目を心がけること。
「朝食を抜くと頭の働きが鈍るので、必ずとりましょう。ご飯、パン、フルーツ、乳製品、ゆで卵、なんでも口にできるものでいいのですが、よくかむこと。よくかむと唾液の分泌がよくなりますが、この唾液に『神経成長因子』という物質が含まれています。この物質が傷ついた神経細胞を修復させ、老化防止につながります。できれば一口で20~30回はかむように心がけましょう」
脳から若くなるための5か条
●1日7500歩以上のウオーキング
●自然の音に耳を傾ける
●パズルやゲームなどの趣味を持つ
●推し活に夢中になる
●食事は一口20~30回かんで、腹八分目を心がける
教えてくれた人
西崎知之さん/医師、医学博士。共著に『あと20年! おだやかに元気に80歳に向かう方法』(明日香出版社)などがある。
取材・文/廉屋友美乃 イラスト/鈴木みゆき 写真/本誌写真部
※女性セブン2022年7月28日号
https://josei7.com/
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