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兄がボケました~認知症と介護と老後と「第46回 最近はじめた3つのこと」

 50代で若年性認知症を発症した兄と8年間共に暮らしサポートしてきたライターのツガエマナミコさん。兄は、昨年、症状が急激に進んだことをきっかけに、現在は特別養護老人ホームに入所中で、マナミコさんは週1回のペースで面会に通っています。60代になり自分自身の健康についても気になるマナミコさん、最近取り組んでいることを明かしてくれました。

 * * *

足腰、脳の健康のために始めたこと

 日が短くなりました。

 暑くなく寒くもない、心地よい季節も一段と短くなりました。夏はいつからこんなに長くなったのでございましょうか。

 今週も兄はイケメンスマイルで迎えてくれました。

「今日はずっとご機嫌が良くて」とスタッフさまもニコニコで、わたくしにはそのご様子がなによりのプレゼントに感じました。

「今朝は体重を測りましたよ。40…何キロだったかしら」とおっしゃったので、「50㎏ないの⁉」と驚いてしまいました。BMI(肥満度・体格指数)でいえば16ぐらい。一般的なファッションモデルさまに求められるBMIが17~18と言われていますので、兄はモデルさま以下。どうりでガリガリなわけでございます。

 2年前、在宅介護していた頃はデイケアで毎月計測があり62㎏前後でしたのに、気づけば兄はわたくしよりもはるかに軽くなっておりました。てんかん発作からカクンと食欲が落ち、施設に入ったころにはすでに49㎏ぐらいだったようでございます。入所から1年が経ち、ほとんど体重が変わっていないことは、施設スタッフのみなさまのお陰でございます。

 体重が変わっていないといえば、あんなに暑かった夏にひとつも痩せられなかった我が身も同じ。計画ではウエストマイナス5cmのはずでしたのに、むしろぽっちゃりな仕上がり。人生終盤の成長期は幸せの証と喜ぶべきでございましょうか。

 せめて足腰だけは健康でありたいと、最近「片足立ち」を実践しております。片足1分ずつ、テレビをみながら、且つ「あいうべ体操」(シーズン2の17回参照)をしながら、1日1~2回を目安に気が向いたときにやっております。徐々に安定感が増し、多少は体幹にもいい影響があるような気がいたします。

 それから、朝に「天声人語」など、新聞の小コラムを音読することも始めました。

 若い人と比べるのもおこがましいですが、高学歴ユーチューバーのクイズ企画などを見ていると、彼らは圧倒的に問題を読むスピードが早く、同時に内容を素早く理解する能力にも長けております。見聞きしたことをじっくり整理しないと理解できないわたくしには、手の届かない境地だと知りつつも、せめてコラムをスラスラとつっかえることなく読みたいと思ったのでございます。

 これは後付けになりますが、一人でいると声を出すことが極端に少ないので、しゃべるための舌や喉の筋肉の衰えも激しいのです。音読は各種筋肉だけでなく、聴覚も使いますし、呼吸も深くなり、時事の学びもある一石四鳥の優れもの。続ける価値はあると存じます。

 もう一つ、ここ1カ月ぐらい左手を使うことも心がけています。物を落すことが増え、左手の感覚が鈍くなってきたように感じたからです。考えてみれば右利きのわたくしは、左手を使うことがほとんどなく、62年間手作業の大部分を右手に頼って参りました。右手と左手では使う脳が違いますから、両方使ったほうが脳の偏りがなくなり、認知症にもなりにくいのではないかと、これも勝手な妄想で思った次第でございます。

 さすがに字を書いたり、お箸を使うのは難しく、今のところ歯磨きにとどまっております。歯磨きのような単純な動きでも右手のようにはいかず、なんとももどかしいです。でも左手を使っている実感は大きく、使っていなかった脳神経が延びてつながるような自己満足感がございます。そして歯磨きの最後は子ども教育番組のシーンで見る「仕上げはお母さ~ん」的に右手を登場させるわけです。そのとき、いかに右手が優れているかを思い知ります。

 今後は、すこしずつ左手の仕事を増やす所存でございます。まずは普段無意識に右手で持ったりやったりすることを左手に任せようと思います。コップやペットボトル、食器を洗うときのスポンジ、しゃもじやオタマ、落とした物を拾うなど、単純だけれど右手でやってきたことを左手メインで生活してみようかと……。

 何も変わらないかもしれません。けれど“こんなことやってみた企画”だと思えば、楽しめますし、続かなくても誰にも迷惑をかけません。まかり間違えば右脳が司る芸術やひらめき力が目覚めて奇才があふれ出すかもしれませんし、ね?

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文/ツガエマナミコ

職業ライター。女性62才。両親と独身の兄妹が、2012年にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現66才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。2024年夏から特別養護老人ホームに入所。

イラスト/なとみみわ

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