《林家ペー・パー子が補償問題に直面》火災後の2人を支える元マネジャーが感じた、“お金のない”高齢者夫婦が不測の事態に向き合うことの難しさ
林家ペー・パー子夫妻の自宅マンション火災が起きてから3週間──。今、ふたりは補償問題に直面しているという。しかし、高齢者であるふたりにとって問題解決に向けて動くことはなかなか難しさがあるようだ。元マネジャーで2人を支えているオバ記者ことライターの野原広子氏が綴る。
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火事の補償問題をどう解決するか
「林家ペー、パー子宅、火災」の日以来、気がつくと25年前のマネジャーが現マネジャーもどきになっていた私。
それにしても身近な人が火事を出すとこんなに大変なことになるんだね。何が大変って、火事の当事者はすぐに現状認識ができないのよ。やることなすことチグハグ。そりゃそうよ。朝、いつものように家を出たのにその家が燃えてなくなるなんて誰が予想できる? そうなったら何をすべきか、誰が教えてくれる?
ぺーさんにしても火事3日目に林家の本家、海老名家に報告に行って、「まだ住民に謝りに行ってないの!」と怒られて初めて気がついたそう。火事の日からほぼ1週間、電話やLINE、メールは全無視。それに応じられるような精神状態じゃない、ということは横にいる私はわかる。でもマンションの関係者はそうは思わないって。逃げてると思うでしょう。私がそちら側だったらそうだもの。
このギャップをどう埋めて、補償なども含めた問題解決につなげていくか。そんなこと83才と77才の芸人の夫婦ができっこないよ。じゃあ、誰ができるのか。「弁護士に頼めば?」と言う人がいるけれど、それも現実的じゃないよね。お金が湯水のごとく使える人ならいいけど、そうじゃないもの。その分、私と仕事仲間のAちゃんが知恵を絞り、身体を動かし、お叱りを受けているわけ。
「お金がある」だけで余裕のある介護ができる
「お金があれば」。この苦労の半分以上は解決するんじゃない?
そんなことを思っていたら、突然ある中年女性の顔が浮かんだの。ずいぶん前になるけど高齢者を介護していたM子さんを取材したのよ。50代後半のふっくらした美人で、そもそも彼女は住み込みの家政婦さんだったの。それがあるお金持ちのおじいさんの世話を始めたらすっかり気に入られて「亡くなるまでお願い」ということに。
「給料は月に50万円だけど住み込みだから生活費がかからない。慣れてくると仕事と親の介護が半々って感じになりましたね」とM子さん。結局、8年世話をした“旦那様”は最後は高級介護施設に入居して間もなく亡くなったそう。その時に雇い主はM子さんに感謝してかなりまとまった退職金と、親戚の介護の仕事を紹介してくれた。
「ふたり目の旦那様は高級官僚だった80代の方で、すごく楽しい人でした。ある時、外でランチをした帰り道、パチンコやに目を止めて『一度やって見たかった。入ろう!』と言う。そうしたらハマっちゃって、翌日も翌々日も『行くか』って。たまに勝つこともあるけどふたり揃って負ける日がほとんどだから、10万円なんかアッという間。そうすると娘さんが現金を持ってくるんです」
こちらも下の世話が必要になると、高級介護施設へ。その前日にM子さんは「楽しい毎日だったよ。ありがとう」とお礼を言われ、涙の別れになったのだそうな。そしてこの一家からは退職金代わりにマンションをひと部屋、プレゼントされたという。お金があれば、こんな介護も可能なんだね。
「どこをどう変えたらいいかわからない」
が、そんなことは夢のまた夢でね。たいがいのことにお金の心配はつきものよ。
さぁ、これからどうなるのか。「今回の火事は今まで通りのやり方では済まなくなったということの象徴じゃないですか」と私より早足のぺーさんを追っかけながら言うと、「そうだと思う。でもどこをどう変えたらいいかがわからないんだよ」と返ってきた。
介護というほどのことではないけれどしばらくは2人の手助けを、できる範囲でしようと思う。
◆ライター・オバ記者(野原広子)
1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。2021年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。実母の介護も経験している。