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《コロナ禍から5年続ける》ジェーン・スーさん、要支援2・87歳の父親の生活支援に必要なのは「テクノロジー、そして稼ぐこと」

 エッセイストのジェーン・スーさんは、ひとり暮らしの父親(87歳)のケアをしてきた5年間を振り返ったエッセイ『介護未満の父に起きたこと』(新潮社)を上梓し、話題を集めている。ラジオパーソナリティーとしても多忙を極める中、どのように父親のサポートをしてきたのだろうか。【前後編の後編】

介護未満の父親のサポートはコロナ禍から

《老人といえば介護。日本には充分な介護保険制度があるから、安心。そう思っていたが、甘かった。人はいきなり寝たきりになるわけではない》(本書・はじめにより)。

 ジェーン・スーさん(以下、スーさん)が、「健康ではあるが、日常生活がひとりでは回せなくなった」父親の本格的なサポートを始めたのは2020年、コロナ禍のこと。ちょうど同じ頃、パーソナリティーを務めるポットキャスト番組『ジェーン・スーと堀井美香のOVER THE SUN』の配信がスタートし、番組は大ブレイク。

「(番組では)時々父親の愚痴は言いますけど、介護の話はあまりしていませんね。互助会員(リスナー)のかたには、介護中の人もいると思いますが、介護をしている人たちの息抜きの時間だと思うので…」

「負けへんで」(放送中に生まれたキーワード)の精神は介護にも通じるかと聞いてみると、「不測の事態に動じないという意味ではそれはあるのかもしれませんね」とスーさん。

 ラジオパーソナリティーに執筆活動、講演会と多忙を極める中、父親のサポートには、「なるべく他人の手を借りて、便利なサービスは色々と活用している」という。

要支援2の父には「介護保険外サービス」を活用

《父は「87歳にしては」圧倒的に元気で聡明である。2024年には満を持して介護認定調査を受けたが、要支援2しかつかなかった。

 要支援2の状態は次の通り。

・基本的にひとりで日常生活ができる。
・身の回りのことや家事に一部手助けが必要。
・立ち上がりや歩行にサポートが必要。》(本書・第5章より)

「今、父親は要支援2※なのですが、介護保険サービスには制限があって、ヘルパーさんが来てくださる時間も限られています。ケアの内容を決めるのにも地域包括支援センターに通わなくてはいけない。

 今の私にはそこまでの熱量と時間を注げないので、介護保険外サービスで、週に2回ほど訪問ヘルパーさんに来ていただいています。本当は週3回にしたいのですが、土曜日に来られるかたがなかなか見つからないんですよ。

 ただ、父はヘルパーさんが来ると急にシャキッとして着替えも食事も進んで行います。他者が来ることでも家の中の風通しもよくなることも実感しています」

※要介護認定には、要支援1・2、要介護1~5があり、要介護度が高くなるほど使える介護保険サービスも増える。

 訪問介護サービスでは、1回3時間で食事や掃除、通院介助を依頼している。スーさんが利用しているのは、介護保険外サービスの『クラウドケア』。ネットから訪問ヘルパーを依頼できて自由度も高いという。

「他人が家に入ることに拒否感を示すかたもいますが、その気持ちは年を重ねれば重ねるほど強くなっていくもの。早いうちから他者の手を借りる経験をしてもらうのがいいと思います。親御さんにプレゼントと称して、家事代行サービスを呼んであげるとか、早いうちから少しずつ慣れてもらっておくといいですよ」

お金は大事、仕事は絶対辞めない

「父のサポートには、だいたい月に15万円くらいかかっています。これまでも父には援助をしてきましたが、子供ひとり私立の大学に行かせるくらい、いや、医学部くらい出ているかもしれませんね。

 私がこうして父親のサポートをできているのは、家族がいなくて独身で、お金を稼げているからだと思います。今後も外部のサービスを活用しながら、自分一人で介護を抱えむことはないと思います。

 だから仕事は絶対に辞めない、辞めたくないですし、お金を稼がなければ。あとはテクノロジーの力を借りることですね。父にはLINEはできるようになってもらいました」

テクノロジーの力を駆使して

「一時期、父が痩せてしまっていたので、毎日食べたものを写真に撮ってLINEで報告してもらっていました。たんぱく質が足りないから、栄養補助食品を送って食べてもらうとか、離れていてもできることはあります。私がUberで注文して、父が好きそうなものを頼んで自宅に届けてもらうこともよくしています。

 月2回の通院時には、タクシーアプリ『GO』を使っています。病院の日、自宅前にタクシーを呼んでおけば、乗車中や到着など、父の行動がアプリ上からリアルタイムで把握できます。

 また、父がいつも座っているソファの近くには『Echo Show』(エコー・ショー、ディスプレイ付きのスマートスピーカー)を置いています。父とビデオ通話もできますし、LINEで連絡が取れないときには、安否確認もできます」

 便利なものを活用して父親のサポートをしているが、スーさんはあくまで「後ろからサポートして歩くけど、前に出て引っ張ってあげるようなことはしない」と考えている。

「ある程度、サポート態勢を整えているので、今何しているかとか、今晩何を食べるんだとか、いちいち干渉はしないようにしています。どうしても困ったときには連絡してくるはずなので。

『今日と明日生きてればそれでいい』というスタンスを日々続けている感じです」

父娘で施設の見学も一緒に

 父親のサポートで目標に掲げているのが、「父が精神的・肉体的に健やかなひとり暮らしを一日でも長く続けられること」だが、いずれ施設入居も視野にはあるそう。

「いつまで自宅で暮らせるかはわからないですからね。父と一緒にサービス付き高齢者向け住宅を見学に行ったこともあるんですよ。父は『今の家よりいい住まいだ』って目を輝かせていましたけど。父は文鳥を飼っているのですが、ペットを飼えるところが少ないですし、あっても高額なんですよね…」

 介護未満の父親のことを通じて、自分の老後のことも考えるようになったというスーさん。

「なるべく人に頼るんじゃなくて、テクノロジーを活用したい。そしてお金。自分の将来のためにも、働けるうちはギリギリまで稼いでおかなければ。

 この国には生活保護制度もあるし、生活保護を受けながら入れるグループホームもあります。これは最後の砦として、残しておかなければならないと思います」

撮影/柴田和衣子 取材・文/桜田容子

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