「牛乳を飲んでも栄養が吸収できない」日本人の成人約4人に1人が抱える“乳糖不耐症”カルシウムやタンパク質の摂取はチーズ&大豆製品がおすすめ【医師監修】
忙しい朝でも手軽に飲める牛乳。カルシウムやタンパク質など栄養が豊富という理由で、毎日牛乳を飲むことを習慣にしている人も多い。健康長寿を支える飲料として評価が高い一方、「栄養を摂取できない人もいる」といった研究結果も発表されている。知られざる牛乳の問題点を医師に解説してもらった。
教えてくれた人
南雲吉則さん/医師・ナグモクリニック総院長、渡辺信幸さん/医師・中部徳洲会病院・健康管理センター長
近年の研究では牛乳が体にダメージを与えることが明らかに
牛乳はカルシウムの宝庫。毎朝牛乳を飲んで骨を丈夫にしようーー。
学校給食の影響もあり、日本人の間にはこうした「牛乳信仰」が長く浸透してきた。だが、近年の研究では牛乳が日本人にもたらす弊害が明らかになっている。
ナグモクリニック総院長の南雲吉則医師が語る。
「ひとつは乳糖の分解能力の問題です。欧米やアフリカのように牛乳を毎日のように摂取してきた人たちは、『ラクターゼ』という乳糖を分解する酵素を持っている。ところが、日本人は昔から牛乳を飲んでこなかったので、これを分解できない『乳糖不耐症』の人が多いと言われています。
子供のうちは心配ありませんが、大人になるとラクターゼの活性が低下して、牛乳を飲むと腸にダメージを与え、下痢や腹痛、お腹の張りなどを引き起こしてしまう。日本人の70%から90%の人にはラクターゼの活性低下があると言われています。実際に乳糖不耐症の症状が出るのは25%ほどとされており、この人たちは牛乳を飲んでも栄養を吸収することができません」
牛乳によってアレルギー反応が出る人もいる。
「牛乳に含まれる主要なタンパク質のひとつである『カゼイン』が原因で、腹痛や下痢、湿疹などの症状が現われます」(南雲医師)
牛乳をせっせと飲んでタンパク質やカルシウムを補給したつもりでいても、実際は栄養が摂れていないケースがあるのだ。
医師が推奨するのは牛乳の約2.7倍のカルシウムがあるチーズ
牛乳の代わりに何を摂ればいいのか。
中部徳洲会病院・健康管理センター長の渡辺信幸医師が推奨するのはチーズだ。
「発酵した乳製品なら乳糖を分解する必要がなく、消化・吸収がいい。ヨーグルトもいいですが、それをさらに固めたのがチーズです。チーズはタンパク質が豊富でカルシウムも多く、6Pチーズ1箱には牛乳200mgの約2.7倍のカルシウムが含まれている。糖質が少なく太りにくいのもメリットです」
乳製品以外のカルシウム摂取源としては豆腐や豆乳、納豆、味噌などの大豆製品も優秀だ。南雲医師が語る。
「大豆はタンパク質含有量も多く、イソフラボンという成分には前立腺がんや胃がんにも効果があるという報告もされています。豆腐や豆乳を作る際にできる大豆の搾りかすである『おから』には食物繊維も豊富なので、大豆食品を食べる際はおからも一緒に摂るといいでしょう」
もう「毎朝の牛乳」にこだわる必要はない。
牛乳、ヨーグルト、チーズの栄養素比較
※品目/カルシウム(mg)/タンパク質(g)/脂質(g)
※100gあたり
●普通牛乳/110mg/3.3g/3.8g
●プレーンヨーグルト/120mg/3.6g/3g
●カマンベールチーズ/460mg/19.1g/24.7g
●チェダーチーズ/740mg/25.7g/33.8g
●パルメザンチーズ/1300mg/44g/30.8g
※週刊ポスト2025年10月3日号
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